「小さな会社の働く在留資格「技術・人文知識・国際業務」」の付録。「外国人材の通訳・翻訳での採用。在留資格申請で注意したい点」。
外国人を雇う事業所の日本語教育推進法との関わり
2019年6月28日に「日本語教育の推進に関する法律」が公布され、
同日に施行となりました。
世間では、「日本語教育推進法」と言っています。
(私、折本は、行政書士として、
外国人の在留資格手続きに20年以上携わっていますが、
ヒューマンアカデミーの
日本語教師養成総合講座・文化庁指針420時間も修了しており、
日本語学習のアシストもしていますので、興味のある法律です。)
「日本語教育の推進に関する法律」は、成立前、成立後も、
多くのマスコミ、日本語教育の団体や個人が取り上げて発信しているので、
内容を把握している人も多いと思います。
日本国内で暮らす外国人への日本語教育への充実を促すことが趣旨です。
法律には、通常、「なぜ、この法律が作られたのか?」の目的があり、
それが第1条に記載されます。
日本語教育の推進に関する法律は
「外国人を雇っている事業所」
「外国人をこれから雇おうと考えている事業所」
に対し、どのように関わってくるのか?
という本題に入る前に長々とした文章を書きますが、
大事な点なので、ご容赦ください。
第一条
この法律は、日本語教育の推進が、
我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を
国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に資するとともに、
我が国に対する諸外国の理解と関心を深める上で重要であることを鑑み、
日本語教育の推進に関し、基本理念を定め、
並びに国、地方公共団体及び事業主の責務を明らかにするとともに、
基本方針の策定その他日本語教育の推進に関する施策の基本となる事項を定めることにより、
日本語教育の推進に関する施策を総合的かつ効果的に推進し、
もって多様な文化を尊重した活力ある共生社会の実現に資するとともに、
諸外国との交流の促進並びに友好関係の維持及び発展に寄与することを目的とする。
です。
そして、
「日本語教育の推進に関する法律」は、目的以外にも、理念を大事にしていて、
第三条に7項目にわたって、記載されています。
そのうち、第三条第1項では、
「日本語教育の推進は、日本語教育を受けることを希望する外国人等に対し、
その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育を
受ける機会が最大限に確保されるようにしなければならない」
と書かれています(第2項以降は、下記に記載しています)。
又、第四条は「国の責務」、第五条は「地方公共団体の責務」
第六条に「事業主の責務」が定められました。
では、「事業主の責務は何か?」です。
「外国人を雇っている事業所」、「外国人を雇いたいと考えている事業所」は、
「何か義務づけられるのだろうか?」と不安を持つかもしれません。
第六条
外国人を雇用する事業主は、基本理念にのっとり、国又は地方公共団体が
実施する日本語教育の推進に関する施策に協力するとともに、
その雇用する外国人等
及びその家族に対する日本語学習
(日本語を習得するための学習をいう。以下同じ。)
の機会の提供その他の日本語学習に関する支援に努めるものとする。
とあります。
今後、
国と地方公共団体が日本語教育に関する施策を策定し、実行することになるが、
それに協力して欲しい、ということ
そして、雇った外国人等とその家族に対して、日本語学習の機会を提供して、
支援をして欲しい、ということです。
義務付けられているわけではありませんが
(義務付けられているときは、「OOしなければならない」という文章になります)
要望と感じます。
ちなみに、「外国人等」ですが、
「日本語に通じない外国人及び日本の国籍を有する者」(第二条の「定義」より)
です。
第六条の
「その雇用する外国人等及びその家族に対する日本語学習の機会の提供その他の日本語学習に関する支援に努めるものとする」
という文章をどう読めば良いのか?と迷うところなのですが、
「日本語に通じない外国人を雇った場合」は当然ながら、
「日本語に通じない日本の国籍を有する者を雇った場合」にも、
日本語学習の機会を提供して支援して欲しい、と解釈できます。
では、「日本語に通じる外国人」は支援する必要はないのか?ですが、
本人が希望すれば支援したほうが良いでしょう。
ところで、
在留許可を得るに当たって、既に上記のことを要望されているケースがあるか?
