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徹夜がつらいのは気のせいではない?睡眠不足と脳の意外な関係

岩本益宏

岩本益宏

テーマ:今さら聞けない

最近、こんなことはありませんか。

「寝ても疲れが取れない」
「眠りが浅くて、朝から頭が重い」
「寝不足の次の日は、頭が回らない」



忙しい日が続くと、睡眠はどうしても後回しになりがちです。ですが、眠りは単に体を休めるためだけの時間ではありません。近年は、睡眠中に脳の環境を整える大切な働きが進んでいる可能性が、研究からわかってきました。

話題になったのは、深い睡眠のときに脳脊髄液が脳の中で大きく動く様子をとらえた研究です。これにより、よく眠ることが、頭を休めるだけでなく、脳のコンディション維持にも関わっているのではないかと注目されています。

今回は、この内容をできるだけわかりやすく整理しながら、後半では中医学の視点から見た睡眠の大切さについてもお話しします。

深い睡眠は脳のためにも大切です


結論から言うと、深い睡眠は脳の休息だけでなく、脳内環境を整える働きにも関係している可能性が高いと考えられています。

ボストン大学の研究では、深い睡眠中に脳の電気活動、血流、脳脊髄液の動きが連動している様子が観察されました。脳脊髄液とは、脳や脊髄の周りを満たしている透明な液体です。この液体が睡眠中に大きく動くことで、脳の環境維持に役立っている可能性があります。

つまり、眠っている間の脳は、ただ止まっているのではありません。起きている間に使い続けた脳を整え直す時間でもあるのです。

ただし、この研究だけで「深く眠れば認知症を防げる」とまで断定することはできません。そこは落ち着いて受け止める必要があります。正確には、睡眠中の脳脊髄液の動きが、脳の老廃物処理や環境維持と関係している可能性を強く示した研究と考えるのが自然です。

なぜ寝不足がよくないのか


徹夜のあとに、頭が重い、考えがまとまらない、気分が不安定になると感じたことがある方は多いと思います。これは気合いの問題ではありません。睡眠不足によって、脳が十分に整う時間を失っている可能性があります。

研究では、一晩の睡眠不足のあとに、脳内のアミロイドβに変化が見られたという報告もあります。アミロイドβは、アルツハイマー病と関係が深いことで知られる物質です。もちろん、一晩徹夜しただけで認知症になるわけではありません。ですが、寝不足が続く生活を軽く見ないほうがよい理由は、こうした研究からも見えてきます。

特に年齢を重ねると、睡眠不足からの回復に時間がかかりやすくなります。若い頃は平気だった夜更かしがつらくなったと感じるのは、自然なことです。

睡眠は時間だけでなく「質」も大切です


睡眠というと、何時間寝たかが気になりやすいものです。もちろん睡眠時間は大切です。ですが、それだけでは十分ではありません。

たとえば、
•夜中に何度も目が覚める
•夢ばかり見ている感じがする
•朝起きても疲れが残る
•頭がすっきりしない

このような状態では、睡眠の質が落ちている可能性があります。

深い眠りが取れていると、翌朝の頭や体の軽さが変わります。反対に、浅い睡眠が続くと、ある程度寝ていても休んだ感じがしにくくなります。長さに加えて、深く眠れる状態を整えることが大切です。

中医学では睡眠をどう考えるのか


中医学では、睡眠はとても大切な養生のひとつです。

現代医学のように「脳脊髄液がこう動く」という説明はありませんが、夜は体と心を回復させる時間という考え方は昔から重視されてきました。日中の活動で消耗した気や血を、夜の睡眠で養い直すという見方です。

