【金融機関】第10回:紹介営業力強化(CRV)|地方銀行・信用金庫が口コミと紹介で成果を拡大する仕組み [金融機関⑩]
はじめに:なぜ「熱上げ」と「クロージング」が重要か
日々、地方銀行・信用金庫の営業(渉外担当)が多くの中小企業経営者と向き合う中で、
- 「提案内容は素晴らしいのに、なかなか決断してもらえない」
- 「『検討します』と言われて、その後の返信が途絶えてしまう」
といった経験はありませんか。
地方銀行・信用金庫の営業活動終盤で成果を左右するのが、まさにこの課題を解決する「熱上げ」と「クロージング」です。
これまでのヒアリングや差別化で築いた情報をもとに、顧客の購買意欲を高め、最終的な意思決定を後押しするフェーズです。
このプロセスを体系的に実行できるかどうかが、成約率を大きく分けます。
顧客の心に火をつける「熱上げ」の進め方(顧客を動かすための7つの具体策)
概念
熱上げとは、顧客が「今、決断すべきだ・決断したい」と納得する状態をつくることです。
“単に商品やサービスを説明するのではなく”、顧客の理想と現状のギャップを可視化し、解決に向けた未来像を描かせるプロセスです。
7つの具体策
- ハードルの排除(意思決定を阻害する要因の特定)
- 成果(感情)イメージ共有を高める3つのステップ
- 費用対効果(成果イメージ共有)
- テストクロージング(小さな合意の積み重ね)
- 実施(将来)イメージ共有
- クロージングマインド(お客様への姿勢)
- クロージングの技術(最後の後押し)
1.ハードルの排除(意思決定を阻害する要因の特定)
概念
顧客の意思決定を妨げる要因を特定し、それらを取り除くための行動です。主なハードルには、時期、競合、相談者、決済者、予算(金利等)などがあります。
行動
- 各ハードルに対して、排除のための仕組みや応酬話法を準備します。
- 例えば、予算がハードルであれば財務シミュレーションを提示し、競合がハードルであれば自社の優位性を強調する話法を検討します。
顧客への伝え方
「このシステム導入で年間1,000万円のコスト削減が見込まれ、投資回収期間はわずか3年です。同規模の他社様でも同様の効果が出ています。また、他社様とは異なり、導入後の運用サポートにも強みがございます。」
2.成果(感情)イメージ共有を高める3つのステップ
概念
顧客の「失敗したらどうしよう」という不安を払拭し、「導入したらどうなるか」というポジティブな感情を醸成します。
ステップ1:成功事例の共有
- 行動:導入後の成功事例や顧客からの声、具体的なデータなどを提示し、顧客の成功を具体的にイメージさせます。
- 顧客への伝え方:「A社様も同様の課題を抱えていましたが、導入後1年で売上が15時間体制サポートでした。」
ステップ2:リスクへの対応策を提示
- 行動:万一のリスクを想定し、それに対する保証制度やサポート体制を明確に説明します。
- 顧客への伝え方:「万一のトラブルにも24時間体制で対応するサポート窓口がございます。お客様が安心して事業に集中できるよう、私たちが全力でバックアップいたします。」
ステップ3:未来のストーリーを描く
- 行動:顧客の将来像に沿ったストーリーを描き、「やれば組織が成長できる」という前向きなイメージを与えます。
- 顧客への伝え方:「この設備を導入することで、貴社の生産性は飛躍的に向上し、より多くの人材を育成する余裕も生まれます。未来の成長に向けた第一歩を、私たちと共に踏み出しませんか?」
3.費用対効果(成果イメージ共有)
概念
単なるコスト削減ではなく、「投資対効果(ROI)」、「回収期間」、そして「利益率向上」といった具体的な数値を提示し、顧客の意思決定を後押しする手法です。
行動
投資対効果をシミュレーションできるツールを事前に準備し、顧客の事業規模や課題に合わせてカスタマイズした数値を提示します。
顧客への伝え方
「このサービスは導入費用50万円ですが、業務効率化によって年間200万円のコスト削減が見込まれます。この投資はわずか3ヶ月で回収でき、その後の利益率は10%向上する計算です。」
4.テストクロージング(小さな合意の積み重ね)
概念
顧客の「危機感(避けられる損失)」、「欲(得られる利益)」、そして「サポーター」という3つのトリガーを活用し、意思決定の背中を押す手法です。
ノウハウ:
- 推定承諾法: 顧客が「もし仮に購入するなら」という前提で話を進め、意思決定後の具体的なイメージを持たせる。
- 常時実施: テストクロージングは、商談の終盤だけでなく、常に小さな合意を積み重ねる形で実施します。
