振り返りの心技体:体
前回からの続きになります。
■ 部門方針の構成要素
次に、部門方針にはどのような要素が含まれると良いでしょうか?組織メンバーのエネルギーを一つの方向に向けるために何を示すと良いか?ということを考えてみましょう。考えられるポイントをいくつか五月雨式に記載してみます。
先ほどの野球の事例で言えば、「優勝する」というのは「目標」です。「徹底的に打ち勝つ」というのは「戦い方」です。「方針」には、「目的・目標」と「戦い方(取るべき行動)」の両方が含まれていると良いでしょう。行動の選択をできるようになれば良いのですが、目的を見失う人も多いため、「目的・目標」との繋がりを示しておくことは有効です。
また、「納得感がある」「共鳴できる」という点も重要なことです。リーダーの方々には、ここを研究してほしいと思います。他の組織で使われていて有効な方針であっても、自部門にそのまま適用して上手くいくとは限りません。例えば、東京支店の方針が札幌支店で有効でないことは想像できるでしょう。そのために重要なことは、やはりリーダーが「戦い方」を徹底的にイメージすることです。数値分析や現場情報の収集・社会環境変化の予測など、総合的な分析をし、考え抜かれた方針には指南力が宿ります。
現場を知らないリーダーが、一般論で「顧客を大事にしろ」と語ったところでメンバーの行動が変わらないのは、この点にあります。「今我々に必要なことは、商品販売後にしっかり使用感をヒアリングして、フォローアップをすることだ」などと、今足りていない、進化すべきポイント・伸び代を具体的にイメージできていることが重要になります。「顧客を大事にする」上でやれることは沢山ありますが、その中でもなぜアフターフォローなのか、しっかりとした理屈(理論背景)も必要です。単にリーダーの主観だけでは巨大な組織は動かせませんし、的外れな方針を示してしまえば取り返しがつきません。
「共鳴できる(感情が動く)」という要素には何が必要でしょうか?一つは身近な話題(事例) でしょう。SNSで広く拡散されるネタは一般論ではなく「誰かの具体的なエピソード」であることがほとんどです。この「物語性」は方針の背後にあると良いかと思います。「物語」を伝える上では様々な工夫が考えられます。SNSで画像などがあるとより拡散されるのはイメージが湧くからでしょうし、発信者の語り口や確信度合いによっても拡散度合いは変わってきます。何よりも発信者がワクワクするような方針であることが大切だと思います。
また、「肯定的なメッセージにする」ことは意識して欲しいと思います。「できていない行動をできるようにする」ということですので、「今できていない課題」を共有することになります。しかし、ここで悲壮感を漂わせたり、ネガティブな表現にしてしまうと、エネルギーが湧いてきません。「今あるもの(できていること)」とセットで示すことが重要です。「アフターフォローができていない」ということは、「過去にたくさん受注ができているのでアフターフォローが必要になっている」という側面とセットなはずです。「今ここまでできているよね」「我々の強みはこういう点にあるよね」とチームを承認し、その上で次のステップを示すと肯定的になります。「ここまでやらねば勿体無い」「もう一歩成長すれば、さらにこんな世界が待っている」と未来を明るく示すのもリーダーの役割です。「危機感」が必要な場合もありますが、そうなる前に「欲求」を刺激して挑戦していけると良いかと思います。
最後に気をつけるべきは「分かりやすさ」です。一言で象徴的な表現に落とし込めると口伝えで伝搬しやすくなります。世間には優れたキャッチコピーがたくさんありますが、何より大切なのはリーダーの言葉であること、その組織に馴染む言葉であることです。そのシンプルな言葉を反復して語ることでメンバーの頭の中に少しずつ入っていきます。リーダーの方々には「いつも同じ話ばかりする」と言われるくらい語ってほしいと思います。
まとめると以下のようになります
* 「目的・目標」と「戦い方(取るべき行動)」を含める
* 理論背景を示し、納得感を高める
* 身近な物語を語り、共感性を高める
* チームを承認し、肯定的に未来を示す
* 分かりやすい印象的な表現で繰り返し伝える