【金融機関】第3回:財務再建だけでは不十分?|地方銀行・信用金庫に求められる未来志向の事業再生支援 [金融機関③]

弥左大志

弥左大志

テーマ:【業種別】金融業

なぜ、未来志向の事業再生が必要なのか

多くの地方銀行や信用金庫では、事業再生が資金繰りや負債調整といった短期的な対応にとどまってしまうケースが少なくありません。
私たちがこれまでに支援してきた地方銀行や信用金庫の現場でも、同様の課題に直面するケースを数多く見てきました。
しかし、これでは一時的な延命にしかならないどころか、十分な改善に至らず、根本的な競争力の回復にはつながりません。
金融機関

再発リスクを抱えたまま経営が悪化するケースも多く見られるため、地方銀行や信用金庫には「延命」ではなく「再成長」を見据えた、未来志向の事業再生支援が求められています。
事業再生を単なる後ろ向きな対応ではなく、新たな収益機会を創出するポジティブな取り組みと捉えることが重要です。

これにより、企業の再生だけでなく、将来の不良債権リスクを減らし、貸倒引当金を少なくすることも可能になります。

事業再生を阻む「短期的な延命」と「再成長」のギャップ

事業再生の現場では、「短期的な延命」と「中長期的な再成長」の間にある大きなギャップが原因で、以下の3つの課題が頻繁に発生します。

  • 一時的な再構築に留まる : 財務再編や負債調整は行われても、事業モデルや販売戦略が変わらないため、収益力が再び低下してしまいます。
  • 経営・営業機能が未整備 : 事業計画や営業体制(BPO領域の体制を含む)が十分に構築されず、改善が一巡した後に再び悪化するケースが多く見られます。
  • 中期戦略が曖昧 : 業界ベンチマークをなぞる(例えば他社で成功した事例を、再建先でそのまま実施する)だけで、自社独自の「勝ちパターン」を描けず、持続的な成長につながるスパイラルアップを実現できません。

これらの課題は、どれも「計画と実行を一体で回す」ことができていないために生じるものです。

事業再生

再生を成功に導くための3つの対策

では、こうした課題を乗り越え、持続可能な再成長を実現するためには何が必要なのでしょうか。
私たち株式会社バリュー・コア・コンサルティングが、これまでの多くの支援経験から導き出した、具体的な対策は以下の通りです。

1. 早期に課題を見極める

財務諸表の数字を見るだけでは、真の課題は見えてきません。倒産や不良債権化を未然に防ぐため、以下の項目を多角的に把握することが重要です。

金融機関と外部支援企業の連携による分析

  • 金融機関と外部支援企業の連携: 金融機関だけでは難しい、より深い分析を実現
  • 独自の分析システム活用: 財務諸表の数字にとどまらず、多岐にわたる項目を可視化(ビジネスモデル・企業優位性(VRIOなど)・価格転嫁力・各種ポテンシャル・人材構成、後継者の有無等)

これにより、再生リスクの高い企業を早期に抽出し、倒産や不良債権化を未然に防ぐことができます。
事業再生

2. 未来の数字を描く

資金繰り表にとどまらず、12〜24か月先の未来の損益計算書(PL)を設計します 。
この際、外部コンサルティング会社の知見を活用することで、自社や金融機関だけでは見つけにくい問題の真因を特定する要因分析が可能になります。

問題の真因特定と意思決定

  1. 真因の特定と対策の立案: 外部コンサルティング会社の知見も活用し、課題の根本原因を特定
  2. SCI(スピード、コスト、インパクト)を基にした意思決定: 以下の観点から、短期・中期・長期の複数の対策を立案

その後、各経営層や従業員とこれらの対策案をすり合わせ、仮説検証を繰り返すことで、共通認識を築きながら最適な方向性を決定していきます。

価格戦略や販路の最適化、デジタル投資の回収計画などを具体的に盛り込み、「どのように再成長するか」を定量・定性的に可視化することで、経営者との共通認識を築きます 。
真因特定

3. 実行プロセスを伴走型で進める

計画を立てるだけでなく、現場での実行まで徹底的にサポートします。

実行力を高めるための体制構築

  1. 営業・生産・購買といった現場のKPIを設定し、週次・月次で進捗を確認
  2. マインド・行動変容の促進: 戦略、仕組み、組織の一貫体制を整え、人材育成を通じてマインドと行動を変革(これにより、実行力、スピード、精度を向上させる)
  3. 高速な改善サイクルの実施: プロセスがうまくいかない場合は、OODALOOP(観察、方向付け、意思決定、行動)サイクルを回し、早期に改善する
  4. 「感情・理論」両面での支援: 具体的な「やり方・やる時間・仕組み」を改善・構築することで、計画と実行を確実に一体化する

人材紹介


上記のように、戦略、仕組み、組織が一体となった一貫した体制を構築するため、私たちは仕組みを整え、従業員や経営層といった人材の育成にも力を入れます。
改善の成果を資金条件や取引条件の見直しと連動させることで、計画と実行を一体化させます。

地方銀行・信用金庫に求められる包括的な支援

未来志向の事業再生を成功させるためには、単なる財務支援に留まらない包括的なアプローチが必要です。
外部の専門知見を積極的に活用することで、事業そのものの変革を促します。

戦略:

  • 経営方針・ビジョンの策定 : 事業再生を単なる延命と捉えるのではなく、経営理念、経営方針、企業価値観を再構築し、再生後の成長に向けた明確なビジョンを策定します。
  • これにより、経営者と従業員が同じ方向を向き、自律的な変革が可能になります。

