【人材派遣業】売上向上の鍵は「人材定着」。離職率を減らす組織づくりの秘訣 [人材派遣業②]
目次
これまでのコラムでは、人材派遣業の売上を構成する4つの要素の中から、「人材定着」と「派遣率」について解説しました。
最終回となる今回は、売上の根幹をなす要素である「採用量・質」に焦点を当て、その強化方法を解説します。
採用担当者は「社内トップセールス」であるべき
採用活動は、単に人員を確保するための業務ではありません。会社の将来像を実現するための「根幹」であり、企業にとっての「未来への投資」です。
しかし、多くの企業では、採用担当者が以下のような状況に陥っていることがあります。
【(1)採用担当者の一般的な状況】
- 優秀な人材(経験者)を採用するのは難しいと感じている。
- 大手企業には給与で勝負するしかないと考えている。
- 採用業務の知識や業界・法令に関する知識はあるが、求職者の心理に対応したセールス力や、社内外との折衝力に課題がある。
一方で、私たちが目指す「理想の採用担当者(トップセールス基準)」は、以下のような思考とスキルを持っています。
【(2)理想の採用担当者(トップセールス基準)】
- 優秀な人材(経験者)ほど、自社で働くべき理由を明確に伝えられる。
- 大手よりも自社で働くことの価値を理解し、言語化できる。
- 自社の戦略や未来のビジョン、採用ニーズ、競合状況、自社の強みといった深い知識を持っている。
- 戦略推進に向けた社内外との折衝力、母集団形成に向けた「紹介依頼営業力」、求職者の心理に対応した「セールス力」が高い。
採用活動における「あるべき姿(基準)」を明確にし、採用担当者全員を「社内トップセールス」へと引き上げることが、採用力強化の鍵となります。
今回は、採用を戦略的に捉え、優秀な人材を獲得するための「採用力強化PJ」の進め方をご紹介します。
採用力強化のための3つの領域
私たちは、採用活動を以下の3つの領域に分け、総合的な改善を支援します。
ステップ1:採用戦略(採用ブランディング)
採用活動の成否は、戦略の有無で決まります。まずは「誰を、なぜ採用するのか」を明確にすることから始めます。
戦略的ターゲット選定
3C分析やSTP分析を活用し、採用市場の状況、競合の強み、自社の優位性を徹底的に分析します。その際、「自社:なぜ自社で働くべきなのか」、「市場:求職者が何を求めているのか」、「競合:競合他社にはない自社の強みは何か」という視点を持つことが重要です。これにより、自社が本当に求める「優秀な人材」がどのような人物か、具体的に定義します。
採用コンセプトの設計
明確化したターゲットに向けて、自社が選ばれる理由を言語化します。
- コンセプトの言語化 : 他社にはない独自の価値(優位性)を訴求し、求職者に響く採用コンセプトを設計します。
- コンピテンシー分析の活用 : コンピテンシー分析によって見つかった、他社とは異なる「自社で成功する人材の特性」を盛り込むことが重要です。
- 独自の訴求軸の発見 : 例えば、「当社で活躍している派遣スタッフは、業務処理能力だけでなく、問題解決力や自責性といったコンピテンシーが高い」といった知見を活かし、それを他社にはない独自の訴求軸として打ち出すことで、より自社にマッチした人材を獲得することができます。
ステップ2:採用集客力(マーケティング)強化
戦略に基づき、優秀な人材にリーチするための集客活動を強化します。
多様な集客構造の構築
既存の集客施策を整理し、費用対効果の低いものは廃止を検討します。その上で、新規の集客チャネルを計画的に導入していきます。
- 既存施策の整理と新規施策の計画 : 現在行っている求人媒体やSNS、イベントなどの施策をリストアップし、それぞれの費用対効果や母集団の質を検証します。その上で、紹介会社系、リアル媒体系、リファーラル採用系などのチャネルを整理し、6ヶ月単位での新規施策の計画を策定します。
リファーラル採用の仕組み化
社員が知人を紹介したくなるようなインナーブランディングの仕組みを構築します。リファーラル採用を成功させるための4つの成功要因(3S+E)を整理し、実行します。
- Segmentation(ターゲット選定) : リファーラルを強化するために、自社・求職者のターゲット選定を行います。
- Satisfaction(ファン化要因) : リファーラル推奨度に強い影響を与える因子を特定し、社員の満足度を高めます。
- Enrollment(営業力) : リファーラル営業マインドおよびスキルを強化します。
