【金融機関】第3回:財務再建だけでは不十分?|地方銀行・信用金庫に求められる未来志向の事業再生支援 [金融機関③]
目次
はじめに:変化に直面する金融機関
金融機関を取り巻く環境は、かつてないスピードで変化しています。
- 人口減少と少子高齢化による市場縮小
- 地域企業の後継者不足
- 長引く低金利政策による利鞘縮小
── これらは一過性の課題ではなく、業界全体に影響を及ぼす「構造的課題」です。
こうした変化を前に、「従来型の営業活動や収益モデルに依存し続けると、持続的な成長どころか、組織の存在基盤そのものが揺らぎかねない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
今、金融機関に必要なのは、環境変化を前提とした抜本的な見直しです。
本コラムでは、全11回にわたるシリーズとして、金融機関が直面する課題の本質を解き明かし、それを乗り越えるための具体的な「勝ちパターン」を解説します。
1. 外部環境の変化と構造課題
近年、金融機関が直面している外部環境の変化は次の通りです。
- 人口減少と少子高齢化 : 地域経済の縮小が進み、取引先企業や個人顧客の絶対数が減少しています。これにより、既存顧客の維持や新規顧客の開拓が難しくなっています。
- 中小企業の減少と廃業増加 : 新規開業の停滞や人手不足、個人消費の低迷が、事業者数の減少を引き起こしています。結果として、新規融資や取引拡大の余地が限定的になっています。
- 低金利政策と利鞘縮小 : 長引く超低金利政策により、本業である預金・貸出業務での収益(利鞘)が縮小し、収益性が圧迫される構造が長期化しています。
これらの外部環境の変化は複合的に作用し、金融機関の従来の営業モデルの前提を崩しています。
2. 構造課題が営業現場に及ぼす影響
外部環境の変化は、営業現場に直接的な影響を与えています。
- 新規開拓の難化 : 地域経済の縮小により、顧客候補の絶対数が減少しているため、新しい顧客を見つけることが難しくなります。
- 既存顧客の深耕限界 : 同じアプローチの繰り返しでは、顧客の潜在的なニーズを引き出せず、提案の幅が広がりません。その結果、成果が頭打ちになります。
- 職員のモチベーション低下や離職 : 成果が出にくい環境は、現場で働く職員のモチベーションを低下させ、離職に繋がることがあります。
これらの課題は、単なる営業スキル不足ではなく、環境と組織の構造が生み出したものです。
だからこそ、解決策も「仕組み」や「体制」からの抜本的な見直しが不可欠となります。
3. 今後の方向性とフェーズごとの視点
金融機関が収益体制を強化するには、段階的に取り組むべき領域があります。
以下の図のように
- 「第1フェーズ(基盤強化)」
- 「第2フェーズ(収益構造変革)」
- 「第3フェーズ(構造改革)」
第1フェーズ:基盤強化(今回の提案領域)
「営業力強化」と「事業再生」:収益基盤を変える起点です。
- 課題① :営業推進体制が整っていなければ提案が広がりません。
- 課題② :事業再生に踏み込まなければ貸出先の質は改善しません。
- 現状 : 現場では、人材不足や顧客理解の浅さ、組織の抵抗感などが障害となり、取り組みが停滞することも多くあります。
- 重点 : まず「営業力強化」と「事業再生支援」の両面に手を付け、最初の分岐点を乗り越える必要があります。
第2フェーズ:収益構造変革
- 「CX促進(顧客体験価値の収益化)」と「DX促進(収益体質強化)」:金利収益依存から脱却し、多様な収益源を持つ金融機関へ変革します。
- CX促進 : 顧客体験の質を高め、手数料やサービス収益として形にする取り組みです(例:非金利ビジネスの強化)。
- DX促進 : デジタルを活用して収益モデルを効率化・高度化することです(例:コスト削減、新規事業開発)。
- 課題 : 営業推進体制や顧客理解が不十分な場合、提案が一方向的になりがちです。また、CXとDXは相反する側面があるため、自社の状況に応じて重点を明確にする必要があります。
第3フェーズ:構造改革
- 「プラットフォーム型」:金融機関が顧客に各種サービスを導入するハブとなるモデルです。地域社会のプラットフォームとして、金融以外のサービスも含めた多面的な価値を提供します。
- 「エンベデッド型」:他社のサービスに金融機能を組み込むモデルです。
- 課題 : 従来の融資中心モデルから脱却し、役割や立ち位置を大きく変える取り組みです。高度な戦略性と組織全体の変革が不可欠であり、短期的にはコストやリスクを伴いますが、長期的な持続可能性を確保するためには避けて通れない道です。
4. 金融機関が取るべき3つの視点
構造課題を乗り越え、持続的な成長を実現するためには、以下の3つの視点が求められます。
- 外部環境の正確な認識 : 人口動態や顧客動向をデータとして捉え、将来シナリオを前提に戦略を描く必要があります。
- 営業モデルの再構築 : 属人的な営業に頼るのではなく、組織として再現性のある「仕組み型営業」に転換することが重要です。
- 人材育成と組織文化の変革 : 現場任せにするのではなく、全社的に人材を育成し、顧客価値を提供できる職員を増やすことが求められます。
まとめ:今、どこに手を付けるべきか
- 「営業戦略を立てても現場に浸透しない」
- 「DXを導入しても、結局は使いこなせていない」
そのような課題に直面していませんか。
多くの金融機関が直面している課題の解決策は、「営業体制の強化と勝ちパターンの構築」にあります。
ここを整備せずに次の段階(CX・DX推進や構造改革)に進もうとしても、営業推進体制がボトルネックとなり、十分な成果は得られません。
つまり、最初に着手すべきは、属人的営業から脱却し、成果を最大化する「営業力強化」です。
これを前提としてこそ、持続的な成長が実現します。
次回は、この変革の中核となる「営業力強化の勝ちパターン」について、生産性を5倍にするための具体的アプローチをご紹介します。
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