三陸の鉄道に捧げる頌(オード)の完結作『志津川の海』を書きました!
一昨日、かねて予想されていた通り、東京がことし全国で一番早く、ソメイヨシノ開花の観測地となったそうです。桜の季節ともなれば、誰もが心浮き立つものですが、やはり歌人のはしくれである私としては、短歌、文学の観点から、桜のことを考える習慣が根づいております。そしていく度か書いているため今回は詳細を省きますが、桜と言えば在原業平の<世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし>の歌を、この時期にはどうしても思ってしまいます。
また先日、東京大空襲と東日本大震災のことで一文を認めた際、言問橋についても言及しました。在原業平であろうという『伊勢物語』の主人公が、いまの白鬚橋付近とされる「すみだ川」のほとりで<名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと>の歌を詠んだと書かれているのは、同書の「東下り」の章ですが、この章では冒頭の方に、やはり有名な、次の一首が挙げられています。
から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ
この歌は、「かきつばた」の五文字を、「初句、二句、三句、四句、結句」それぞれのはじめに読みこんでいる(折句)ほか、序詞、掛詞、縁語といった和歌の技法をたくさん盛りこんだ歌としても、よく知られていることと思われます。
詠まれたのは、三河国(現在の愛知県東部)の八橋というところ(愛知県知立市)だとされており、授業で生徒たちに教える時、私自身がかつて親しんだそのあたりの土地の様子なども織り交ぜて、話しております。かつて親しんだ、とは、四半世紀も前になる平成2年(1990年)から平成7年(1995年)にかけての5年間、当時勤めていた出版社の転勤で、名古屋に住んでいたことによるのですが、このほどちょっと急用ができて、その名古屋へ行くこととなりました。
翌日は時間がありそうなので、この三河国の八橋、業平が<から衣・・・>の歌を詠んだ地をたずねようかなどと、いま、ぼんやり考えているところです。無事にそこを歩くことができ、業平の心について感じるところをまとめることができましたら、いつかまた本コラムで、お話ししてみたいと思います。
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