【金融機関】第8回:提案量・質を最大化する営業マネジメント|地方銀行・信用金庫におけるプロセス設計と管理法 [金融機関⑧]
目次
はじめに:なぜ紹介営業が重要なのか
「日頃の顧客訪問はしているものの、なかなか新規開拓に結びつかない…」
「関係が良い取引先の従業員の方への職域サービス提案してもうまくいかない…」
「既存顧客との関係性は良好なのに、いざ『ご紹介いただけませんか?』と切り出すと、なぜか断られてしまう…」
金融機関の営業担当者であれば、一度はこのような悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。
CRM戦略の設計
CRVを最大化するには、LTV向上でも重要となるCRM戦略が不可欠です。顧客データを収集・管理・分析し、顧客ランク別に最適なフォローアップを行うことで、紹介に繋がりやすい顧客を効率的に特定できます。
前回のコラムで解説したLTV(顧客生涯価値)は、CRM活動や顧客との関係深化によって最大化されます。
実は、これらの活動はCRV(顧客紹介価値)の向上にも大きなプラスの影響を与えます。
紹介営業の重要性
単なる新規開拓や訪問活動だけでは、営業活動の効率に限界があります。
紹介営業は「顧客から顧客へ」と口コミの形で広がり、低コストで高信頼の新規顧客獲得チャネルとなります。
顧客からの信頼を基盤にした紹介営業は、受注確度が高く、リピートや長期的な関係構築にもつながるため、営業力強化の最重要テーマのひとつです。
しかし、この重要なチャネルを個人の力量に任せるのではなく、組織的な仕組みとして捉えることが、持続的な成果を生む鍵となります。
紹介営業を成功に導く4S戦略
紹介営業を組織の力に変えるためには、以下の4つの視点から戦略を構築することが重要です。
- Segmentation(セグメンテーション)
- Satisfaction(サティスファクション)
- Sales(セールス)
- System(システム)
1. Segmentation(セグメンテーション)
概念:紹介意向や満足度、影響力といった基準で顧客を分類し、紹介を依頼すべきターゲットを明確化します。
ポイント:
- 満足度が高い顧客であっても、人脈や影響力がなければ紹介にはつながりません。
- また、普段からお付き合いのある話しやすい顧客ばかりに依頼するのではなく、データに基づき紹介特性の高い顧客を選定することが重要です。
事例:
- 顧客を「ロイヤル顧客」「安定顧客」「アップセル顧客」などに分類し、それぞれの顧客に合わせたアプローチ方法を設計することで、依頼の成功率が30%から50%へ向上。
2. Satisfaction(サティスファクション)
概念:顧客満足度が紹介発生の前提条件となります。満足度が一定の水準を超えると、紹介意向が急増します。
ポイント:
- 満足度をデータで見える化し、どの活動が満足要因であるかを明確化することが重要です。
- また、接触頻度が高い段階(例:契約直後やサービス利用時)で満足度を向上させることで、早期に紹介意向を高めることができます。
NPS(ネット・プロモーター・スコア)の活用:
概念: 顧客が自社を他者に「薦めたいか?」を数値化する指標です。スコアが高ければ、紹介意向の高い「推奨者」が多いことを示します。
推進:
- NPSの測定を定期的に行い、その結果をチームで分析します。
- スコアが低い原因を特定し、改善策を実行することで、顧客満足度と紹介意向を同時に高めます。
事例:
- 満足度調査及び紹介意向の把握から、紹介意向のハードル等を導入した支店では、紹介件数が前年対比1.5倍に増加。
3. Sales(セールス)
概念:顧客が実際に紹介行動を起こすための営業テクニックを強化します。
単に「紹介してください」と依頼するだけでなく、顧客が紹介しやすい環境を整えます。
紹介依頼:
自社を紹介してもらえるよう、「自社を〇〇のように紹介してください」と依頼を掛ける活動です。
一般的に、「紹介意向の顧客:8割」に対し「紹介依頼の営業:2割程度」のケースが多いため、依頼数を増やすことが前提となります。
特定依頼:
