「情熱さえあれば起業できる」は危険! 起業18フォーラム代表・新井一氏が語る、会社員が本当に成功するための起業準備とは
返事がないまま待ち続けると、毎日その案件を考えてしまう
――新井さん、今日は「見積書を送ったあと、返事が来ないときの連絡」について伺います。知り合いから紹介された相手だと、催促していいのか余計に迷いそうです。
新井:迷いますよね。紹介の案件ほど、「しつこいと思われたらどうしよう」と考えて、こちらから連絡できなくなる方が多いです。でも、何日待つかを決めないままにすると、毎朝メール画面を見て、また閉じることになります。これはかなり疲れますよ。
――金額が高かったのかな、と考えてしまう方もいそうです。
新井:もちろん、その可能性はあります。ただ、返事がない理由をいきなり金額だけにしないほうがいいです。相手の社内で決裁者まで届いていない。見積書に作業範囲や納期が足りず、判断できない。返事の期限が書かれていないので、急ぐ理由が相手にない。こういうことも普通にあります。返事が来ないときは、相手の気持ちを読む前に、自分が送った見積書を見直す。まずはそこからです。
一通目の催促メールは3営業日後に送る
――では、最初の連絡は何日後がよいのでしょうか?
新井:目安は、見積書を送った日から3営業日後です。翌日だと、相手が社内で確認する時間が足りないことがあります。逆に1週間以上空けると、案件そのものが他の仕事に埋もれてしまうこともあります。
――3営業日なら、急かしすぎにも見えにくいですね。
新井:そうです。ただし、急ぎの案件なら翌営業日に確認してもいいですし、大きな会社で決裁に時間がかかるなら、先方から聞いた日程に合わせます。大事なのは、怒ったり詰めたりするメールにしないことです。「見積書は届いていますか」「社内説明に追加資料が必要ですか」と聞く。催促というより、判断しやすくする連絡ですね。
メールには金額だけでなく、作業範囲と納期も書き直す
――「その後いかがでしょうか」だけでは弱い、ということでしょうか。
新井:弱いというより、相手が返事を書きにくいのです。「その後いかがでしょうか」だけだと、相手はまた見積書を開いて、内容を思い出して、社内で確認して、返事を組み立てる必要があります。忙しい人ほど後回しになります。
――では、どんな内容を入れるとよいですか?
新井:一通目の催促メールには、三つ入れてください。1つ目は見積りの要点です。金額、作業範囲、納期を本文に1行ずつ書き直します。2つ目は、判断に足りない資料があれば用意できること。過去の制作例、進め方、納品までの流れなどですね。3つ目は返事の選択肢です。「この内容で進める」「範囲を減らして再見積りする」「今回は見送る」のように、相手が選べる形にします。
――断られる選択肢も、こちらから書くのですね。
新井:はい。断られるのが怖いから書かない、という気持ちは分かります。でも、何も返事がないより、「今回は見送ります」と分かったほうが次の予定を組めます。起業準備中や副業の段階では、1件の返事をずっと待つより、次の見込み客へ声をかける時間も大事です。
2週間でいったん区切る日を決めておく
――一通目の催促メールにも返事がない場合は、どうすればよいでしょうか?
新井:1週間ほど置いて、もう一度だけ短く送ります。このときも担当者を飛び越えたり、強い言い方にしたりしません。「社内説明用の資料が必要でしたらお送りします」と確認するくらいで十分です。
――それでも返事がないときは、追い続けないほうがよいですか?
新井:2週間でいったん区切る、と先に決めておくといいですね。ここで縁が切れるという意味ではありません。後日、先方の都合が整って連絡が来ることもあります。ただ、自分の時間まで止めてしまう必要はありません。いつまで待つかと、次の相手を探し始める日を別々に決める。これだけで気持ちはかなり楽になりますよ。
見積書には有効期限と撤回条件を書いておく
――そもそも、次から見積書を出すときに気をつけることはありますか?
新井:有効期限は必ず入れてください。見積書に期限があれば、相手もいつまでに決めればよいか分かりますし、こちらも催促する理由を持てます。期限がない見積書は、いつまで待つのかがあいまいになります。
――期限を過ぎたあとに「お願いします」と来ることもありますよね。
新井:あります。その場合に備えて、期限後は条件を見直して再見積りする、と書いておくと安心です。材料費や外注費、制作時間、スケジュールは変わりますから、前の条件でいつまでも受けられるとは限りません。法律上の扱いは見積書の書き方や取引の経緯で変わるので、迷う契約は専門家に確認してください。
――制作の仕事では、追加作業の範囲も曖昧になりやすそうです。
新井:そうですね。たとえば動画やイラストの仕事なら、ゼロから作るものは受けるけれど、実在する曲や声、絵柄をそのまま再現する仕事は受けられない、というように書きます。金額だけでなく、受ける範囲と受けない範囲を先に示す。これをしておくと、返事が来たあとに揉めにくいです。
待つ時間を、次の見積書を直す時間に変える
――最後に、見積りの返事を待っている方へ、何から始めればよいかお願いします。
新井:まずは、送った見積書を開いてください。金額、作業範囲、納期、有効期限。この4つが書いてあるかを見ます。足りないものがあれば、次に送る一通目の催促メールで補います。
――相手の返事を待つだけでなく、こちらで直せるところを見るのですね。
新井:そうです。返事がない2週間も、ただ止まっている時間ではありません。メールのひな形を作る。見積書に有効期限を入れる。受けられない追加作業の例を書いておく。そこまでやっておけば、次の問い合わせではもっと落ち着いて対応できます。見積りは出して終わりではなく、相手が決めやすい状態まで一緒に渡すものですよ。
――3営業日後、1週間後、2週間後と日数を決めておけば、必要以上に悩まずに動けそうです。ありがとうございました。
新井:こちらこそ、ありがとうございました。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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