32.勘や経験を捨てる勇気!5秒で自社の「健康状態」がわかるデータ分析の正体
はじめに、こんにちは。株式会社吉和の森の森和吉です。
昨日(第50回)は、本コラムの大きな節目として、「経営者の情熱こそが、最強のデジタルマーケティングの燃料である」というお話をさせていただきました。お伝えした通り、これまでの50回で「基礎の型」はすべて網羅しました。
ここからは、いよいよ待望の「超・実践編」のスタートです!
私が実際のコンサルティング現場で経営者の皆様と泥にまみれながら掴み取った、生々しい成功事例や試行錯誤の裏側を、リアルなストーリーとして出し惜しみなくお届けしていきます。
その記念すべき実践編の第1弾として、今回は、ある地方にある従業員15人の「金属加工の町工場」の物語をお届けします。
大手の減産や海外移転のあおりを受け、下請け仕事が激減。「このままでは数年で行き詰まる」と危機感を抱いた2代目の若き社長が、デジタルを武器にどうやって自社ブランドを立ち上げ、直請けの新規顧客を開拓していったのか。その具体的なステップを公開します。
ステップ1:誰も注目していなかった強みの再定義
私のもとに相談に来られた当時、社長は「うちの技術なんてどこにでもある。価格競争に勝てるわけがない」と肩を落としていました。
そこで、第39回でお話しした「顧客アンケート」の技術を使い、過去に一度でも取引のあった試作開発会社の担当者様に、徹底的にヒアリングを行いました。「なぜ、大手ではなく、あえてこの小さな工場に頼んでくれたのか?」と。
すると、驚くべき事実が見えてきました。
お客様が評価していたのは、加工の技術力そのもの(それも一流ですが)ではなく、「図面がまだ未完成の、アイデア段階のグチャグチャな状態からでも、社長がホワイトボードを使って一緒に形にしてくれる圧倒的な相談力」だったのです。
これこそが、大企業には真似できない、この工場の「独自のポジショニング(第40回)」でした。
ステップ2:スマホ1台で始めたプロの思考プロセスの可視化
強みが「相談力」と決まれば、次にやるべきは発信です。しかし、町工場の社長にとって、毎日綺麗なブログ記事を書くのはハードルが高すぎます。
そこで導入したのが、第37回でご紹介した「ショート動画」です。
用意したのは、社長のスマートフォンと、3000円の三脚だけ。
動画の内容は、技術の自慢ではなく、「他社で『こんな図面じゃ作れない』と断られたアルミ部品を、うちならどうやって形にするか」という、社長の頭の中の思考プロセスをホワイトボードの前で3分間で熱く語る、というものでした。
第20回でお話しした「人肌感」そのものの、泥臭くも圧倒的な専門性と情熱が伝わる動画です。これをYouTubeショートと公式ホームページにコツコツと投稿し続けました。
ステップ3:問い合わせ10倍!水漏れのないおもてなしの受け皿
動画を見て「この社長なら、うちの無理難題も解決してくれるかもしれない」と興奮した全国の製品開発者たちが、次々にホームページへやってきました。
ここで、第38回の「導線設計」が生きてきます。
従来の「見積もり依頼(住所・電話番号・図面添付必須)」という堅苦しいフォームを廃止し、「まずはスマホで図面の写真を撮って、LINEで送るだけの『10分クイック診断』」という、極限までハードルを下げた受け皿を用意したのです。
結果はどうだったか。
動画の投稿を始めて3ヶ月目、それまで月に1〜2件しかなかったホームページからの問い合わせが、一気に月25件へと跳ね上がりました。しかもその多くが、相見積もりなしの「社長、あなたにお願いしたい」という、利益率の高い直請けの試作案件だったのです。
今回の実践ポイント
この町工場が成功した理由は、最新の複雑なマーケティングツールを使ったからではありません。
これまでこのコラムでお伝えしてきた基本の型を、実直に、愚直に組み合わせただけなのです。
「うちの業界は古いから、デジタルなんて関係ない」
そんな風に諦めるのは、本当にもったいないことです。どんな業界であれ、悩んでいるお客様がそこにいる限り、デジタルは最強の武器になります。


