【エンゲージメント⑤】「良かれ」と思った報酬がやる気を奪う:期待理論で紐解く、従業員が努力するかを決める「主観的価値」の落とし穴[(3) 期待理論①]

弥左大志

弥左大志

テーマ:エンゲージメント向上

努力・成果・報酬のリンクが、メンバーの背中を動かす

  • 「最近の若手は欲がない」
  • 「もっとやる気を出してほしい」

現場の管理職からよく聞かれる悩みですが、メンバーの意欲が低いとき、それは彼らの資質の問題ではなく、組織内の「期待の計算式」が壊れている可能性があります。

心理学者ビクター・ブルームが提唱した「期待理論」は、人のモチベーションを以下の3つの要素の掛け算で説明しています。

1. 理論の解説:モチベーションを左右する3つの変数

この理論の最大の特徴は、モチベーションが足し算ではなく「掛け算」である点です。
どれか一つでもゼロになれば、やる気もゼロになります。
エンゲージメント

期待(努力 → 成果):

  • 「この仕事を頑張れば、目標を達成できる」と信じられる度合い。

「どうせ無理だ」と思えば、期待値はゼロになります。

道具性(成果 → 報酬):

  • 「成果を上げれば、自分にとってプラスの報酬(リワード)が得られる」と信じられる度合い。

「頑張って結果を出しても、何も変わらない」と感じれば、道具性はゼロになります。

価値・誘意性(報酬の魅力):

  • 「得られる報酬が、自分にとって本当に魅力的か」という主観的な価値

「昇進しても責任が増えるだけで嬉しくない」と思えば、価値はゼロになります。

一方で、成果に対する報酬だけでなく、「困難な課題に挑み、試行錯誤する努力そのもの」を自らの成長や充足感として捉える人も存在します。

2. 中小企業でも実践できる、現実的なマネジメント事例

リソースの限られた現場で、この掛け算を最大化するための具体的なアクションを考えます。

事例A:「スキルアップ」への期待値を高める

例えば、新しいITツールの導入や研修を行う際。

  • 「この研修を受ければ、作業時間が半分になり、あなたの評価も上がる」という道筋を具体的に示します。
  • まず「自分でも習得できる(期待)」と感じさせ、それが「仕事の効率化や評価に直結する (道具性)」ことを約束します。

事例B:目標設定の「納得感」と「報酬の多様化」

営業目標やプロジェクトの割り当てを行う際。

  • 目標を「背伸びすれば届く」範囲に設定し、達成プロセスを一緒に考えます(期待の向上)
  • また、報酬は金銭だけでなく、「次のプロジェクトの指名権」や「有給休暇の優先取得」、「心からの称賛」など、その本人が一番喜ぶもの(価値の向上)をヒアリングして用意します。

3. 実践における注意点:「一律の報酬」は機能しない

この理論を運用する際、管理職が最も注意すべきは「価値の多様性」です。

管理職が「良かれ」と思って用意した報酬が、部下にとっても価値があるとは限らない

  • かつては「昇進」や「昇給」が最大の価値でしたが、
  • 現代では「ワークライフバランス」「専門性の向上」「社会貢献実感」、そして「自律的に努力し、自らを高めるプロセスそのもの」など、価値観は分散しています。

相手が何を求めているかを知らずに報酬を提示しても、掛け算の合計値は上がりません。

経営者・管理職は「期待の設計者」である

メンバーの背中を押すのは、熱い言葉だけではありません。

  1. 「頑張ればできる (期待)
  2. 「できれば良いことがある (道具性)
  3. 「それは自分にとって嬉しいことだ (価値)
  4. さらに「努力すること自体に意味がある (努力による恩恵)

というリンクを、日々のコミュニケーションの中で丁寧に繋ぎ直すことが管理職の本質的な役割です。

  • その目標は、部下にとって「達成可能」なものに見えていますか?
  • 成果を出した部下に対して、本人が真に望む「報い」を用意できていますか?

この数式を意識してマネジメントを再設計することが、組織全体のエンゲージメントを底上げする鍵となります。


株式会社バリュー・コア・コンサルティングでは、期待理論をはじめとする科学的なアプローチを用い、貴社の組織実態に合わせたエンゲージメント向上のサポートを行っています。

  • 「目標設定が形骸化し、社員のやる気に繋がっていない」
  • 「今の報酬制度が、本当に社員のモチベーションを刺激しているか分析したい」

そんな課題をお持ちの経営層・管理職の皆様。

理論に基づいた現状分析から、現場で機能する具体的な施策の設計まで、私たちと一緒に取り組んでみませんか?

貴社の大切な人材が、自ら進んで努力できる組織づくりを伴走支援いたします。

  • なお、本コラムにおけるエンゲージメント理論の解釈は、弊社独自の観点によるものであり、内容の一部を抜粋してご紹介している点をご承知おきください。


経営コンサルティングサービスのご案内

弊社(株式会社バリュー・コア・コンサルティング)では、以下5つのサービスを提供しております。

  1. 総合経営コンサルティング
  2. 勝ちパターン構築プログラム
  3. ワークショップ型 リアル研修プログラム
  4. ワークショップ型 eラーニング型 研修プログラム
  5. 講演・セミナー 開催


このような課題はありませんか?

[売上・生産性を上げたい]

  • 市場縮小・競合過多により、成約率・成約件数が落ちている
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[管理職・マネジメントを機能させたい]

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弥左大志
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弥左大志(経営コンサルタント)

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企業にあわせた「勝ちパターン」を見出し、誰でも再現できる仕組みを構築。研修を起点に、現場での実行までサポートします。1.2倍超の売り上げアップの実績を誇り、金融機関やファンド会社からの依頼も多数。

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