「知り合いが浮かばない」という顧客の課題を解消するため、以下の「紹介先」を想定し、具体的な人物像を提示します。
- 事業先の従業員 : 住宅ローンや教育ローン、資産形成のサポートなど、従業員の生活に関わる金融サービスを提案。
- 事業先の家族 : 事業承継や相続など、経営者の家族が抱える課題に対応。
- 事業先の取引先 : 元請け・下請け・協力会社など、企業のビジネスネットワーク全体を対象に、新たな取引機会を創出。
- 事業先の経営者の知り合い企業 : 同業他社や異業種の経営者など、人脈を活用した紹介を依頼。
活動指定:
紹介後、次に何をしてほしいか(例:3者面談の場を設定、イベントに招待)を具体的に伝えます。
リピート促進:
紹介者への感謝の気持ちを伝え、報告・情報共有を欠かさず行います。これにより、一度紹介してくれた顧客をロイヤル顧客化し、継続的な紹介ループを形成します。

4. System(システム)
概念:成果創出のパターンを組織的に仕組み化し、運用するための制度やルールを設計します。
紹介営業は個人のマインドだけに依存するのではなく、管理指標や標準化ツールを活用して、誰でも再現可能な状態にすることが重要です。
標準化ツールの活用:
営業担当者の心理的なハードルを下げるため、すぐに使えるツールを整備します。
- 紹介依頼トークスクリプト: 顧客にスムーズに依頼を切り出すための会話例や、具体的な人物像を提示する「特定依頼(こんな人いませんか?)」のリストなど、すぐに使える型を用意します。
- 顧客の声ツール: 実際に紹介してくれた顧客の「満足度アンケート」や「感謝の声」をまとめた資料を営業担当者に共有します。これにより、営業担当者は具体的な成功事例を説明に盛り込むことができ、顧客への説得力が高まります。
- フォローアップマニュアル: 紹介してくれた顧客への感謝の伝え方や、その後の情報共有のタイミングなどを定めたマニュアルを整備します。
プロセス指標による管理
管理指標の活用:
管理指標: 「紹介依頼数」や「協力OK数」といったプロセス指標をKPIとして設定し、進捗を見える化します。
紹介営業の活動を「見える化」し、進捗を定量的に把握することが重要です。
例えば、以下のプロセス指標をKPIとして設定し、チームで共有することで改善を加速できます。
- 紹介依頼数: 「紹介ください」と依頼できた数
- 協力OK数: 「いいよ」と協力を得られた数
- 発掘数: 紹介先の情報を獲得できた数
- 商談数: 紹介を通じて商談化した数
- 契約数: 紹介から契約に至った数
まとめ:紹介営業を組織の力に変える
紹介営業は、偶発的な個人の成功に依存するのではなく、組織的に仕組み化し、マネジメントが推進すべきテーマです。
紹介営業の4S戦略をプロセス指標とともに運用することで、紹介は安定的に発生します。
結果として、低コストで高確度の新規顧客獲得、クロスセル・アップセルの拡大につながり、金融機関の持続的成長を支えることができます。
株式会社バリュー・コア・コンサルティングでは、本コラムでご紹介した紹介営業の仕組みづくりを貴社のビジネスに合わせてカスタマイズし、実行までをサポートいたします。
株式会社バリュー・コア・コンサルティングのご紹介
私たちバリュー・コア・コンサルティングは、成果創出型の日系総合経営コンサルティング会社です。
様々な金融機関(地方銀行・信用金庫)向けに机上の空論ではない、現場に根差した実践的なコンサルティングで、金融機関及びその事業先の売上・利益向上及び事業再生に貢献します。
クライアント成果事例(一部):金融機関A社
- PJ内容 : 営業力強化(事業者向けセールス・職域セールス)
- PJ成果 : 事業支援受託数167%増(昨対比)
- PJ成果 : 融資金額120%増(昨対比)
- 研修満足度 : 100%(満足・大変満足の合計)
導入成果事例: 【信用金庫】営業生産性を最大5倍に向上
金融機関支援事例: 【地方銀行】地方銀行のエンゲージメント向上を支援
▼ 研修時の感想・気付き(某信用金庫)
研修受講後アンケート
▼ 金融機関向けコラム(複数回にて連載)
第1回:信用金庫・地方銀行が直面する構造課題とは?
