社長の力量が足りないと社員は育たないのか? (1/3)
組織マネジメントにおいて、「動機づけ」が必要な場面は多々あります。意欲の高い社員はすぐに行動に移しますし、困難な課題にぶつかっても諦めずに知恵を絞ります。言われたことだけではなく、新しい工夫を試し、プラスアルファの挑戦をします。そんな社員で溢れる企業にしたいと誰もが思いますが、経験に頼っていては実現もままならないでしょう。
「動機づけの基礎理論」を学ぶことで、「人が行動をとる理由を理解する助けとなり、個人や集団の行動パターンを予測することや、必要な行動を促すこと」ができるようになります。また、「自分自身の動機を理解し、自己管理能力を高めること」のマネジメントを担う人にとっては必須のスキルです。
本シリーズでは、9つの動機づけ理論を紹介します。ご自身の仕事において、うまくできていること、できていないことを点検し、改善に結びつけて頂ければ幸いです。
前回は「職務設計理論」でしたが、今回は「公平理論」です。これは、ジョン・アダムスが1963年に提唱したもので、公平に評価され、公平に報いられていると感じると頑張れるという話です。
人と比べるのが人間です。「優れた人間でいたい」「尊敬される人間でありたい」「運の良い人間でありたい」などなど、無いように見えてあるのが人の「欲」です。「他者との比較」の中で優越感を感じてしまうなど、差が気になる生き物なのです。
また、人には「近しい人間と比較してしまう」という特徴もあります。例えば、億万長者と資産を比較してもあまり気にならないのに、同期入社の人の1年早い出世とか、ボーナスの1万円の差とかが気になってしまいます(自分は億万長者であるべきだ、という自意識がある人は別ですが)。自分が同類だと見做した人、心の中で何らかの共通項がある人とは仲良くなりやすい一方、差が気になるのです。そういう意味で、一斉に新卒入社をする企業文化の中では社員は敏感になります。
人間の能力が同じでない限り、結果(報酬)に違いが出ることは仕方のないことです。
ですので、その評価プロセスが公平であれば、社員は納得します。
評価基準を明確にし、評価者教育、被評価者教育を行うことが「公平に評価をされることによる動機づけ」には欠かせません。
結果で評価をするのか、プロセスも含めて評価をするのか、
人による基準は様々ですので、企業としての基準を明確にする必要があります。
ただし、結果で評価をしようとしても、目標の高さを揃えたり、
違う職種の成果を公平に評価をすることも簡単ではありません。
世間の同一職種の給与水準で見ることが納得を得やすい一つの方法ですが、
「事業戦略への寄与」という観点で、職種ごとの重みづけをし、
その企業のビジネスモデルに合った評価制度ができると強いです。
しかし、最終的に完全に公平な評価制度というものを構築することは不可能です。
不公平感を感じた社員がどういう行動を取るかというと次の図のようになります。
過大評価を受けていると感じる人は評価に見合ったアウトプットを出そうとしますし、過小評価を受けているっ人は評価にアウトプットの水準を合わそうとしてしまうということです。つまり「評価に業績を合わそうとする」ということです。
本来は、「良い仕事をすることで報酬を得る」ものですので、
評価が低ければ、認められるように頑張るべきなのに、人は逆の行動をしてしまうのです。
人事評価のフィードバック面談をする際は、この点を重々考慮すべきです。
評価に納得できないメンバーがいた場合は、ちゃんと理由を示して納得できるようにすることが第一ですが、
それ以上に重要なことは、未来に良い評価を得られるように、次のステップや基準を示すことです。
企業にあった評価基準を作り、その基準に基づいて価値ある評価者面談をできるように評価者を教育することは手間暇がかかります。
経営者がそこに関心を示し、妥協なく取り組むことが何より大事だと考えます。
明日は、最終回「期待理論」です。楽しみにしてください。
また、動機づけ理論のまとめ資料は以下のリンクからダウンロードできます。
動機づけの基礎理論