四万十・江川崎の思い出

小田原漂情

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テーマ:小田原漂情

 昨日は国内の史上最高気温41.0℃を記録したとのYAHOO!ニュースに驚いて、さらに「高知県四万十市」とあるのに気づき、ある種の胸さわぎにかられました。そしてニュースのタイトルをクリックして詳細を読むと、41.0℃を観測したのは、同市の江川崎(えかわさき)であるとのことで、たしかな根拠があったわけではないのですが、「ああ、やはり」と、思ってしまいました。

 江川崎は、四万十川の中流部、かつては西土佐村と言った、愛媛県境に近い山間部です。鉄道で言えば、現在は「若井」駅から土佐くろしお鉄道と別れた予土線の中間主要駅が「江川崎」駅で、全通前は愛媛県側からの「宇和島線」の終着駅でした。

 なお、鉄道会社の区分は若井からですが、運転系統は「窪川」駅から宇和島行きとなっています。若井を出るとほどなく、私の大好きな川奥信号場で分岐となり、土佐くろしお鉄道は右回りの大きなループで、もと来た線の下を大きくくぐって、中村方面へ向かうのです。

 江川崎駅のすぐ近くを、四万十川が流れています。ここを旅したのは、1990年、27歳の時でした。前夜は足摺岬に泊り、松山の友人のところへ向かう途上、この江川崎で途中下車して、四万十川の水に触れました。その日も暑い一日でした。当時書いた文章を、ちょっと引用させていただきます。

 ・・・それから予土線のワンマンカーで、まず江川崎まで来たわけだが、上流部から中流部にかけての四万十川(ここでは仁井田川)が、車窓の右手にずっと沿っていた。河口部では大河の様相を見せる四万十川だが、上中流部はまさに山あいの清流だ。夏休み、さわやかなせせらぎと蝉しぐれ、澄み切った水のきらめきにおどる銀鱗、かぐわしき鮎のすがた、そんな言葉が次々に口を衝いて出てくるような、なつかしくうつくしい川の姿であった・・・。      (拙著『遠い道、竝に灰田先生』中、「松山にて」より)


 文字通りうつくしい山あいの四万十川を、その日は堪能したのですが、「南国の夏の日射し」(引用前掲書)も、また意識下の強い記憶となって、残っていたようです。だから「四万十市で41.0℃」の報に接した時、とっさに「江川崎」の地名が浮かんで来たのでしょう。

 最後に拙句をひとつ、添えさせていただきます。

   トロッコに蝉ぐわぐわと啼きかかる   漂情   

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小田原漂情
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小田原漂情(学習塾塾長)

有限会社 言問学舎

自らが歌人・小説家です。小説、評論、詩歌、文法すべて、生徒が「わかる」指導をします。また「国語の楽しさ」を教えるプロです。みな国語が好きになります。歌集・小説等著書多数、詩の朗読も公開中です!

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