知り、そして言葉として伝えるべき 「嘉代子桜」のこと

テーマ:小田原漂情

 8月6日につづき、81年前の今日長崎に原爆が落とされたこの日のブログを、言問学舎ホームページから常体のまま転載させていただきます。


 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典を、今年はその時間に視聴することができなかった。NHKでこの日の式典も放送するようになってから、基本的に毎年欠かさず見ているが、今年は、昨年のこの日に他界した義母の一周忌が執り行なわれたため、録画視聴とせざるを得なかった事情がある。この文章の概略をしたためていた前夜と今日のしかるべき時間に黙禱をしたことは、言うまでもない。なお長崎の原爆死没者名簿に今日奉安された方の数は2,773人、これまでの総人数機204,708人に及んだという。

 鈴木志朗長崎市長の長崎平和宣言は時に深く心に刺さり、時に力強く響いたが、特に記録したい言葉を掲げさせていただく。

‐広島・長崎への原爆投下は、人間が人間への核兵器使用という一線すら越えてしまう現実を突きつけました。
‐「平和の原点は、人間(ひと)の痛みがわかる心を持つこと。」(物故された被爆者の方の言葉)
‐核抑止論は、極めて危うい。核兵器は「必要悪」ではなく「絶対悪」であり、人類と核兵器は決して共存できない、と。

 また被爆者代表、6歳の時に被爆された本村チヨ子さんの「平和への誓い」からも、引用させていただくことをおゆるしいただきたい。

‐人と人が分かり合うためには対話しかない
‐私は平和とは命を守ること、命とは何よりも優先されるべきものだと思います。 

 いずれも引用させていただいたのは一部分の、強く響いて来る言葉だけである。インターネットでどちらも全文読むことができるから、ぜひご一読いただきたい。

今日、あらためて思い、表明するのは、言葉を理解し、受けとめることが、人間の営みとしてもっとも重要だということである。

 6日の文章でも、今年は言問学舎の子どもたちの読書感想文のことを書かせていただいたが、長崎に関しては、やはり小学4年生の1人が、『かよこ桜』(山本典人作/新日本出版社)を選び、読んでいる。現在の十歳にもならぬ子たちが、81年前に原爆で命を奪われた方たちのことを、その言葉を、まっすぐ受け止めているのである。

 この本の主人公である林 嘉代子さんは、当時長崎県立高等女学校の4年生で(現在の高校1年生にあたる)、学徒動員によって城山小学校で働いていた。昭和20(1945)年8月9日、その日の朝、嘉代子さんはめずらしく、「今日は行きたくない」と言って、一度家を出たのに引き返して来たそうである。お母さんは喉まで出かかった「休んだら」という言葉を押しとどめ、彼女を励まして送り出した。だが数時間後、爆心地から500メートルほどの位置にある城山小学校は熱線と爆風、放射能に見舞われ、業火に包まれた。お母さんは必死に城山小学校まで走って行こうとしたが、近所の人に止められて、なすすべもなく城山小学校のある浦上の方角を見やるしかなかったという。

 翌日朝から、お父さんとお母さんは嘉代子さんをさがして歩かれたが、嘉代子さんと会うことはできず、何日か過ぎてから、一度は嘉代子さんと歯並びの似た人の遺体を連れ帰り、弔いをした。しかしやがて嘉代子さんがどこかで待っているという思いが強くなり、ふたたびお父さんとともにさがし歩いて、8月30日に、城山小学校の3階で、嘉代子さんのなきがらと出会うことができたのである。

 のちにお母さんは、嘉代子さんと、一緒に亡くなったおおぜいの女学生たちの魂を慰めるために、城山小学校に桜の苗木を贈られた。その桜は「嘉代子桜」と名づけられ、嘉代子さんや同じ時に亡くなった女学生、原爆のために亡くなった方たちを追悼し、平和への願いを伝えつづけている。お母さんは、「あの時自分が仕事に送り出さなければ」と悔やむ思いをずっとかかえこんでいらしたそうである。また嘉代子桜の2世、もとの原木から接ぎ木した桜の木が長崎市内ばかりでなく全国の諸都市に植樹され、林 嘉代子さんの悲劇と恒久平和への思いとを、受け継ぎ伝えつづけている。

参照 『かよこ桜』 山本典人作/新日本出版社、1981年7月15日初版発行
被爆前の日常アーカイブ「被爆前の長崎の日常/嘉代子さんとの思い出」長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)、国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館 ほか

 私は2022年に長崎をたずねた際、案内して下さった方が城山小学校へお導き下さり、嘉代子桜のことも教えていただいて、桜や嘉代子さんのお名前の記された殉難者名簿なども撮影した。その写真を掲載し、嘉代子さんと原爆で犠牲となった方々を悼む思いを捧げたい。また末尾に、現在公開中の「長崎の鐘・新しき」のURLも記載させていただく。

嘉代子桜
嘉代子桜.JPG
               嘉代子桜

三菱兵器製作所関係原爆殉難者名簿
       原爆殉難者名簿(城山小学校平和祈念館)


城山小学校平和記念館
     城山小学校平和記念館

[[https://www.youtube.com/watch?v=jzNjIy0_21Y長崎の鐘・新しき 小田原漂情歌唱 ]]
長崎の鐘・新しき 小田原漂情歌唱


令和8(2026)年8月9日
小田原漂情

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

小田原漂情
専門家

小田原漂情(学習塾塾長)

有限会社 言問学舎

<真の国語>とは?正解を見つける力ではなく、文章の本質を読みとり、自分の身に引きつけて、生きた考えを組み立てられる力のことです。それをすべての生徒が「わかる」ように、かつ「楽しく」指導します。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師

小田原漂情プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