無料セミナーが有料相談につながらない理由

新井一

新井一

テーマ:起業

無料セミナーで満足してもらうほど、次へ進まない

――新井さん、今日は「無料セミナーを開いているのに、有料相談につながらない」という相談です。参加者は集まって、感想も悪くない。それでも有料相談の申し込みがゼロだと、何を直せばいいのか分からなくなりますね。

新井:そうですね。まず見たいのは、その無料の場に持たせている役割です。参加者に喜んでもらえているのに売上につながらない場合、無料セミナーの中で満足を渡しきっていることが多いですよ。

――満足してもらうこと自体は、悪いことではないですよね?

新井:もちろん悪くありません。ただ、無料の場で「今日でだいたい分かった」と思われると、有料相談へ進む理由がありません。無料セミナーの役割は、関係をつくることと、自分だけでは判断しにくい部分があると知ってもらうこと。この2つに絞ったほうがいいですね。

無料の90分で全部話すと、相談する理由がなくなる

――たとえば、どんな形だと満足を渡しきってしまうのでしょうか?

新井:制度の説明を最初から最後まで丁寧に話し、参加者ごとの質問にもその場で答え、最後の1分で有料相談のチラシを配る形です。これだと、その日の満足度は高くなります。でも、お客様から見ると「また困ったら無料の回に来ればいい」となりやすい。

――丁寧にやっているのに、次の相談にはつながらないのですね。

新井:そこが難しいところです。たとえば介護保険や社会保障の話なら、制度の全体像を無料で伝えるのはいい。でも、本人の家族構成や収入、体の状態に当てはめて何を選ぶかは、有料相談の中で扱う。無料で話す部分と、有料で一緒に考える部分を先に分けておく必要があります。

――「出し惜しみ」ではなく、役割を分けるということですね。

新井:そうです。無料の場で全部を解決しようとすると、お客様は喜びます。ただ、あなたの仕事は、そこで終わってしまいます。続けたいなら、無料の場は入口、有料相談は個別の判断と実行を支える場、と分けて伝えることです。

有料相談は、実行に付き添う部分

――有料相談には、何を残せばいいのでしょうか?

新井:知識より、実行部分です。人は説明を聞いただけでは動けません。自分の場合は何から始めるのか、家族にどう話すのか、申請や手続きの順番をどう組むのか。ここは個別性が強いので、有料相談に持っていきやすいですね。

――無料セミナーでは「必要性に気づく」ところまで、という感じでしょうか?

新井:近いですね。たとえば90分のうち、制度説明を短めに切り上げて、参加者が自分の状況を書き込む紙を用意する。その紙を見て「ここから先は個別に見ないと危ない」と分かるようにします。案内も最後に急に出すのではなく、本編の途中で「有料相談ではここを一緒に見ます」と説明しておく。

――宣伝ではなく、必要な範囲の説明になるわけですね。

新井:はい。お客様は売り込まれるのが嫌なのではなく、自分に必要なものか分からないまま勧められるのが嫌なのです。無料の場で「どこから個別相談になるのか」を示しておけば、有料相談の案内も自然に受け取ってもらえます。

リピートしてほしい内容を無料の中に入れない

――無料セミナーに同じ人が何度も来る場合は、どう考えればいいですか?

新井:毎回も来てほしい中身があるなら、それは有料にしたほうがいいです。無料の場は、関係をつくるための場であって、継続的に通ってもらうものではありません。試食を何回も食べにくるようなものです。

――参加者が高齢の方だと、有料化に抵抗があるケースもありそうです。

新井:あります。だからこそ、無料からいきなり高額な個別相談へ飛ばすのではなく、少人数の体験や短い面談など、小さく払いやすい形を作るのも一つです。資料代や交通費を自分で負担し続ける状態では、主催者側が先に疲れてしまいますから。

――無料で続けるほど、事業としては苦しくなることもあるのですね。

新井:ええ。無料期間は、売れていない期間ではありません。参加者の反応、質問、途中で表情が変わった場所を見て、有料にするべき中身を見つける期間です。

最初に直すのは、案内文の1行

――では、今すぐ直すなら、どこから手をつけるといいでしょうか?

新井:まず、セミナー案内の1行を変えてください。「介護保険制度を分かりやすく解説します」だけだと、知識を受け取る場に見えます。これを「親の介護が始まったとき、何をどの順番で申請するかが分かります」とすると、参加した後の変化が見えます。

――説明する内容ではなく、参加者に起きる変化を書くのですね。

新井:そうです。そして当日の構成も、その変化に合わせます。無料セミナーでは全体像と気づきまで。有料相談では、本人の状況に当てはめて、申請順や家族への伝え方まで一緒に考える。この分け方を、案内文と本編の中で先に伝えておくのです。

――有料相談につながらないときほど、集客数より場の役割を見る。

新井:その通りです。無料セミナーは、全部を教える場所ではありません。お客様が「自分の場合は相談したほうがよさそうだ」と気づく場所です。満足を渡しきるのではなく、次に一緒に考える理由を残しておく。それが、有料相談へ進む場の作り方です。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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新井一
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新井一(起業コンサルタント)

起業18フォーラム

会社を辞めずに始める起業だけを26年支援してきた起業18フォーラム代表。延べ6万人の相談に応じ、著書13冊は台湾・韓国でも翻訳出版。会社員のまま小さく始める実践手順を伝えています。

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