社長の力量が足りないと社員は育たないのか? (2/3)
前回は「やりたい/やらねばマトリクス」を題材に
組織の「安定」と「変革」について解説してきました。
このマトリクスに関し、組織として大事にすべきは、右上の活動を承認することです。
企業のミッションから外れた活動は許容できないでしょうが、
「自分のやりたいことを、組織という器を使って実現する」
という感覚と力量を持った人物を増やしておくことが大事になります。
例えば、「ポストイット」を生み出した3M社は研究職に対して、
その労働時間の15%を自由な研究に投下してよいというルールを持っています
(一方で、同社では過去3年以内に出した新商品が、
売上高の一定比率を上回っていなければいけないといった厳しいルールも存在します)
戦略的に「余白」を社員に提供する経営モデルです。
完全に自由な挑戦を奨励しなくとも、安定的な仕事をした上で、+αの挑戦を奨励することは効果的です。
何にどれだけの時間を投入するのか、頭の整理をさせ、
目先の仕事に忙殺されないように促す仕組みがあれば、組織の中のリーダーが動き出します。
社員の皆さんは、安定にかける時間と変革にかける時間、しっかりコントロールをできているでしょうか?
■自分の裁量
最後に、左下の仕事にどう向き合わさせればよいか、を考えてみましょう。
冒頭の部門会議の振り返りで、ある社員の述べたことがヒントになるかと思います。
「やりたいことなんて考えたことがなかった。
やらねばならないことをやりたいようにすることが自分のモチベーションになっている」
との意見です。
どうでしょう?共感できるでしょうか?
これも一つの方法だと思います。WHAT(何をするか)は選べなくとも、
HOW(どうするか)は自分で決められるということです。
自分の裁量があると「やらねばならないこと」も「やりたいこと」に変わっていきます。
そうやって自分の創意工夫を加えて仕事をしていると、仕事の質も高まり、
仕事の受け手から感謝をされるようになり、仕事の価値を感じられるようになっていくのだと思います。
経験の浅い社員にはこの姿勢を大切にさせてほしいと思います。
何気ない一つ一つの業務、安定した仕事のレベルを高め、
やらねばならないことを十分に果たせないと、いくら+αの挑戦をしたとしても本末転倒です。
日常の顧客とのやりとりにおいて、本当に顧客が抱えている問題は何かを考えて解決すること、
日常のトラブルの解決において、現場に出向き、原理原則を究明すること、
それらの基礎力を失うことはあってはなりません。
もう一つ、最後に加えさせて頂きます。
組織の中に必ず存在する「報告のための仕事」についてです。
これは<やりたい/やらねばマトリックス>の4つの枠の中のどこに入ることが多いでしょうか?
まず、右下に存在するのであれば廃止させるべきです。
組織としてのポテンシャルを発揮するために、
互いの状況や考えていることを共有する必要性はありますが、
環境の変化によって不要となれば「変革」の対象となります。
報告業務が左下になっている社員には
「自分のやりたいように果たす」という観点を加えさせてほしいと思います。
組織としての仕組みであれば、WHAT(何をするか)だけでなく、
HOW(フォーマットや詳細ルール)まで決まっている場合があります。
そこで、自分の裁量を失って受動的な作業にしてしまう人も多いものです。
しかし、求められるWHY(目的・理由)を満たしながら、
自分のWHY(目的・意図)を加えていくという方法があります。
例えば、部門会議ですが、「幹部に状況を報告する」ということが最低要件になります。
そこに「自分のために課題やリスクを整理する」
「自部署のメンバーに現状や自分の考えを伝える」
などという目的を付加することは自由です。
「忙しいから絵が描けない(頭の整理ができない)のではなく、
絵が描けていないから仕事に振り回されて忙しくなっている」 は真理だと思います。
MUSTを乗り越え、会社人生の中で自分の思い描くことを実現できる人が増えることを願っております。
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ペネトラ・コンサルティング株式会社
代表取締役 安澤武郎
公式サイト:http://penetra.jp/
お問合せ: http://penetra.jp/84
著書:『壁をうち破る方法』はこちら
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