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コロナ禍による世代間ギャップについて

寺田淳

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テーマ:最近の話題から


【はじめに】

 今日はいわゆる雑談の類です。

 4年間のコロナ禍によって世代間のギャップが生じたのは
いろいろな場面で言われていることですが、特に企業内では
けっこう深刻な状態と言う話をある相談者から伺いました。

 表立っての弊害は減少したものの
今後何年にわたってこの影響は継続していくのではないか?

 あくまでも私が知る限りの範囲で思い至った個人の見解です。 

【実態とのギャップ~新入社員】

 この4年間という期間、新入社員は全員集合での入社式もなく
その後の研修もリモートで実施、配属になってもリモート勤務、
4年が経過してようやく「生身の会社に出勤」し「生身の社員と対面」
社歴だけは4年目の新人から中堅の入り口のスタンスですが、
中身は今年の入社組とほぼ同じと言うのが実態です。

 聞いた話によりますと、
これまでは配属された新人には3,4年目の先輩をトレーナーとして
社内外のルールや組織のあれこれを同行したり座学でレクチャーし
その中間報告を受けて所属長が改めて新人教育のかじ取りを行う。

 これが、今は機能していないとのことでした。

 まず新人側ですが、
タイミングによっては学生時代のキャンパスライフも
リモートの日々で卒業を迎え、サークルもゼミも本来の形を経験しないまま
就職活動を迎え、友人作りにも苦労したという世代が多かったようです。

 本来ならこういった新人をいっぱしの社会人として指導、教育を担うのが
3,4年目の年の近い兄貴的な存在の中堅(見習い?)社員たちでした。

 ところが、この世代も入社直後からコロナ禍の直撃によって
自宅待機やリモートワークの日々を過ごしてきたのです。
新人とさほど変わらないタイミングで通常勤務に就いているのです。

 課長や係長には相談しにくい案件や悩みを抵抗なく相談出来る対象の世代が
言い方は悪いですが「使い物にならない」ことで新入社員は拠るべき対象がないまま
仕事に従事することで心が折れたり、徹底した指示待ち人間になったようです。

【実態とのギャップ~中堅社員】

 今度は新入社員を迎え入れる側の入社4年目までの中堅社員です。
こちらも4年間のリモートワークの結果、いざ通常出勤する勤務体系に戸惑い、
直接対面する上司や先輩、同僚にどう接するかでまず苦労したそうです。

 加えて4月に配属された新人の指導は「慣例に従って」自分に課せられたため
自分も覚えると共にその内容を新入社員に伝えなくてはいけない立場になったのです。

 社歴だけは立派でも新入社員に対しての絶対的なアドバンテージは無きに等しく、
それを自覚しているからよけい新人に対しての接し方に苦労するようです。

 思い余って上司に相談しても多忙なベテランや係長以下の中間管理職も通常業務に
戻った中で自分の業務をこなすのが精いっぱい、結局「お前が何とかしてくれ」
の激励なのか放任なのかわからない返答を受けるだけで終わったようです。

 これと似たようなケースに、転職や再就職した際の配属先での問題があります。
それなりの年齢で新しい職場に配属され、管理職に就いた場合です。

 年下の同僚や部下は当然既に業務に精通し戦力として稼働しています。
それに比べて自分はその業界や職種にはド素人同然、微妙な立場な訳です。

 悪い方へ考えを進めれば「私の指導は果たして的を射ているのか?」
「素人課長のくせにとか馬鹿にしてないか?」とどんどん泥沼化します。

 あげくに頭ごなしのパワハラスタイルで自分の立場を強調するといった
悪手の極みを選ぶケースも無いとは言えません。

 同様に「自分は4年も先輩の立場だから」「新人とは違うところを見せつけたい」
等の考えから、誤った選択をしてしまい、却ってダメージを与えることもあります。

 先輩のアドバイスに従った結果、
その新人に対して直属の上司や他の部署のメンバーから
「それは違いますよ、誰から言われたんですか」等と言われても
さすがに正直には言えず、自分の責としてしまう。
でも、心底には「頼りにならない先輩」と言う想いが植え付けられます。

 先輩の方はそういった事実を知らないままであれば
どうも新人が壁を作っているとか他のメンバーを頼るようになった
等の行為を見聞きするにつれて同様に新人に対し接し方が変わっていきます。

 せっかく4年ぶりに通常勤務に戻り、
組織としての再スタート開始と意気込んでいる中、
ひとつのかけ違いから社内で世代間の分断が生じてくるのは
何としても避けたいものです。

【所属長の悩み】

 戸惑う新入社員に悩む中堅社員、最終責任者たる所属長はどう考えているのか?

