社長の力量が足りないと社員は育たないのか? (3/3)
あなたの社員はどのような目標を持って仕事をしているでしょうか?
先日、ある企業の部門会議で
「何をモチベーションとして毎日会社に来ているか?この会社で何がしたい?」
との質疑がありました。
どうでしょうか?社員の皆さんは毎朝会社に出てくる時に、
「今日はこれがしたい」と目的を持って出てこれているでしょうか?
節目節目の振り返りで「今期はこれをクリアしたいな」
とやりたいことを活動に組み込めているでしょうか?
組織人として、自分の持ち場で「やらねばならないこと(求められること)」があるはずです。
一方で、自分が「やりたいこと」もあるのではないかと思います。
その二つは完全に一致しているでしょうか?
社員の皆さんは下図のどこの領域の仕事をしていることが多いでしょうか?
この図で左上の比率を高めることができれば会社人生は楽しくなります。
自分の役割や目的が持てておらず、右下に力を注いでしまっている人もいるでしょう。
組織論の権威ヘンリー・ミンツバーグ教授や
リーダーシップ論の権威J・P・コッター教授の実証研究の結果では、
「忙しいから絵が描けない(頭の整理ができない)のではなく、
絵が描けていないから仕事に振り回されて忙しくなっている」
ということが言われています。
頭の整理ができている人は一見忙しそうに見えても、
やるべきことを的確に判断し、無駄な仕事をしていない、ということです。
■組織の二つの方向性
では、右上の仕事が生じた時、社員の皆さんはどうされているでしょうか?
周囲の人を説得してでも実現に向けてアクションを起こすものでしょうか?
それとも、左側に集中する文化でしょうか?
そもそも右上の仕事ってどれほど持たせることができているでしょうか?
ここを考える上で、「組織には二つの方向性の進化がある」ことを共有しておきたいと思います。
それは「安定」と「変革」です。
人が二人になれば立派な組織となります。
「意思統一」をし、同じ目的に向かって役割分担をして実現していく営みが必要になります。
そこから、人が増え、扱う案件が複雑かつ巨大になっていくと、
仕組みがなくては良いアウトプットを生み出せなくなります。
そこで、各人の役割を明確にし、作業手順を整備し、
誰もが同じような成果を出せるように環境を整えていくことになります。
これが「安定」の方向となります。
一方で「変革」とは、新たな環境で新たな価値を生み出せるように既存の仕組みを破壊し、
再構築する方向性のことです。
もう既に想像がつくかもしれません、
「安定」と「変革」は反対方向の動きであり、
「安定」が高まると「変革」は難しくなり、「変革」を起こすと「安定」は失われることになります。
組織活動はこの繰り返しが必要になりますし、
マネジメント層には、この「安定」と「変革」を使い分ける腕前が求められます。
しかし、この二つの方向性を自覚し、大きな流れを俯瞰できていないと、
「安定」の流れの中に安住したり、「変革」ばかりで疲れてしまうということが生じてしまいます。
これについて組織の中の事例で考えてみましょう。
「安定」の腕前を発揮してポジションを築いてきた管理職は、
そもそも「変革」という志向性を持ち合わせていない場合があります。
「変革」が求められる環境下にあっても、組織を守るために、
リスク回避を優先し、必死に挑戦の芽を摘んでいる場合もあります。
また、家庭を持ち、住宅ローンが残っていると、
頭では「変革」の必要性を理解していながらも、
その経験も腕前もない状態では怖くて挑戦できないというのが人間の性質です。
更には、マネジャー手前の担当者であっても、
時間的・金銭的に報われないイメージや人との関わりの億劫さから
「マネジャーになりたくない」というケースも最近は増えています。
この「安定」を志向するマインド・境遇にいる社員が主流になってしまうと、
組織の「安定」に向かう慣性は強くなり、
組織に属する一個人で「変革」を推進することは難しくなっていきます。
変化の激しい時代となり、「変革」を意図的にどう起こしていくか、
「変革」を起こせる人物をどう育んでいくか、ということが多くの企業で経営課題になっています。
(続く)
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ペネトラ・コンサルティング株式会社
代表取締役 安澤武郎
公式サイト:http://penetra.jp/
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著書:『壁をうち破る方法』はこちら
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