受験のこもごも／ことし2021年、忘れがたいきらめきを

　塾というなりわいに身を投じて、そろそろ20年近くになります。さらに以前、25歳の時から学習参考書の出版社に勤め、塾の先生方とお付き合いをさせていただいていましたので、塾の現場に近いところへ身を置いてからは、34年目に入っています。その出版社勤務の時代、塾経営の先達である先生方から、直接の言葉ではなかったかも知れませんが、「塾というものは子どもの人生を預かる、責任の重いなりわいだ」ということを、知らず知らず受け止めていたように思われます。特に二十代の若いころは、「小田原さん塾をやればいいのに」とすすめていただいても、「そんなに責任の重い仕事はできません」などとお答えしていた記憶があります。

　「子どもの人生を預かる」というのは、けっして誇大な表現ではありません。中学受験の12歳、高校受験の15歳、大学受験の18歳。それぞれに、一人一人の子どもたちが、真剣に自分の将来を懸けて、受験という大きなチャレンジの場に向かうのです。大人から見れば、たとえその結果が100％希望をかなえるものでなかったとしても、道はいくつもある、気を取り直せ、と助言するべきことがらなのですが、思うような結果を得られなかった子どもたちには、時にそれは消化しきれない、大きな痛手となることがあります。その後の人生に大きな影響を及ぼすという意味で、「子どもの人生を預かる」という認識は、少しも大げさなものではないのです。

　ですから毎年の受験に際して、結果が思わしくなかった子に精一杯寄り添い、語りかけることが、塾長としてもっとも重い責務だと、私は考えています。決まった進学先で、自分にできる最大の努力をすること。それで一度の受験の失敗は十分取り返せるし、そこでの生き方が、その後の人生を輝かせることもあれば、曇らせることもある。そうした意味のことを、こちらも苦しみを共有しながら、真剣に語るのです。
　
　今年、大変うれしく、私が言問学舎をつづける限りずっと語りぐさにするであろう、言問学舎卒業生の大躍進がありました。この文章を書くことについて、本人の承諾ももらっていますので、紹介をさせていただきます。その卒業生は、高校進学にあたり、いわゆる併願校が進学先となりました。進学に際し、先述した内容を話して聞かせたのは言うまでもないことです。入学後、4月の終わりには部活動の報告に来てくれて、9月の文化祭はステージを見に行きました（合唱部所属）。その時一生懸命やっている様子を確認し、安心もしたのですが、高校生活の最後には、大学受験という大きな関門があります。ここでは共通テストの古文について、卒業生対象として可能な限りの手助けをさせてもらったのですが（理系受験）、最終的に後期まで頑張り抜き、地方の国立大学の志望学部への合格、進学を果たしてくれたのです。さらに高校の卒業式では、3人が対象となっている個人表彰の2番目に、栄えある表彰を受けました。そのことが、その子の高校の3年間がいかに充実したものであったのか（すなわちどれほどひたむきに頑張ったのか）、雄弁に語っているように思われて、感無量でありました。

　つい先日、現況を詳しく聞く折があったのですが、地方都市での一人暮らしを、つつがなくこなしているようです。そして大学では混声合唱サークルに入って、今も一生懸命歌っているそうです。高校での合唱部の経験が、大学でも生きているのです。これほどすばらしいことがあるでしょうか。日ごろ受験、生徒指導というと堅い、きびしい話になることが多いですから、今日は明るい、そして受験の結果に悩むお子さんたちのためになる話を綴らせていただいた次第です。これほどの明るい話題、教え子の晴れやかな快挙に立ち会えることは、長く塾をやっていてもめったにないことです。私自身にとっても忘れがたいきらめきの春から初夏を、楽しく過ごさせていただきました。

※言問学舎の2021夏期講習は、今からのご相談、無料体験授業をお受けしています。1クラス6名までの少人数制ですから、途中からでも柔軟に対応させていただきます。お気軽にご相談下さい。






国語力に定評がある文京区の総合学習塾教師
小田原漂情
文京区の総合学習塾・言問学舎HP

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