【介護業界】介護職員の人手不足を解消する組織づくり 専門コンサルが語る勝ちパターン
目次
「保育士がなかなか定着しない…」「採用してもすぐに辞めてしまう…」
多くの保育園経営者様が、このような人材に関する課題に頭を悩ませているのではないでしょうか。
私たちが実施した調査でも、保育士の離職率は全国平均で約9.3%(私営で約10.7%)と、一般的な企業(15%前後)と比較すると低い傾向にあります。
しかし、この平均よりも高い保育施設では、入社してもすぐに退職してしまうということが現実に起きています。
そのため、この平均よりも高い離職率の保育施設こそ、改善の余地が大きいと言えます。
私たちは、成果創出型の日系総合経営コンサルティング会社として、保育園経営者様の課題解決を支援してきました。
その経験から、保育士の離職率低下と組織力強化を実現するための「企業ブランド構築プロジェクト」の概要をご紹介します。
離職がもたらす「見えないコスト」
保育士の離職は、単に人員が減るだけでなく、組織に大きなコストを強いることになります。
- 業績直結コスト : 経験豊富なベテラン保育士が辞めることで、保育サービスの質が低下し、園の評判や入園希望者数に影響する可能性があります。
- 採用・教育コスト : 欠員を補充するための採用コスト(求人広告費や採用担当者の工数)や、新人保育士を一人前に育てるための教育コストが再度発生します。
- 組織風土コスト : 離職が続くと、残った保育士の負担が増え、モチベーション低下や人間関係の悪化を招くなど、組織全体の負の空気が生まれてしまいます。
これらのコストを削減し、強固な組織を築くためには、離職の根本的な原因を特定し、体系的な対策を講じることが不可欠です。
離職要因を深く掘り下げる「4つの要素」
なぜ、保育士は離職してしまうのでしょうか。
私たちは、離職率に影響を与える組織文化を以下の4つの要素に分解して分析します。
1. 会社への信頼・共感
- 理念・戦略 : 園の理念やビジョンが明確で、保護者や地域からの信頼を得られるブランドイメージを築けているか。
- 会社の体制 : 労働環境のルールやシステムが整備され、園の情報が適切に共有されているか。
- マネジメントスタイル : スピード感やチャレンジに積極的なリーダーシップが発揮されているか。
2. 他者の存在
- 職場の人間関係 : 上司や同僚との関係が良好で、協力意識や尊敬の念が持てているか。
- 保護者との関係性 : 保護者から感謝される機会があるなど、良好な関係性の中で仕事ができているか。
3. 外発的動機付け
- 労働条件 : 労働時間、給与、福利厚生など、働きやすい環境が整っているか。
- 報酬待遇 : 成果に基づいた適正な報酬・評価が行われているか。
4. 内発的動機付け
- 達成・称賛 : 仕事の達成感や、結果だけでなくプロセスも評価・承認されているか。
- 仕事内容 : 保育士としての仕事に裁量権があり、やりがいを感じられるか。
- 成長・学習 : スキルやマインドの成長を実感でき、研修機会が提供されているか。
これらの要素を深く分析することで、離職の真因を特定し、本当に必要な対策を見つけ出します。
離職防止を実現する3ステップ
私たちは、この離職要因の分析に基づき、以下の3ステップで「企業ブランド構築PJ」を進めます。
ステップ1:現状分析と戦略立案
現状の課題を客観的に把握するため、まずは園長や現場スタッフへのインタビュー、アンケート調査、組織の定量データ分析を行います。
↓[参考事例] 現状分析の軸

これにより、「現状の離職率(例えば25%)」と「業界平均の離職率(約11%)」のギャップを特定します。
ステップ2:組織文化・体制の構築
分析結果に基づき、離職の真因を解決するための具体的な施策を設計します。
- 理念浸透とエンゲージメント向上 : 園の理念や行動指針を明確化し、スタッフが自分ごととして捉えられるワークショップを実施します。
- 評価・育成体制の再構築 : スタッフ一人ひとりの頑張りが正当に評価される仕組みや、成長を支援する育成プログラムを構築します。
- コミュニケーションの改善 : 上司と部下の1on1ミーティングや、チームでの課題解決ワークを通じて、円滑なコミュニケーションを促します。
ステップ3:採用体制の強化
離職防止と並行して、新たな人材を獲得するための採用体制を構築します。
- インナーブランディング : 園の魅力や価値観を言語化し、スタッフが「この園で働けてよかった」と思えるような組織文化を醸成します。
- 採用コンセプトの設計 : 園の強みや他社との差別化ポイントを明確にし、ターゲットとなる保育士に響く採用メッセージを設計します。
