物流Gメンの訪問先は、運送会社ではなく「頼む側」です

浅沼正治

浅沼正治

テーマ:ロジスティクス

「物流Gメン」は運送会社だけの話ではない ―― しわ寄せは、社内の「部門の壁」から生まれる



10月7日、品川区の東京運輸支局で、公正取引委員会・中小企業庁(関東経済産業局)・関東運輸局の3機関による合同荷主パトロールの出発式が行われました。10月と11月は、トラック・物流Gメンの「集中監視月間」です。荷物を出す側、受け取る側の企業を訪ね、長時間の荷待ちや運賃の不当な据え置きがないかを確かめ、法律の周知を進めていきます。


ニュース

「うちは運送会社ではないから関係ない」と思われた方にこそ、読んでいただきたい話です。

問われているのは、お互いの信頼。「頼む側」の姿勢



今年1月に施行された取適法(旧下請法)では、運送の委託も規制の対象に加わりました。トラックを持っていなくても、荷物を出す会社、部品やシステムを発注する会社は、すべて「頼む側」です。

小売業では、納入業者の社員に陳列作業を無償でさせていた会社に、公正取引委員会が相次いで警告を出しています。「昔からの慣習だから」は、もう通りません。

しわ寄せは、悪意ではなく「部門の壁」から生まれる



私は2009年から15年間、メーカー系物流子会社の社長を務めていました。配車や倉庫での荷役など、いつも現場と一緒に仕事をしてきた経験から言うと、いちばん手ごわかったのは「お客様のために」という言葉でした。

この言葉は、誰も反対できないマジックワードです。「お客様のために」、もっと早く、もっと安く。その声が社内に行き渡るほど、私たちは目の前の個別調整と、全体をどう回すかという視点との間で、板挟みになることが少なくありませんでした。

なかでも難しかったのが、スケジュールの平準化です。工場は、少量多品種を細切れには作れません。ある程度の量をまとめ、日程を組んで作ることが、そのまま製造原価に響くからです。一方で営業は、お客様の希望を優先します。配送は「朝一番に」という時間指定が重なり、案件対応となれば週末に仕事が集中する。

その間に立つのが倉庫です。倉庫は、生産と出荷の波を受け止めるダムのような存在です。量の波が来るたびに、倉庫の機能も現場の作業も揺さぶられ、それに合わせて人の手配を増やしたり減らしたりする調整が、とにかく大変でした。これは今も、どの業界でも、大きくは変わっていないと思います。

ここに悪意は、どこにもないのです。

営業は受注を取りたい。購買や製造はコストを下げたい。それぞれが正しい仕事をしています。けれど部門の間に調整役がいないと、無理はいちばん弱いところ、つまり現場と社外の協力会社に流れていきます。不当なしわ寄せの多くは、誰かの悪意ではなく、この「流れ」の詰まりから生まれます。

必要なのは役職ではなく「全体を見る目」



今年4月から、一定規模以上の荷主企業には「物流統括管理者(CLO)」の選任が義務づけられました。中小企業の多くは対象外です。けれど、営業・購買・製造・現場をまたいで、モノと情報の流れを見渡す役割は、会社の規模に関係なく必要です。専任者を置けないなら、経営者自身がその目を持つしかありません。

全体を見る目があれば、たとえば「朝一番」の時間指定が、本当にお客様にとって必要なのかを問い直せます。週末に集中する案件を、少し前倒しで工場や倉庫に伝える仕組みもつくれます。ダムに一度に押し寄せる水を、上流で少しずつ流すようにするイメージです。いずれにしても、ダムが決壊しないように、そして流通過程で、水(もの)が溢れないように、鳥瞰できます。

まず確かめていただきたいのは、次の三つです。

- 営業がお客様と約束した条件(納期・時間指定・搬入や追加作業)を、工場・倉庫・協力会社が前もって知っているか
- 協力会社からの値上げの相談に、誰がどう答えているか
- 営業の評価に、無理な対応で生じた「見えないコスト」が入っているか

適正な取引は、事業を止めないための投資



人手不足のいま、無理を押しつける会社からは、協力会社も社員も離れていきます。取引先に正当な対価を払うことは、利益の流出ではなく、自社の事業を止めないための投資です。そして「お客様のために」を本当に続けるためにも、流れ全体が無理なく回っていることが欠かせません。


歯車 部門の壁









「CLOの視点が必要だとは思うが、誰に任せればいいか分からない」「営業と現場がうまくかみ合わない」。そうしたお悩みがあれば、まずは現状をお聞かせください。物流の現場の内側にいた経験から、流れの詰まりがどこにあるのかを一緒に見つけます。初回のご相談は無料です。




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浅沼正治
専門家

浅沼正治(経営アドバイザー)

モノコトフロー研究所

物流子会社の社長として15年、組織の拡大と現場の課題に向き合ってきました。外から助言するだけでなく、経営者の孤独と現場の本音の両方がわかるからこそ、納得して動ける仕組みを一緒につくれます。

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