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動機づけの基礎理論を学ぶシリーズ⑤ 目標設定理論

安澤武郎

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テーマ:経営者向け

組織マネジメントにおいて、「動機づけ」が必要な場面は多々あります。意欲の高い社員はすぐに行動に移しますし、困難な課題にぶつかっても諦めずに知恵を絞ります。言われたことだけではなく、新しい工夫を試し、プラスアルファの挑戦をします。そんな社員で溢れる企業にしたいと誰もが思いますが、経験に頼っていては実現もままならないでしょう。

「動機づけの基礎理論」を学ぶことで、「人が行動をとる理由を理解する助けとなり、個人や集団の行動パターンを予測することや、必要な行動を促すこと」ができるようになります。また、「自分自身の動機を理解し、自己管理能力を高めること」のマネジメントを担う人にとっては必須のスキルです。

本シリーズでは、9つの動機づけ理論を紹介します。ご自身の仕事において、うまくできていること、できていないことを点検し、改善に結びつけて頂ければ幸いです。



前回は「マクレランドの欲求理論」でしたが、今回は「目標設定理論」です。これはエドウィン・ロックが1968年に提唱しました。



「難易度の高い目標は、従業員のやる気を高め、業績の向上につながる」というロックの主張は、次の事例からもそうではないかと思います。下図は、約200件の企業変革プロジェクトのなかから、無作為に24件抽出して、目標の設定と実績との関係を調べた結果です。


目標の力

横軸に「目標値の引き上げレベル」を、縦軸に「実績の伸び」をとってプロットすると、見事に右肩上がりの分布になっており、正の相関関係があることが見て取れると思います。これは、目標を現状から引き上げれば、引き上げるほど、実績が伸びたことを示しています。ちなみに、中央の赤い対角線より上にある点は、目標達成を意味しますが、目標達成は、全24件のうち10件にとどまっているものの、成果は大きく跳ね上がることがわかると思います。

ここで注意点が一つあります。ロックも述べていますが、「高い目標」を設定すれば、必ず成果につながるわけではない。高い目標は、メンバーが「その目標を受け入れて行動する」ときに効果を発揮する、ということです。


気をつけなければいけないのは、「未達が許されない空気」です。その状況を受け入れ、「達成するために何が必要か」「必要なことをどこまで実行するか」ということに意識を集中していれば良いのですが、達成しないことの恐怖に駆られて、必要でもない行動を取り続けたり、不正を働いたり、心を病んでしまっては本末転倒です。この状態は、下図のパニックゾーンの領域での活動になってしまっていると言えます。

ラーニングゾーン

パニックゾーンに入ってしまうと、萎縮して新たな挑戦がしにくくなってしまいます。できない人にさらにプレッシャーをかけても百害あって一利なしです。ラーニングゾーンでの活動ができるような環境設定をするには、分かりやすい戦略を示し、達成ストーリーを浸透させるとか、未達時に人を責めずに仕組みやプロセスの改善に向き合う姿を見せるなどが大事になってきます。「ホラを吹いてそれを実現するのが経営の仕事」と言われることもありますが、到達できるように導くには、目標を高く掲げるだけでなく、達成までの苦難の道をどう歩むかが大事になってくるということです。一度、一緒にその道を歩み切ったチームは、次の目標をより高めても大丈夫です。これが強い組織に備えられた自力なのだと思います。

明日は「強化理論」です。楽しみにしてください。

また、動機づけ理論のまとめ資料は以下のリンクからダウンロードできます。
動機づけの基礎理論

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安澤武郎
専門家

安澤武郎(経営コンサルタント)

株式会社熱中する組織

どのような組織にも「常識の壁」「アクションの壁」「スキルの壁」「仕事のやり方の壁」「コミュニケーションの壁」「情熱の壁」があり、能力を活かしきれていません。その壁を取り除き、組織を生まれ変わらせます。

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