 経理や総務と言った管理部門であれば
まだ所属長が身をもって指導、教育する機会は
時間のやりくりで対応は可能だとのことでした。

 問題は利害の相反する営業や仕入れ部門でした。
当然この部署には得意先や仕入れ先からの電話やメールが
時を選ばずに入ってきます。

 学生時代から入社後も直接対面して人と話す事、
特に目上の年代の人や、社外の人に接する経験は皆無。
 
 上司の悩みは「挨拶の仕方、言葉使い」の基礎すら出来ていない。
さらには電話拒否症で「新人なのに」真っ先に電話をとろうとしない。

 など等、「こんなことまで会社が時間と手間をかけて教育するのか!」
と思わず感情爆発しそうになったとのことでした。

 この点も経験を積んだ3,4年生がいればそれこそアフター5に
酒を飲みながらのレクチャーや悩み相談で短期間でクリアしていたそうです。

 その肝心の世代が新人並みのレベル…

 これまでだと体育会系の出身者は学生時代にそれなりの先輩への接し方を
体得してきているので挨拶や言葉使いは指導する必要はなかったのです。
それがゼミもサークルも経験ないまま社会に出た訳です。

 でもこれを全て新人の責任に押し付けるのはお門違いでしょう。

 無論、コロナ以前でも挨拶出来ない、言葉使いがなってない問題児はいました。
これは個人の資質の問題ですし最終的には採用部門の責任です。

 ですが大半の新人はそういった機会を本人の意思とは関係なく奪われたまま
社会に出ることになった「巡り会わせが悪かった世代」なのです。

 この世代の採用に関しては「こういう前提がある」事を理解したうえで
採用し、教育していくのは企業の責務だと思います。

 個人の見解ですが、こういった指導や教育に関しては集合研修が適当ですが
それが叶わないのであれば、いわゆる「残業」として実施するべきでしょう。
こういった最低限の素養の習得の為の時間外労働までを一括して働き方改革の
名のもとに時間内に行えと言うのは筋が違うのではないでしょうか?

 やる気のある社員であれば否とは言わないはずですし、
3,4年生も進んで参加することもあり得ます。
机を並べて新人と先輩が共に学ぶのは決して悪いことではないはずです。

 当然指導する所属長も超過勤務になりますが、
そういった時間を共有することで職場の一体感は必ず生まれます。

 悩む前に実行に移す。

 所属長はこういう姿勢でありたいものですね。

【終わりに】

 仕事柄いろいろな職種の方とお会いします。

 上記したように営業から社内管理部門まで
世代ギャップへの不安と不満を口にします。

 最近は総務・人事系の方との語らいでは
半ば笑い話、半ば自虐ネタとしてでしょうが、
「いろんな部門からもっといい人材を採用しろ!」
と言われるそうです。

 でもね、と採用部門のベテランが言うには
「学生時代にサークルも出来ない、ゼミにも参加していない、
ましてやアルバイト経験も皆無といった学生のどこを見ろと言うの!?」

 これまでは「学生時代に経験したことで印象に残ることは?」
「学生時代に培った経験はどんなもので、それを会社の中でどう活かしたい?」
「サークルではどんな立ち位置で、どんな役回りだった?」
といった切り口から面接を進めていくのが常道さったようです。

 それがこの4年間は質問しても意味がないものとなってしまい
質問自体に苦労したそうです。

 それに続く新入社員の教育担当部門でも今までは当たり前だったような
社会人のマナーや言葉使いから指導することで負荷は倍増だとも。

 これはアルバイト経験の無さが大きく影響しているようです。
他人の釜の飯を食べて汗を流して報酬を得ること、その中で自然に体験する
上下関係や年功序列的な慣習の習得も出来ない訳です。

 言葉使いは客商売のマナー以前の問題ですし、お客様との色々なやり取り、
なかには理不尽な言いがかりも経験しますでしょうし、感謝の言葉に
働くことの意義を感じることもあるでしょう。

 そういった経験皆無で社会人になるのですから
教育指導がより初歩から、汎用に、せざるを得ないのはやむを得ないことでしょう。

 あらゆる部署に影響を与えるコロナ禍後の「仕事への後遺症」
本当に怖いのは、何も経験出来ないまま社会人となり、やがて管理職になったとき、
どういう経験値で、業務のかじ取りが出来るのか? 経営の一翼を担えるのか?

 失われた4年間が今後も解消されずに
社内の年齢構成のブランクとして継続していくとなると
今後5年、10年後の動向が大いに気になりました。   

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寺田淳
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寺田淳(行政書士)

寺田淳行政書士事務所

 起業・独立や転職、再就職を考えるシニア世代に対して、現時点での再就職市場の動向や起業する際の最低限の心構えを始め、私自身が体験した早期退職から資格起業に至るまでの経験やノウハウを紹介します。

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