仕組み:

  • プロセスの再構築 : 営業構造、組織構造、商品力、財務体質といったビジネスの根幹を「あるべき姿」に合わせ再構築します。
  • 特に、部門別のアクションプランを策定し、実行までを管理する仕組みを導入することで、計画倒れを防ぎます。

組織:

  • 人材育成と活性化 人材能力の向上、組織風土の改善に焦点を当てた支援も不可欠です。
  • 教育研修システムやキャリアステップの構築を通じて、従業員一人ひとりが成長を実感できる環境を整備します。
  • また、理念浸透や評価制度の改善により、組織全体の活性化を図ります。

そして、これらの要素が一貫性をもって機能することが何よりも重要です。
バラバラな戦略、属人的な仕組み、古い組織文化が混在していては、せっかくの取り組みも成果につながりません。

事業再生

同時に進めるべき具体的な支援

未来志向の事業再生は、単なる「資金繰り改善」や「戦略立案~組織に対する目標設定」だけでなく、事業そのものの変革を同時に進める必要があります。
以下に示すような多面的な支援が不可欠です。

1. 損益分岐点売上の向上施策

事業の収益構造を根本から見直すことで、不採算事業の撤退や価格競争から脱却します。

  • 粗利改善 : 仕入れ業者との価格交渉や、仕入れ先の再検討を通じて原価を削減します。
  • 固定費削減 : 人件費、家賃、水道光熱費など、固定費の無駄を徹底的に見直します。

2. 業務生産性向上施策

従業員一人ひとりの生産性を高めることで、企業の競争力を強化します。

  • 一人当たりの生産性向上 : 非生産部門も含めた全従業員の業務プロセスを見直し、無駄な業務を削減します。
  • 生産性向上策の検討・実行 : ITシステムの導入や自動化ツール(RPA)の活用を通じて、業務効率を最大化します。これにより、余剰時間を他の高付加価値業務に振り分けたり、人件費削減につなげたりすることも可能です。

3. 売上向上施策

売上を伸ばすための具体的な戦略と実行体制を構築します。

  • ターゲット選定 : 既存顧客の深耕、過去の取引先への再アプローチ、口コミや紹介による新規開拓など、自社の強みを活かせるターゲットを明確に定めます。
  • 営業リソースの再検討 : 属人化している営業組織を見直し、成果報酬型のBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)や代理店の活用も視野に入れて検討します。
  • 販路拡大のための仕組み構築 : 新規開拓のための営業手法、効果的な販促ツール、顧客を「ファン」にするためのリファーラル(紹介)活動など、具体的な仕組みと手法を再整理します。


まとめ:外部知見を活用した未来志向の再生へ

事業再生を真の成長につなげるためには、単なる資金繰り改善を超えた、包括的なアプローチが不可欠です。
外部の専門知見を活用することで、延命ではなく「再成長シナリオ」を描き、地域企業の持続可能な発展をサポートすることができます。

外部コンサルティング会社の選び方

事業再生を成功に導くためには、自社に合った外部コンサルティング会社を選ぶことが重要です。
特に、以下の3つの観点から比較・検討することをお勧めします。

1. 「自社独自の」戦略・仕組み・組織に対する勝ちパターンの構築

  • 業界の一般的なノウハウを押し付けるのではなく、金融機関や顧客企業の強み・弱みを深く理解し、その企業に合わせた独自の「勝ちパターン」を構築できるかどうか。

2. 再現性のある仕組みを提供できるか

  • 属人的な成功体験ではなく、誰でも実践可能な「型」として言語化し、組織全体で実行できる仕組みを提供できるか。

3. 伴走支援力と成果志向性

  • 計画策定に留まらず、現場での実行まで伴走し、最終的に顧客企業の売上改善・収益改善といった定量的な成果にコミットできるか。

新しい戦略に合った仕組みを構築し、それを実行できる組織を育てる。
この一連の流れをデザインし、実行できるパートナーを選ぶことが、事業再生を成功に導く鍵となります。

株式会社バリュー・コア・コンサルティングのご紹介

私たちバリュー・コア・コンサルティングは、成果創出型の日系総合経営コンサルティング会社です。
様々な金融機関向けに机上の空論ではない、現場に根差した実践的なコンサルティングで、金融機関及びその事業先の売上・利益向上及び事業再生に貢献します。

クライアント成果事例(一部):金融機関A社

  • PJ内容 : 営業力強化(事業者向けセールス・職域セールス)
  • PJ成果 : 事業支援受託数167%増(昨対比)
  • PJ成果 : 融資金額120%増(昨対比)
  • 研修満足度 : 100%(満足・大変満足の合計)

導入成果事例: 【信用金庫】営業生産性を最大5倍に向上
金融機関支援事例: 【地方銀行】地方銀行のエンゲージメント向上を支援

▼ 研修時の感想・気付き(某信用金庫)
研修受講後アンケート
▼ 金融機関向けコラム(複数回にて連載)
第1回:信用金庫・地方銀行が直面する構造課題とは?

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弥左大志
専門家

弥左大志(経営コンサルタント)

株式会社バリュー・コア・コンサルティング

企業にあわせた「勝ちパターン」を見出し、誰でも再現できる仕組みを構築。研修を起点に、現場での実行までサポートします。120%以上の売り上げアップの実績を誇り、金融機関やファンド会社からの依頼も多数。

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