【金融機関】第4回:地方銀行・信用金庫のターゲティング戦略|購買力を高める顧客分類とアプローチ方法 [金融機関④]
目次
はじめに:営業力強化が避けられない理由
金融機関(地方銀行や信用金庫など)を取り巻く外部環境の変化は、営業現場のあり方そのものを問い直しています。
人口減少や低金利による市場縮小に対応するには、属人的な営業やルート営業に頼るやり方では限界です。
特に多くの地方銀行や信用金庫で、以下のような課題に直面しているのではないでしょうか。
- 「融資をしたい」「商品を売りたい」という供給側の論理で営業を進めてしまう。
- 結果として、顧客の表層的なニーズ(「お金を借りたい」「投資を始めたい」)は掴めても、顧客が本当に求めているインサイト(「事業の成長への想い」「将来の不安」)まで踏み込めていない。
- この段階を飛び越えてCX(顧客体験)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとしても、顧客ニーズが分からないため、効果的な施策が打てず、収益向上に繋がらない。
今求められているのは、こうした属人的な営業から脱却し、「誰が担当しても一定の成果を生み出せる仕組み型営業」への転換です。
金融機関における営業力強化の鍵は「顧客ニーズの獲得」
地方銀行や信用金庫の営業は、今まさに転換期を迎えています。
従来の「商品(モノ)売りセールス」に終始するのではなく、顧客の真のニーズや課題を深く理解し、未来を共に語る「経営パートナー」へと進化することが求められています。
よくある”地方銀行や信用金庫”営業の問題点
従来の営業モデルでは、以下のような課題に陥りがちです。
- 担当者が属人的な営業を行い、経営者と対等な立場で会話ができない
- 顧客の企業課題を深く把握できていないため、商品紹介に留まってしまう
- 訪問先が偏り、真に重要な取引先へ十分なフォローができない
- 個人の経験やネットワークに頼るため、組織的なアプローチができていない
- 組織的な営業管理が機能せず、活動の「見える化」ができていない。
「勝ちパターン」とは何か
「勝ちパターン」とは、成果を再現可能にする営業プロセスの設計図です。
属人的なスキルや偶発的な成功ではなく、組織として同じプロセスを繰り返すことで成果を安定させる考え方です。
地方銀行・信用金庫においては、営業成果を左右する4つの要素を組み合わせることで、この「勝ちパターン」を構築できます。
金融機関の成果を5倍にする4つの要素
営業成果は、以下の4つの要素に分解できます。
ルート営業(新規営業含む)の多くは、以下の要素に分解できます。
それぞれの要素について勝ちパターン(共通言語)を構築し、営業推進によるサポートのもと、勝ちパターンの標準化によって既存社員のボトムアップを実現し、生産性を5倍へと向上することができました。
1.顧客購買力:ターゲット選定とアプローチ戦略
- 深耕顧客分類 : 将来のポテンシャル(預金・融資)が高い顧客を明確に分類し、注力すべきターゲットを定めます。これにより、リソースを最も効果的な顧客に集中させることができます。
- アプローチ(本部)方針 : 属人的な訪問に偏らないよう、本部が方針を策定し、顧客ランクに応じたアプローチ方法を定めます。
- 新規・既存先計画 : 新規開拓と既存顧客の深耕、どちらに重点を置くか、組織全体で計画を共有し、バランスの取れた営業活動を推進します。
- 対象別コンテンツ構築 : ターゲットとなる顧客のニーズに合わせた提案資料やツールを準備し、成約率を高めます。
2.営業スキル:共通言語による標準化
- 営業力標準化 : トップセールスのノウハウを形式知化し、誰もが実践できる「型」を構築します。これにより、組織全体の営業スキルを底上げします。
- 営業シナリオ設計 : 顧客の購買心理に合わせた営業プロセスと、それに沿ったトークスクリプトを設計し、誰でも質の高い営業ができるようにします。
- 仕組み(TOOLS)構築 : セールスツールやマニュアルを整備し、営業活動をサポートすることで、業務効率を高めます。
- トレーニング文化構築 : ロープレなどを通じて、標準化されたスキルを習得し、組織全体で高め合う文化を醸成します。