ですが、
在留資格「技能実習」と在留資格「特定技能1号」を得ている外国人を
雇っている事業所は要望されています。
では、在留資格「技能実習」「特定技能1号」を得ている外国人以外の
外国人を雇っている事業所はどうか?ですが、
今までは、法律として要望されていません。
ほとんどの事業所は、外国人社員が
「日本語学習の支援をして欲しい」「日本語を習いたいけど、どうしたら?」
と申し出があったとき、
支援する事業所もあれば、無視する事業所もあると推測しています。
支援する例として、
・勤務時間中に、日本語教師を事業所に招いて学習する
・勤務時間終了後に日本語教室などへ行く日は、早めに帰らせてあげる
・学習のモチベーションを高めるために、
日本能力試験などの測定試験に合格すれば、
報奨金を出す、
給料を上げる
・日本語学習に使用する教科書などのお金を負担する
・日本語教室などのレッスン料の一部または全部を負担する
が考えられます。
無視する例は、「勝手に日本語を勉強してくれ」だと思います。
今後は、義務ではないとはいえ、無視や、ホッポラかすことはできないので、
日本語学習の支援については、検討しなければならないでしょう。
「その雇用する外国人等・・・」ですが、社員・従業員の呼称は関係ないと考えます。
以下は、雇用される外国人のパターン別です。
身分関係に基づく在留資格を得ている外国人、即ち、
「永住者」「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者の配偶者等」
を得ている外国人ですが、
在留資格「留学」→在留資格「技術・人文知識・国際業務」
を得ている外国人に比べて、
日本語が拙い傾向があるので
(例えば、日本語の会話はできても、日本語の読み書きができない等)、
より日本語学習の支援が必要です。
就労制限や転職制限がないことから、貴重な存在なので、
本人のキャリアデザインを考えて、手厚い日本語の支援が必要でしょう。
又、
在留資格「留学」を経ないで、在留資格「技術・人文知識・国際業務」などの
就労系の在留資格を得ている外国人もいます。
そのなかには、過去に、日本に留学した経験がない、
又は、自国で日本語教育を受けたこともない、
日本語の学習をほとんどしないで、
就労系の在留資格を得ている外国人もいます。
そういった外国人ですが、
家族がいるときは、配偶者と子供も同様な傾向が見られます。
代表的な例が、在留資格「技能」を得ているコックとその家族なのですが、
こういった人達も、受入れ事業所が配慮しての日本語の支援が必要でしょう。
(尚、この法律で一番力を入れているのは、外国人児童の日本語学習の支援、
と感じます)
「日本語教育の推進に関する法律」が施行されたので、
日本語学習の支援するためには、まずは、支援の実行を前向きに考え、
そして外国人社員の勉強の時間の確保が必要なのですが、
心身が疲弊するほど働かせない、から始めることが肝要だと思います。
今後、外国人を雇用するに当たっては、労働条件のなかに、
日本語学習の支援もセットで考えながら、
「大変になるなぁ」と思わずに、外国人雇用をする必要があります。
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参考
「日本語教育の推進に関する法律」は理念を披露している法律であり、
具体的な施策は定めていないです。
施策については、法律の裏付けがなければ実行できないので、今後、国や
地方自治体で施策の裏付けとなる法律等が策定されると思います。
第一条目的
第二条定義
(基本理念)
第三条
1 日本語教育の推進は、日本語教育を受けることを希望する外国人等に対し、
その希望、置かれている状況及び能力に応じた日本語教育を
受ける機会が最大限に確保されるようにしなければならない。
2 日本語教育の推進は、日本語教育の水準に維持向上が図られるよう行わなければならない。
3 日本語教育の推進は、外国人等に係る教育及び労働、出入国管理その他の関連施策並びに外交政策との有機的な連携が図られ、総合的に行われなければならない。
4 日本語教育の推進は、国内における日本語教育が地域の活力の向上に寄与するものであるとの認識の下に行わなければならない。
5 日本語教育の推進は、海外における日本語教育を通じて我が国に対する諸外国の理解と関心を深め、諸外国との交流を推進するとともに、諸外国との友好関係の維持及び発展に寄与することとなるよう行わなければならない。
6 日本語教育の推進は、日本語を学習する意義についての外国人等の理解と関心が深められるように配慮して行わなければならない。
7 日本語教育の推進は、我が国に居住する幼児期及び学齢期(満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから満十五歳に達した日の属する学年の終わりまでの期間を言う。)にある外国人等の家庭における教育等において使用される言語の重要性に配慮して配慮して行わなければならない。
第四条 国の責務
第五条 地方公共団体の責務
第六条 事業主の責務
第七条 連携の強化
第八条 法制上の措置等
第九条 資料の作成及び公表
第十条 基本方針
第十一条 地方公共団体の基本的な方針
第十二条 外国人等である幼児、児童、生徒に関する日本語教育
第十三条 外国人留学生等に対する日本語教育
第十四条 外国人等である被用者等に対する日本語教育
第十五条 難民に対する日本語教育
第十六条 地域における日本語教育
第十七条 国民の理解と関心の増進
第十八条 海外における外国人等に対する日本語教育
第十九条 海外に在留する邦人の子等に対する日本語教育
第二十条 日本語教育を行う機関における日本語教育の水準の維持向上
第二十一条 日本語教育に従事する者の能力及び資質の向上等
第二十二条 教育課程の編成に係る指針の策定等
第二十三条 日本語能力の評価
第二十四条 日本語教育に関する調査研究等
第二十五条 日本語教育に関する情報の提供等
第二十六条 地方公共団体の施策
第二十七条 日本語教育推進会議
第二十八条 地方公共団体に置く日本語教育の推進に関する審議会等
附則
第一条施行期日
第二条検討
国は、次に掲げる事項その他日本語教育を行う機関であって日本語教育の水準
の維持向上を図るために必要な適格性を有するもの(以下この条において「日本語
教育機関」という。)に関する制度の整備について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
一 日本語教育を行う機関のうち当該制度の対象となる機関の類型及びその範囲
ニ 外国人留学生の在留資格に基づく活動状況の把握に対する協力に係る日本語
教育機関の責務の在り方
三 日本語教育機関における日本語教育の水準の維持向上のための評価制度の
在り方
四 日本語教育機関における日本語教育に対する支援の適否及びその在り方
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