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動機づけの基礎理論を学ぶシリーズ⑥ 強化理論

安澤武郎

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テーマ:経営者向け

組織マネジメントにおいて、「動機づけ」が必要な場面は多々あります。意欲の高い社員はすぐに行動に移しますし、困難な課題にぶつかっても諦めずに知恵を絞ります。言われたことだけではなく、新しい工夫を試し、プラスアルファの挑戦をします。そんな社員で溢れる企業にしたいと誰もが思いますが、経験に頼っていては実現もままならないでしょう。

「動機づけの基礎理論」を学ぶことで、「人が行動をとる理由を理解する助けとなり、個人や集団の行動パターンを予測することや、必要な行動を促すこと」ができるようになります。また、「自分自身の動機を理解し、自己管理能力を高めること」のマネジメントを担う人にとっては必須のスキルです。

本シリーズでは、9つの動機づけ理論を紹介します。ご自身の仕事において、うまくできていること、できていないことを点検し、改善に結びつけて頂ければ幸いです。



前回は「目標設定理論」でしたが、今回は「強化理論」です。


強化理論


「行動の結果が報酬/懲罰となって、次の行動を促進したり抑制したりする」ことのイメージは湧くでしょうか?レストランに行って、とても美味しい食事を食べたらまた行きたくなるが、お支払いの時に想像以上の高額を請求されたら、もう行こうとはしなくなるということを理論化したものです。行動によって嬉しい結果が得られると、その行動が強化されるのは、脳の中でドーパミンが出るからです。目標を達成したときや、褒められたりした際にドーパミンは分泌されますが、このドーパミンは、良い結果が得られた時だけでなく、良い結果が得られると想像しただけでも出る、ということが一つのポイントです。

ギャンブルや依存症になるのは、「次は当たるかもしれない」という期待感によってドーパミンが分泌されているのです。これは強化理論を提唱したB.F.スキナーもスキナーボックスという実験で証明しました。犬による実験で、レバーを押したら確実に餌が出るレバーより、レバーを押したら餌が出たり出なかったりするレバーの方を犬はたくさん押したということです。

これをビジネスに当てはめると、これだけやればこれだけの報酬が得られると決まった報酬にするよりも、成果を出した時にサイコロで報酬が加算される制度の方が人は頑張れるのかもしれませんね。しかし、複雑な人間を相手にすると、そう簡単にはいきません。行動経済学の「プロスペクト理論」の話になってしまいますが、人は期待していなかった以上の利得を得られる喜びよりも、既に所有していたものを失う辛さの方を大きく感じる特徴があります。そして、「得られると思っていた報酬」はもう既に得たものと認識していますので、期待以下の報酬になると、「失った」と認識して、痛みになりますので、報酬を得るための行動は強化されません。もらえると期待していなかったものがもらえるという状況を作らないと行動の強化にはつながりません。「レバーを押す実験」の教訓としては、「報酬」という外的動機であったものを、「遊び」という内的動機が作用する活動に変えることなのかと思います。


強化理論はフィードバック面談をする人は意識をすると良いでしょう。フィードバックは相手の未来をより良くするためのヒントを提供するものですが、中には、自分の基準を押し付けて、強制的に頑張らせるという手法をとっている人もいます。しかし、フィードバックのたびにネガティブな気持ちになっていると、ドーパミンは分泌されませんし、仕事自体の面白さを失ってしまうことにも繋がります。もちろん足りない行動を是正するためのフィードバックも大事ですが、それ以上に大事なことは「良い行動」「良いプロセス」を褒め、行動を強化することによって人を育てていくアプローチです。このアプローチが取れると、前向きで明るい職場と目標達成を両立することがしやすくなります。是非、実務に活かして活用してみてください。

明日は、「職務設計理論」です。楽しみにしてください。


また、動機づけ理論のまとめ資料は以下のリンクからダウンロードできます。
動機づけの基礎理論

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安澤武郎
専門家

安澤武郎(経営コンサルタント)

株式会社熱中する組織

どのような組織にも「常識の壁」「アクションの壁」「スキルの壁」「仕事のやり方の壁」「コミュニケーションの壁」「情熱の壁」があり、能力を活かしきれていません。その壁を取り除き、組織を生まれ変わらせます。

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