- リファーラル採用の仕組み化 : スタッフが自発的に友人・知人を紹介したくなるような制度を構築します。
保育業界における離職率要因とニーズ(参考データ)
私たちが実施した保育士の実態調査から、離職要因と再就職時の希望条件を分析することで、保育業界特有のニーズが見えてきます。
過去に離職した保育士が退職した理由(複数回答)
- 職場の人間関係(33.5%) : 最も多くの回答を集めており、「他者の存在」に関する課題が、保育士の離職の大きな要因となっています。
データから読み取れること : 離職要因の多くは職場の人間関係であり、これは保育士同士の関係をより良くするための施策(コミュニケーションの量・質、誰がコミュニケーションをするとよいか)が重要であることを示唆しています。
- 給料が安い(29.2%) : 「外発的動機付け」の課題が顕著です。給与や待遇といった条件が、離職理由の上位に挙げられています。
データから読み取れること : 離職要因は様々あると言われていますが、この4つの要素(会社への信頼・共感など)に区分することで、課題と対策が見えやすくなります。
- 仕事量が多い(27.7%)、労働時間が長い(24.9%) : 「外発的動機付け」の一つである労働条件の改善が強く求められていることが分かります。
- 健康上の理由(体力含む)(22.3%)、妊娠・出産(20.6%) : 保育士という仕事が身体に負担をかけることや、ライフステージの変化に対応できていない現状が伺えます。これも「外発的動機付け」の改善が必要であることを示しています。
過去に離職した保育士が再就職する場合の希望条件(複数回答)
- 通勤時間(79.9%)、勤務日数(77.8%)、勤務時間(76.3%) : 再就職に際しては、プライベートとの両立を重視する傾向が非常に高いことが分かります。これは、「外発的動機付け」の中でも、給与よりも労働条件が優先されていることを示唆しています。
データから読み取れること : 再就職の希望条件には、外発的動機付けが多く挙げられますが、これは「大変な職場だからこそ、条件面で妥協したくない」という心理が働いていると想定されます。本来の課題である人間関係が軽視されているわけではなく、むしろ、より良い労働環境を求めている可能性が高いといえます。
- 給与等(63.7%) : 給与も依然として重要な項目ですが、通勤時間や勤務時間といった条件がより優先されていることが分かります。
保育士として働くことへの不安
- 労働条件・労働環境(31.8%) : 労働条件への不安が最も高く、特に保育士試験の合格者にとっては大きな懸念材料となっています。これは、「外発的動機付け」に関する不安が、入職前から存在していることを示しています。
データから読み取れること : 労働環境の不安には、給与だけでなく人間関係の課題も含まれていると考えられます。
- 保育・子育て・実習等の経験不足(24.3%) : 未経験者やブランクのある人にとっては、専門知識や技術への不安が離職に繋がることが分かります。これは、「内発的動機付け」の源泉である成長実感を得るための支援、すなわち社内教育体制の重要性を示唆しています。
現場インタビューの声
データの傾向に加え、現場へのインタビューを踏まえると、 「顧客評価の実感」 (子どもの成長や保護者からの感謝など)や、その評価を得るための「成長」(子どもとの関わり方や教育に関する知識の実践など)を重要視しているケースが多いことが分かっています。
そのため、単純なコミュニケーションや給与等だけではない施策も重要です。
これらのデータを踏まえると、保育業界では、給与だけでなく、働きやすい環境づくりや人間関係の改善、そして個々のライフステージに合わせた柔軟な働き方の提案が、離職防止の鍵となります。
まとめ
保育士の離職は、園の成長を妨げる深刻な課題です。
しかし、離職要因を深く分析し、園の理念や文化に基づいた「企業ブランド」を構築することで、離職率を下げ、優秀な人材が集まる強固な組織へと生まれ変わることができます。
次回のコラムでは、今回ご紹介した内容の中から、特に重要な要素についてさらに詳しく掘り下げて解説していきます。
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- 分析フェーズ: 現状分析とグランドデザイン策定。
- 対策フェーズ: 真因整理と組織文化・体制の構築。
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