3.提案件数(量)・単価:マネジメントによる最大化
- マネジメント強化 : 案件管理の仕組みや、定量・定性マネジメント体制を構築し、組織全体の提案量を最大化します。
- 営業プロセス設計 : 無駄な工程を排除し、成約までのスピードを最大化する業務フローを設計します。
- 案件管理の仕組み : 誰がどの案件を、どの段階で進めているかを可視化し、適切なフォローができるようにします。
- 定量・定性マネジメント体制 : KPIやKGIといった定量指標と、顧客との関係性といった定性指標を組み合わせたマネジメントを確立します。
4.関係性(LTV):長期的な信頼関係の構築
- 顧客関係強化 : 顧客との関係性を定量的に評価し、経営パートナーとしての信頼関係を強化します。
- 関係値の定量基準化 : 「仲が良い」といった曖昧な表現ではなく、具体的な状態(例:経営相談をされる、将来のビジョンを共有される)を基準化します。
- パートナー強化 : 顧客に満足してもらい、口コミや紹介を生み出すための仕組みを構築します。

これら4つの要素は独立しているわけではなく、互いに影響し合うため、一つひとつの要素を伸ばすだけでなく、掛け算として強化することで、全体の成果は大きく拡大します。
例えば、各要素をそれぞれ20%ずつ改善しただけでも、全体の成果は掛け算によって大きく伸びる構造になっています。
なぜ「仕組み」が必要なのか
金融機関の営業活動は、多くの場合「人」に依存しています。
しかし、属人的な営業は担当者が変われば途端に成果が落ち込み、組織全体の安定性を損ないます。
一方で、勝ちパターンを仕組み化すれば、以下のメリットが生まれます。
- 誰が担当しても一定の成果を上げられます。
- 若手や中堅職員の成長スピードを加速できます。
- 経営層が営業活動を「見える化」して、的確なマネジメントができます。
まとめ:ニーズを起点とする営業改革の出発点
画像の本質は、4つの要素を「形式知化」し、組織全体で共通認識を持つことで、営業活動がより効率的になることです。
しかし、この「効率化」の前に乗り越えなければならない最大の課題が、「顧客の真のニーズやインサイトがわからない」という点です。
これでは表層的なニーズ(「お金を借りたい」「投資を始めたい」)しか掴めず、顧客が本当に求めている「事業の成長への想い」や「将来の不安」といった深いインサイトを捉えられません。
顧客ニーズを理解しないDX・CXは機能しない
この段階を飛び越えて、収益向上を目的としたCX(顧客体験価値)やDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しようとしても、顧客のニーズが分からなければ、収益につながる効果的な施策は打てません。
たとえば、「利ざや確保のためにCX化(顧客体験価値を高められるような、投資信託や保険の販売など)をする」と決めても、顧客がどんな体験を求めているか分からなければ、投資した収益は上がらないケースが現場では起きています。
したがって、まずは「勝ちパターン」を構築し、顧客の真のニーズを組織として深く理解する基盤を整えることが不可欠です。
この基盤の上にこそ、真に効果的なCX・DX推進や、構造改革といった次のフェーズを成功させることができるのです。
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クライアント成果事例(一部):金融機関A社
- PJ内容 : 営業力強化(事業者向けセールス・職域セールス)
- PJ成果 : 事業支援受託数167%増(昨対比)
- PJ成果 : 融資金額120%増(昨対比)
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導入成果事例: 【信用金庫】営業生産性を最大5倍に向上
金融機関支援事例: 【地方銀行】地方銀行のエンゲージメント向上を支援
▼ 研修時の感想・気付き(某信用金庫)
研修受講後アンケート
▼ 金融機関向けコラム(複数回にて連載)
第1回:信用金庫・地方銀行が直面する構造課題とは?
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