そのため、眠りが足りない、眠りが浅いという状態は、ただ眠いだけではなく、体の回復力が落ちやすい状態とも考えます。

現代の研究で「睡眠中に脳のメンテナンスが進む可能性」が示されていることは、中医学でいう「夜は養う時間」という考え方にも通じる部分があります。

中医学で眠りに関わる「心・肝・腎」


中医学では、不眠や眠りの浅さを考えるとき、主に「心」「肝」「腎」を見ます。



心は、精神活動や意識の安定と関わると考えます。考え事が止まらない、寝つけない、夢が多い、不安が強いという方は、心が休まっていない状態として考えることがあります。



肝は、気の巡りや感情の調整と関係します。イライラしやすい、夕方から頭がさえる、緊張が抜けないという方は、ストレスの影響で肝のバランスが乱れている場合があります。



腎は、生命力の土台とされ、加齢や慢性疲労、睡眠の深さとも関わると考えられます。年齢とともに眠りが浅くなった、夜中に何度も目が覚める、眠っても元気が戻らないという方は、腎の弱りという見方をすることがあります。

同じ不眠でも整え方は変わります


中医学では、「眠れない」をひとまとめにしません。
•寝つきが悪い
•途中で何度も起きる
•朝早く目が覚める
•夢が多い
•寝ても疲れが取れない

これらは同じように見えても、背景が違います。だからこそ、整え方も変わってきます。ここが中医学の大切な考え方です。

現代人に多い、眠りを悪くする原因


眠りの質を下げる原因として、特に多いのは次の三つです。

ストレスと情報過多

寝る直前までスマホを見る、仕事の連絡が夜まで続く、考え事が止まらない。この状態では、頭が休まりにくくなります。

胃腸への負担

夜遅い食事、食べすぎ、飲みすぎは、眠りの質を落としやすいです。中医学でも、胃腸の不調は睡眠に影響すると考えます。

慢性的な疲労

疲れているのに眠れない方もいます。消耗が強すぎると、眠る力そのものが弱くなり、深く眠れなくなることがあります。

今日からできる睡眠の養生


眠りを整えるために、まず意識したいことをまとめます。
•起床時間を大きくずらさない
•寝る前のスマホやパソコンを減らす
•夜食や飲酒を控えめにする
•ぬるめのお風呂や軽いストレッチを取り入れる
•「早く寝なければ」と焦りすぎない

眠りは無理に作るものではありません。眠りやすい状態を整えることが大切です。

気になる症状があるときは相談も大切です


次のような場合は、生活習慣だけではなく、医療機関への相談も大切です。
•いびきが強い
•寝ている間に呼吸が止まると言われる
•日中の眠気が強すぎる
•朝の頭痛がある
•不安や落ち込みが強い
•物忘れが急に増えた

睡眠時無呼吸症候群のように、眠っていても脳が十分に休めていないこともあります。我慢しすぎないことが大切です。

まとめ


睡眠は、ただ横になる時間ではありません。脳と心を整えるための大切な時間です。

現代の研究では、深い睡眠中に脳脊髄液が大きく動き、脳の環境維持に関わる可能性が示されています。中医学でも、眠りは気血を養い、心身を立て直す時間と考えます。

表現は違っても、どちらにも共通しているのは、眠りを軽く見ないことの大切さです。

忙しい毎日の中でも、少しだけ夜の過ごし方を整えることで、翌日の頭の軽さや気分の安定は変わってきます。
よく眠ることは、怠けることではありません。自分の体と脳を守るための養生です。

参考資料
•Boston University
The brain may flush out toxins during sleep
https://www.bu.edu/articles/2019/cerebrospinal-fluid-washing-in-brain-during-sleep/
•Science
Coupled electrophysiological, hemodynamic, and cerebrospinal fluid oscillations in human sleep
https://www.science.org/doi/10.1126/science.aax5440
•NIH
Sleep deprivation increases Alzheimer’s protein
https://www.nih.gov/news-events/nih-research-matters/sleep-deprivation-increases-alzheimers-protein
•NIA
Lack of sleep in middle age may increase dementia risk
https://www.nia.nih.gov/news/lack-sleep-middle-age-may-increase-dementia-risk
•PMC
The glymphatic system in sleep and neurodegenerative diseases
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12847902/

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岩本益宏
専門家

岩本益宏(医薬品販売業)

有限会社くすりの厚生会

子宝専門の漢方薬店として、カウンセリングで「妊娠力」を高める食生活や睡眠など生活習慣改善についてアドバイスと漢方薬の販売を行う。漢方知識と、自らの不妊治療・体外受精・出産の経験を生かしお客様をサポート

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