人に向き合わず、課題に向き合う(問題解決における対話の基本 その①)
前回は「生産性」を考える上で、「VE」という概念について紹介をさせていただきました。
では、仕事の生産性を高めるために、そのはたらきの要素を分解してみましょう。
以下に一つの切り口として、仕事を3つの種類に分類をしてみました。
第1の仕事・・・価値創造業務、本業の顧客に対して価値を提供する仕事
第2の仕事・・・社内での情報共有や意思決定のための仕事
第3の仕事・・・自分が成長をしたり、後輩を育成したり、人が成長するための仕事
実際の業務改善の取り組みでは具体的な仕事まで要素分解をしていく必要がありますが、
殆どの仕事において通用するマクロ的な切り口で考えてみたいと思います。
これらの仕事を限られた時間の中でどのように回していく工夫を考えてみましょう。
『第1の仕事(顧客に対して価値を生み出す価値創造業務)』の比率を高め、
『第2の仕事(社内での情報共有や意思決定のための会議や報告書作成)』の時間を削減することが
企業としての生産性を高める一つのポイントになります。
昨年12月26日の日経新聞の朝刊に
「味の素(株)が社内会議と資料作りに業務時間の約半分を費やしていた」という記事もありましたが、
コミュニケーション力、情報伝達能力を磨かないと、
知らず知らずのうちに増えてしまうのが第2の仕事の特徴かと思います。
■ 第2の仕事(会議や報告書作成)の削減
では、どのようにして「第2の仕事」を減らせば良いのでしょうか?
「C(コスト=時間)」だけに着目していると、本来必要な機能が失われるリスクがあります。
過剰なものは削減することも必要ですが、
「F(機能・はたらき)」から考えることを大事にして欲しいと思います。
この生産性を高める鍵はゴール思考、目的思考にあります。
例えば、会議の報告一つを取っても、「単なる情報の伝達」なのか、
「自分を奮い立たせるための決意表明」なのか、「成果のアピール」なのか、
様々なはたらき(目的)で行われています。
上司が「部下の悩みを聞いて解決したい」と考えてMTGを開いても、
「上司に突っ込まれないように問題を隠す」ことが部下の目的になっていれば、
その会議だけでなく資料作成の時間も無駄な時間となってしまうということです。
この目に見えない目的を使い分けることが下手な人や企業がまだまだ多いと感じます。
日本はハイコンテクスト文化であり、曖昧な言語表現ができるのが日本語の特徴だと思います。
その影響もあってここは意図的に磨いていかないと組織として身につきません。
(参考: http://mbp-japan.com/tokyo/penetra/column/47107/)
会議の要件を満たした上で、自分なりの目的を加えていくことも大事になります。
なんとなく「何か学べれば良いな」とゴールを持たずに会議に参加するのか、
「今日はこの問題を解決したい」とゴールを決めて望むのでも差があります。
そういう目に見えない目的や意味合いをしっかり考える手間を惜しまないことで、
無駄な仕事をしなくてすませるようになっていきます。
■第3の仕事(育成と成長)の取り組み方
では、「自分を成長させる/人を育てる活動(第3の仕事)」については如何でしょうか?
人を育てるには時間がかかりますが、
求められる業務水準が上がり、手をかけることが必要な時代になっています。
この「人を育てる」という機能をどのように業務の中に組み込んでいくかということも
知恵をしぼる必要があります。
基本は、「目の前の仕事の実践を通じて学び成長する(OJT=On the Job Training)」です。
「第1の仕事」「第2の仕事」を遂行することがそのまま「第3の仕事」になるように
二つの目的を持って取り組むことが最も効率的です。
「第1の仕事」において、挑戦的な分野を担当していくと
「価値創造業務」はそのまま成長につながります。
できる仕事だけをこなしているとそのツケは後で必ず返ってきます。
また、「第2の仕事」においては、
会議への参加を通じて、考え方や情報伝達能力を磨くことは十分可能です。
「やるべきこと/やるべきでないことをうまく整理できているか」
「自分のメッセージは伝わったか」「相手を動かすことはできたのか」と
自分のチェックポイントを持って工夫をしていけば、自然と「第3の仕事」になるということです。
このOJTの進め方に関しては数々の研究がなされており、原理原則が存在します。
ここは次回以降のコラムで詳しく紹介をさせていただきますが、
1年のスタートにやるべき仕事の整理をして良いスタートを切って頂きたいと思います。