具体的事例:
- 「危機感」の訴求: 「実際のところ、このままだと、競合との差が広がり、売上シェアを奪われるリスクが高まる可能性は高いですか?」
- 「欲」の訴求: 「この設備を導入すれば、貴社の生産性は飛躍的に向上します。未来の成長している状態は想像できそうですか?」
- 「サポーター」の訴求: 「他社様でも同規模の企業がすでに導入しており、トラブルもなく運用されています。また、私たちが全力でバックアップいたしますので、ご安心ください。」
5.実施(将来)イメージ共有
概念
契約から導入、そしてその後の運用までの一連の流れを明確に説明することで、顧客がサービス利用後の具体的な姿を想像できるようにし、購買意欲を高める手法です。
一部、テストクロージングと似た概念を含みます。
行動
- 契約前後のフローを可視化したロードマップやタイムラインを提示します。
- これには、契約日、初回ミーティング、導入作業、本格運用開始、その後のサポート内容などが含まれます。
顧客への伝え方:
「もし今週にご契約した際には、来週中には担当者をご紹介し、初回ミーティングをセッティングします。
そこから約2ヶ月で本格運用を開始し、その後は定期的に効果測定のサポートをさせていただきます。」
補足:
- 「契約までのフロー」と「契約後のフロー」を明確に分けることが重要です。
- フローの説明中にも、「いつまでに」「何をすれば」といった具体的なアクションを盛り込むことで、顧客の不安を解消し、スムーズな意思決定を促します。
6.クロージングマインド(お客様への姿勢)
概念
クロージングとは、「買ってください」と強引に迫る行為ではなく、顧客が「この担当者なら、この商品・サービスなら任せられる」と安心して意思決定できる環境を整えることです。
実践
- 「一緒に考える≒感情移入」姿勢: 顧客の課題を深く理解し、単なる解決策の提供者ではなく、ビジネスパートナーとして共に最善策を模索する姿勢を見せます。
- 「背中を押す」役割: 顧客の意思決定を阻害する不安や懸念を先回りして解消し、自信を持って決断できるようサポートします。
- 信頼関係の構築: これまでのヒアリングや提案で築いた信頼関係が、最後の意思決定を左右する最大の要因となります。
7.クロージングの技術(最後の後押し)
行動
顧客の現状維持バイアスを打ち破り、最終的な契約の意思を直接確認します。
顧客への伝え方:
- 現状維持リスクの可視化(事例): 「このままでは、競合との差が広がり、売上シェアを奪われるリスクが高まります。早めの決断が重要です。」
- 最終確認: 「このシステム導入で業務効率が20%改善し、年間コストを1,000万円削減できます。他社でも同規模企業がすでに導入しており、トラブルもなく運用されています。この条件で導入を進めても問題ございませんか?」と確認し、自然な形で最終判断を促します。
まとめ:地方銀行・信用金庫の営業が信頼を基盤にした最終ステップ
熱上げとクロージングは、顧客の納得感を最大化するための最終プロセスです。
重要なのは「売り込むこと」ではなく、「顧客と共に最適解を見つけ、決断を後押しする」姿勢です。
金融機関にとって、これは短期的な成約ではなく、長期的な信頼関係を築く行為でもあります。
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本コラムでご紹介した内容を、貴社のチームが実践できる形に落とし込み、成約率を飛躍的に向上させるお手伝いをいたします。
株式会社バリュー・コア・コンサルティングのご紹介
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クライアント成果事例(一部):金融機関A社
- PJ内容 : 営業力強化(事業者向けセールス・職域セールス)
- PJ成果 : 事業支援受託数167%増(昨対比)
- PJ成果 : 融資金額120%増(昨対比)
- 研修満足度 : 100%(満足・大変満足の合計)
導入成果事例: 【信用金庫】営業生産性を最大5倍に向上
金融機関支援事例: 【地方銀行】地方銀行のエンゲージメント向上を支援
▼ 研修時の感想・気付き(某信用金庫)
研修受講後アンケート
▼ 金融機関向けコラム(複数回にて連載)
第1回:信用金庫・地方銀行が直面する構造課題とは?
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