【IT・システム業】第3回:営業スキル① セールスフローの再構築|顧客心理を変化させ成約率を高めるトップセールスの9ステップ
はじめに:営業力強化が避けられない理由
IT・システム業界を取り巻く外部環境の変化は、営業現場のあり方そのものを問い直している
テクノロジーの進化や購買行動の変化、価格競争の激化に対応するには、属人的な営業や紹介頼みの受注モデルでは限界がある
特に多くのIT企業で、以下のような課題に直面しているのではないだろうか
- 「プロダクトを売りたい」「導入してほしい」という供給側の論理で営業を進めてしまう
- 結果として、顧客の表層的なニーズ(「システムを導入したい」「ツールを変えたい」)は掴めても、顧客が本当に求めているインサイト(「業務課題の解決」「生産性向上」)まで踏み込めていない
- この段階を飛び越えてCX(顧客体験)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとしても、顧客ニーズが分からないため、効果的な施策が打てず、収益向上に繋がらない
今求められているのは、属人的な営業から脱却し、「誰が担当しても一定の成果を生み出せる勝ちパターンの標準化」への転換である
IT・システム業における営業力強化の鍵は「顧客ニーズの獲得」
IT業界の営業は転換期にある
従来の「機能提案(モノ売り)型セールス」ではなく、顧客の真の課題を理解し、未来を共に描く「経営パートナー」への進化が求められている
「勝ちパターン」とは何か
「勝ちパターン」とは、成果を再現可能にする営業プロセスの設計図である
属人的な成功体験に依存せず、組織全体で同一プロセスを回すことで成果を安定化させる考え方である
IT・システム業の売上を120%増加させる4つの要素
営業成果は次の4要素で構成される
それぞれに共通言語(勝ちパターン)を整備し、標準化することで、既存営業の底上げを図り、売上120%増加を実現できる
1.顧客購買力:ターゲット選定とアプローチ戦略
- 顧客分類 : システム投資意欲や成長ポテンシャルの高い顧客を明確に分類し、注力すべきターゲットを定める
- アプローチ方針 : 属人的な接触に偏らないよう、組織としての営業方針を策定し、顧客層ごとに最適なアプローチを定義する
- 新規・既存戦略 : 新規開拓と既存顧客の深耕の配分を共有し、バランスの取れた営業活動を推進する
- コンテンツ整備 : 顧客タイプに応じた提案資料やPoCシナリオを準備し、成約率を高める
2.営業スキル:共通言語による標準化
- 営業力標準化 : トップセールスのノウハウを形式知化し、誰もが実践できる「型」を構築する
- 営業シナリオ設計 : 顧客の購買心理に合わせた提案プロセスとトークを設計し、属人性を排除する
- ツール整備 : CRMやSFA、ナレッジ共有ツールを整備し、営業活動を支援する
- トレーニング文化構築 : ロールプレイングを通じ、標準化されたスキルを定着させる文化を醸成する
3.提案件数(量)・単価:マネジメントによる最大化
- マネジメント強化 : 案件管理と定性・定量マネジメントを組み合わせ、組織全体の提案量を最大化する
- 営業プロセス設計 : 無駄な工程を排除し、リードから成約までのスピードを最大化する
- 案件可視化 : 誰がどの案件をどの段階で進めているかを共有し、適切なレビューや支援を行う
- 指標設計 : KPI/KGIだけでなく、顧客との信頼関係を測る定性指標を導入する
4.関係性(LTV):長期的な信頼関係の構築
- 顧客関係強化 : 定期的な課題共有や改善提案を通じ、顧客の「経営パートナー」として信頼を構築する
- 関係値の定量化 : 「仲が良い」ではなく、経営課題相談・将来ビジョン共有・共同検討などの状態を基準化する
- リファラル強化 : 顧客満足を通じて紹介や再発注を促す仕組みを整える

これら4要素は相互に影響し合う構造であり、一つずつの改善に加え掛け算での強化を行うことで全体成果は大きく拡大する
なぜ「仕組み」が必要なのか
IT・システム業の営業は「人」に依存しがちで、担当交代のたびに成果が揺らぐ
勝ちパターンを仕組み化すれば、以下が実現する
- 誰が担当しても一定の成果を上げられる
- 若手や中堅の成長スピードが上がる
- 経営層が営業活動を「見える化」し、的確にマネジメントできる
まとめ:売上120%増加の出発点は「顧客理解」
4要素を形式知化し共通認識を持つことで営業は効率化する
ただし前提となる最大の課題は、顧客の真のニーズやインサイトを捉えることである
顧客ニーズを理解しないDX・CXは機能しない
顧客理解を欠いたままDXやCXを推進しても、収益につながる施策にはならない
まずは勝ちパターンを構築し、組織として顧客理解の基盤を整えることで、売上120%増加を実現する土台ができる
次回以降のコラムでは、これらの要素を一つひとつ掘り下げ、より具体的な施策について解説していきます。
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