【IT・システム業】第2回:新規・既存先へのターゲティング戦略|購買力の高い顧客分類とアプローチ方法

弥左大志

弥左大志

テーマ:【業種別】IT・システム業

はじめに:IT・システム企業の営業効率を左右する「購買力(ターゲット選定)」

多くのIT・システム企業で、取引先を訪問しているにもかかわらず、なかなか成果に繋がらないという悩みを抱えているのではないでしょうか。

  • 仲の良い顧客ばかりを訪問し、苦手な顧客には足が向かない。
  • 新規開拓の訪問先を適当に決めてしまい、効果が上がらない。
  • 一度商談をして受注にならなければ、こちらから積極的にアプローチをしない。

このような属人的な行動は、限られた営業リソースを無駄にし、成果を上げられない原因となります。
成果を最大化するためには、属人的な判断に頼らず、組織全体で「購買力(ポテンシャル)」を軸に「誰に注力するか」を明確にする必要があります。本コラムでは、営業効率を飛躍的に高めるターゲティング戦略について解説します。
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IT・システム業における顧客セグメントと優先順位づけ

顧客は、「自社シェア」と「顧客購買力ポテンシャル」の2軸で分類することができます。
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このマトリクスを活用することで、営業担当者が「訪問しやすい顧客」に偏るリスクを回避し、組織的に最適なリソース配分を実現できます。

A:重点顧客(シェア高 × 購買力高)

最重要ターゲットです。すでに取引があり、クロスセルやアップセルの余地が大きいため、最も投資対効果が高い層と言えます。

B:重点アップセル顧客(シェア中 × 購買力高)

深耕次第で取引を大口化できるため、特に成長が期待される層です。重点的に関係性を強化し、パートナーとしての信頼を築くことが求められます。

C:開拓顧客(シェア低 × 購買力高)

将来の事業基盤を拡大するために、戦略的に接触を強めるべき新規開拓ターゲットです。

D・E・F:安定~優先度低顧客

維持や効率的なフォローに留め、リソースの過剰な投下を抑制する層です。

すでに各IT・システム企業内で活用している要素に付随させ、このフレームワークを導入することで、営業活動の目的が明確化され、経営資源の配分が透明化されます。

活動基準とタイミングの設計

顧客セグメントごとに、具体的な活動基準を定義し、訪問頻度・ゴール設定・役割分担を明確にすることが不可欠です。これにより、中長期的な視点で顧客との関係性を確実に深めることができます。

重点顧客&重点アップセル顧客へのアプローチ

  • 訪問頻度と内容の明確化 : 単なる御用聞きではなく、事業の成長性やIT投資計画、システム更改時期といった「中長期的な購買力」を判断軸に設定し、定期的な訪問を行います。
  • パートナーとしての関わり方 : 経営課題の相談役として関わることで、システム刷新やクラウド移行、セキュリティ強化など、IT投資需要が高まるタイミングを確実に捉えます。
  • 目的意識を持った訪問 : 毎回、明確なゴール(例:経営者・情報システム部門の現状課題を引き出す)を設定し、質の高いコミュニケーションを心がけます。

開拓顧客へのアプローチ

  • 戦略的な接触の強化 : DMやセミナー案内、勉強会の開催、技術記事の配信などを通じて、自社の存在を継続的にアピールします。
  • 初期接点での信頼構築 : 顧客が抱える経営・IT課題(運用負荷増、人材不足、セキュリティリスク、クラウドコスト最適化など)に対する具体的なソリューションを提供し、信頼を勝ち取るための第一歩とします。

こうしたタイミングを逃さずアプローチすることで、成約率と取引深度は大幅に高まります。
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実務に落とし込むポイント

ターゲティング戦略を絵に描いた餅で終わらせないためには、実務に落とし込むための「仕組み」が必要です。

購買力スコアリングの導入 :

売上規模、IT予算、ユーザー数、拠点数、成長率、システム更改時期などの客観的な基準で購買力を数値化し、優先順位を可視化します。

プロセス管理の徹底 :

案件ベースでPDCA管理を実施し、重点顧客ごとの進捗を定期的にレビューします。

補足 : 購買力スコアリングや重点顧客リストの作成は、店舗の裁量に任せるのではなく、本部主導で行うことが重要です。
そうすることで、属人的な判断による「やりやすさ」の偏りを防ぎ、組織全体で統一された営業活動を推進できます。
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セールスステップとKPIの設定

ターゲティング戦略を実践するには、顧客との関係性を段階的に深めるためのセールスステップを定義することが重要です。
これにより、各ステップで達成すべき目標が明確になり、組織全体で同じ「勝ちパターン」を共有できます。

面談可(第1ステップ):顧客と面談が成立した状態です。

  • KPI : 面談数、属性情報充足率
  • 目標 : 受付突破、キーマンとの接触、顧客からの情報獲得

信頼関係(第2ステップ):顧客との間に信頼関係が構築された状態です。

  • KPI : 競合情報把握数、情報提供数
  • 目標 : 単なる御用聞きではない、専門家としての提案活動の開始

パートナー(第3ステップ):顧客の経営パートナーとして認識された状態です。

  • KPI : 上位概念提案数、戦略相談数、IT投資相談数
  • 目標 : 顧客の経営課題に対する本質的なソリューション提案、クロスセル・アップセルの実行

このステップを通じて、単なる「仲が良い」だけの関係から、成果に繋がる「経営パートナー」としての関係へと深化させることができます。
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まとめ:今のターゲット選定は有効ですか?活用できていますか?

現在、多くのIT・システム企業で顧客セグメントの考え方が浸透していますが、その実効性には課題が残ります。

  • 本当にそのターゲット選定は有効ですか。
  • 各ターゲットに対するKPIは設定されていますか。
  • 短期・中期・長期的なアプローチ設計が、各店舗責任者と共有できていますか。

購買力に基づいたターゲティングは、限られたリソースを最大限に活かすための最重要戦略です。

営業担当者の経験や勘に任せるのではなく、本部が優先順位を定め、組織全体でリソースを集中させる仕組みが成果を決定づけます。

特に、重点顧客のセグメント設計や活動基準・タイミング設計を仕組み化することで、属人的な「やりやすさ」ではなく「成果の出やすさ」に基づいた営業活動を推進できます。

次回は「営業スキル」を取り上げ、重点顧客に成果を届けるための具体的なスキルセットを解説します。

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