- System(仕組み) : 成果創出パターンを仕組み化・システム化し、組織一貫体制(制度)を設計します。

これらの取り組みを通じてリファーラルシステムを構築することで、採用コストを低減させるだけでなく、紹介活動自体をマーケティングに派生させることが可能になります。
採用マーケティングの再検討
採用コンセプトに基づいたキャッチコピーやクリエイティブを作成し、求職者の心を揺さぶるような打ち出し方を設計します。
ステップ3:採用営業力(セールス)強化
応募者との面接を「営業活動」と捉え、その質を高めます
営業勝ちパターンの構築
- 自社の強み・弱みの言語化 : 採用競合(大手企業など)の強み・弱みと比較した、自社の優位性を言語化します。優位性を徹底的に訴求する「フレーミング」や、競合と同じ要素を訴求することで優先順位を下げる「予防注射」といった手法を活用し、応募者が自社を選ぶ理由を明確にします。
- 人材紹介会社への営業言語化 : 人材紹介会社の担当者に対し、自社の魅力を効果的に伝えるための営業トークを構築します。求職者にとっての自社の魅力、競合との違い、活躍している人材像などを明確に言語化することで、紹介の優先順位を上げてもらいます。
採用セールスフローの設計と見極め力強化
面接官が共通の基準で求職者を見極め、自社の魅力を最大限に伝えるためのフローを構築します。これにより、面接官の力量に左右されない、安定した選考を実現します。
- 求職者「見極め」の視点 : 採用活動を成功させるためには、面接時に「問題児型」と「次期エース型」を見極めることが重要です。特に、「次期エース型」は基礎能力(知能、概念化能力、情熱、粘り強さ)が高く、自社の未来を担う存在となります。
- 質問スキルの向上 : 求職者の心理に配慮し、意図を深く理解するための質問スキルを強化します。例えば、「1000円ゲーム」というワークショップ形式で、5分間で話せることの限界を体感し、「なぜ話せないのか」を言語化することで、ヒアリングの重要性を学びます。
面接価値づけ営業力の強化
面接時の質問内容を工夫し、求職者の潜在的な志向性や価値観を引き出します。また、自社の強みを説得力のあるストーリーで伝え、求職者に「ここで働きたい」と感じさせる営業力を強化します。
求職者「心理」に対応した採用セールスの構築
- 求職者の心理状態に対応した、面接時の「採用セールス」を構築します。優秀な求職者ほど「面接官=組織レベル」と判断する傾向が強いため、他社(大手など)では得られない価値を提示することが重要です。
面談時の採用セールス事例
- 会話承諾(関係構築) : 求職者が自社・担当に好感を持っている状態をつくります。
- 相談承諾(業界・キャリアのプロ) : 業界における情報格差を提示することで、求職者からプロとして信頼される状態を目指します。
- 問題点共有(ヒアリング) : 転職理由(仕事観・不安・不満)と、未来軸での「ありたい姿」をヒアリングを通じて顕在化させます。
- フレーミング(価値観変更) : 自社優位性から逆算した「企業の選定軸」に共感してもらうことで、価値観を自社に合わせるように促します。
- 差別化(優位性) : 「自社の選ばれる理由」について、特徴や根拠、メリットを共感してもらうことで、他社との違いを明確に認識させます。
- イメージ共有(入社・仕事) : 入社後の具体的な働き方をイメージさせ、求職者の期待感を高めます。
プロセス管理とフォロー体制
採用計画とKPI設定(プロセス管理)
- 採用の「量」と「質」を高めるための採用計画を立てます。
- これにより、計画している人数が採用できない、選考途中で辞退が発生する、欲しい求職者層からのエントリーがない、といった課題を可視化し、改善に繋げます。
内定者フォローの仕組み
- 内定者一人ひとりに合わせたフォロー体制を構築し、入社へのモチベーションを維持します。内定辞退を防ぐための定期的な面談や、入社前の課題解決をサポートします。
まとめ
採用活動を、経営戦略と連動した一貫性のある仕組みへと変革させることで、優秀な人材を安定的に獲得できます。そして、質の高い人材は、組織の売上向上、生産性向上、離職率低下という好循環を生み出します。
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- 採用営業力(セールス)強化 : 面接での営業フロー設計、見極め基軸〜手法・質問設計、面接価値づけ営業力の強化。
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