弊社のコンサルティングサポート領域
営業改革を確実に進めるためには、外部の専門的な視点を取り入れることも効果的です。
例えば、以下のような領域で支援を受けることが可能です。
- 営業力診断・組織診断 : 現状の営業活動やプロセスの課題を可視化し、改善ポイントを明確化。
- 営業スキル強化プログラム : 相談承諾、問題点共有、差別化、クロスセル・アップセルなどの研修や実践支援。
- 営業マネジメント支援 : KPI設計、進捗管理、マネジメント会議運営の仕組みづくり。
- 仕組み化・定着化支援 : CRM活用や営業フロー標準化、評価制度への組み込みを支援。
- 戦略的プロジェクト伴走 : パイロット導入から全社展開までを伴走し、成果創出を加速。
これらのサポートを活用することで、金融機関は現場任せにせず、組織全体で営業改革を推進し、成果を持続させることができます。
御社、御庫の現状に合わせた具体的な改革プランについて、ご相談を承ります。
本コラムの内容に関して、さらに詳しく知りたい、自社の課題について相談したいとお考えの方は、ぜひ一度、無料相談をご利用ください。
お客様の課題を丁寧にヒアリングし、最適な解決策をご提案します。
【会社案内・サービス概要資料】をすぐにご覧いただけます
当社の特徴や提供サービスをまとめた「会社案内・サービス概要資料」と「無料相談のご案内」をご用意しています。
「会社案内の資料」はフォーム入力なしで、すぐに内容をご確認いただけます。
ご検討中の企業様へ(1)|VCCの会社案内・サービス全体像ダウンロード
▼無料ダウンロードはこちら(フォーム入力なし)
「会社案内・5つのサービス」PDFを ”今すぐダウンロード” する
※ パスワード「 VCC2025 」を入力してください
ご検討中の企業様へ(2)|無料相談(予約制)のご案内
弊社(株式会社バリュー・コア・コンサルティング)では、以下5つのサービスを提供しております。
- 総合経営コンサルティング
- 勝ちパターン構築プログラム
- ワークショップ型 リアル研修プログラム
- ワークショップ型 eラーニング型 研修プログラム
- 講演・セミナー 開催
取材のご依頼や各種サービスに関するご相談・ご質問などに関し、『無料でご相談(オンライン)』をお受けしております。
以下フォームより、お気軽にお問い合わせください。
▼無料相談 予約URLはこちら
>無料相談(WEB)の日程調整をする
【NextStep】次の工程としての『金融機関の勝ちパターン』手法を知りたい方はこちら
【FirstStep】前工程としての『金融機関の勝ちパターン』手法を知りたい方はこちら
- 【金融機関】第1回:信用金庫・地方銀行が直面する構造課題とは?|人口減少・利鞘縮小時代の生き残り戦略 [金融機関①]
- 【金融機関】第2回:地方銀行・信用金庫の営業力強化に不可欠な『勝ちパターン』とは?|成果を5倍にする仕組み [金融機関②]
- 【金融機関】第3回:財務再建だけでは不十分?|地方銀行・信用金庫に求められる未来志向の事業再生支援 [金融機関③]
- 【金融機関】第4回:地方銀行・信用金庫のターゲティング戦略|購買力を高める顧客分類とアプローチ方法 [金融機関④]
- 【金融機関】第5回:営業スキル① セールスフローと差別化戦略|地方銀行・信用金庫の営業が成果を出すための第一歩 [金融機関⑤]
- 【金融機関】第6回:営業スキル② ヒアリング力強化とプロの立場|地方銀行・信用金庫の営業が顧客信頼を勝ち取る方法 [金融機関⑥]
- 【金融機関】第7回:営業スキル③ 熱上げからクロージングへ|地方銀行・信用金庫の営業が成果につなげる実践スキル [金融機関⑦]
- 【金融機関】第8回:提案量・質を最大化する営業マネジメント|地方銀行・信用金庫におけるプロセス設計と管理法 [金融機関⑧]
- 【金融機関】第9回:LTV(顧客生涯価値)を高める営業戦略|地方銀行・信用金庫が選ばれ続ける関係性構築 [金融機関⑨]








