【IT・システム業】第1回:IT・システム業が売上を120%へ増加させる仕組み|営業力再構築「4要素」実践論
はじめに:ヒアリングが営業の成否を分ける
- 「提案が一方通行になっている…」
- 「顧客の本音を引き出せない…」
- 「いつも御用聞きで終わってしまう…」
IT・システム企業の営業現場で最も多い課題は、こうしたヒアリングに関するものです。
その原因は、ヒアリングを単なる「質問して答えてもらう作業」として捉えている点にあります。
しかし、実際にはヒアリングは単なる情報収集ではなく、顧客の信頼を獲得し、顧客企業の潜在課題を言語化するための核心的なプロセスです。
ヒアリングの質を高めることで、顧客の信頼を勝ち取り、真のパートナーとなるための第一歩を踏み出しましょう。
ヒアリング力強化のポイント
プロの立場を築くには、ヒアリングの質を徹底的に高める必要があります。
単なる質問ではなく、顧客との信頼関係を深めるプロセスとして位置づけることが重要です。
特に「問題点共有」の視点を意識すると、顧客との関係性が一段と強まります。
ヒアリングの目的を理解する
- 顧客は潜在的なニーズ(必要性)は抱えていても、それを自覚していないことがほとんどです。特にコモディティ化した現代では、この「顧客の気づいていない潜在ニーズ」を引き出すことがヒアリングの最大の目的です。
- そして、単純な要望を聞くだけでは、顧客は自分にとって本当に価値のある情報かどうかを判断できません。ヒアリングを通じて、自社のサービスが顧客の潜在的な課題を解決できるかもしれないという気づきを与えることが重要です。
よくあるヒアリングの失敗パターンを避ける
尋問型ヒアリング:
質問を一方的に繰り返すだけでは、顧客は警戒し、本音を話してくれません。ヒアリングをタスクとして独立させるのではなく、「返答に対してプロの立場を確立するトーク」[太字]を混ぜながら実施することが大切です。
初恋型ヒアリング:
顧客に遠慮して深く踏み込めないケースです。これでは潜在ニーズを引き出すことができず、表面的な話で終わってしまいます。[太字]質問を受ける側の顧客心理(自分の話しを聞いてほしい)を理解し、踏み出すことでの成功体験をすることが大切です。
なんでも屋ヒアリング:
「何でもできます」と答えるだけでは、顧客はプロとしての価値を感じません。顧客の希望を整理し、優先順位をつけて、プロとして本当に必要なソリューションを提示することが求められます。
「問題点共有」の5つの具体的ノウハウ
「問題点共有」とは、「現在の顕在・潜在的な悩みや課題」について確認し、共有できている状態を指します。
このステップは、単なる課題ヒアリングではなく、「真因」を特定し、未来のリスクまで共有するプロセスです。
問題点共有のステップは、以下のノウハウとして整理できます。
1.[基本]共感ヒアリング:SPN手法
現状から起きていること(問題)、解決質問をにより、スムーズな顧客の課題特定~解決策の確認をすることが可能です。
SPN法の軸
- ヒアリングフック
- 状況 質問(Situation)
- 問題 質問(Problem)
- 解決 質問(Need-payoff)
*一般的には「SPIN法」というヒアリング手法が主流ですが、営業難易度が高いため、SPN法を推奨しております。
2.問題点の定義と確認
- 概要 : 顧客の不満や要望を明確化する初期段階。
- 詳細 : 現状のどこに問題があるのかを一緒に確認し、顧客が抱える課題の全体像を整理します。
- 活用例 : 顧客に「売上向上」や「生産性向上」など、「ありたい姿」と「現状のギャップ」を整理し、その要因を深堀りすることで、潜在的な課題を顕在化させます。
3.真因の特定
- 概要 : 表面的な課題ではなく、根本的な要因を探るステップ。
- 詳細 : 顧客の回答をさらに掘り下げ、「なぜその状況が発生したのか」を深掘りします。
特に「プロフィットツリー」を活用することで、売上や利益を構成する要素を分解し、どの部分に真因があるかを探ります。
活用例 : 「売上向上」が重要である場合、
- 「売上が上がらない真因は、顧客数の不足ですか?
- それとも単価が低いことですか?」
などと、考えるうえでの軸(事例)を活用しつつ、分解して問いかけます。

4.潜在課題の顕在化
- 概要 : 顧客が気づいていない、将来的なリスクを引き出す段階。
- 詳細 : 顕在化している課題(例:人手不足)が、将来的にどのような潜在課題(例:離職率増加、採用コスト増大)につながるか、未来軸で問いかけます。
- 活用例 : 「このままの状態が続くと、3年後にどのような影響が出ると想定されますか?」と未来軸で問いかけます。
5.優先順位の決定
- 概要 : 複数課題の中から、最も早急に取り組むべきテーマを合意形成する段階。
- 詳細 : 顧客と一緒に優先順位を整理し、焦点を定めることで、次の提案につなげます。
- 活用例 : 「この中で特に早急に解決したい課題はどれでしょうか?」と問い、顧客自身に選んでもらいます。

この流れを経ることで、問題点共有は「単なる課題ヒアリング」ではなく、「真因を特定し、未来のリスクまで共有するステップ」となります。
結果として顧客との間に「課題を一緒に解決していく姿勢」が生まれ、差別化や提案の質を高める基盤となります。
まとめ:ヒアリングは信頼関係を築く核心
ヒアリングを強化することは、単に情報を得るためではなく、顧客から「プロ」として認められる立場を築くためです。
IT・システム業の営業において、製品機能や条件だけでは差別化できない中で、ヒアリングの質こそが信頼の決定打となります。
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