今なすべきことを振り返ると-
6月2日から7月16日まで、YouTubeでの「詩の朗読」は高村光太郎『智恵子抄』の15作品を公開し、みなさまにご好評を頂戴しました。光太郎作品についてはいったんひと区切りとさせていただきましたが、25日土曜日に、「夏休み特集」第1弾として、立原道造の「のちのおもひに」を朗読、公開しました。
立原道造は詩誌『四季』の同人で、東大の建築学科に学び、辰野金吾賞を3年連続で受賞した秀才でした。文学においては、浅間山麓の軽井沢や信濃追分で室生犀星や堀辰雄と親しみ、うつくしい詩作品を書きましたが、満24歳の若さで昭和14年(1939年)に世を去っています。彼の卒業設計「浅間山麓に位する芸術家コロニイの建築群」とは、軽井沢、追分ぐらしのなかで構想されたものでしょう(「村ぐらし」という初期詩作品もあります)。
私個人のことで言えば、夏目漱石や志賀直哉、武者小路実篤といった作家たち、髙村光太郎、そして石川啄木や島木赤彦などの短歌も、その作品を読むことの足がかりは、中学、高校の先生方に導かれてできたものでしたが、光太郎作品の力に魅せられて、高校の図書室や帰りがけの書店で詩の世界にのめりこんで行った過程の中で、立原道造とめぐり合ったのであり、思い入れは深いものがあります。
そして大学時代の4年間と卒業後の3年間、場所はやや離れますが八ヶ岳山麓に深く親しむ中で、立原の高原のイメージはそのまま自分自身の青春の姿と重なりました。
夏期講習中で時間の制約が大きいため、不定期であまり多くの作品を読むことはできませんが、夏休み中、詩の朗読では、立原道造の作品を手がけてみたいと思います。