NISAだけで安心? 起業準備と投資はどちらを優先すべきか
許可が要るか分からない不安を先に分ける
――新井さん、今日は「自分の商売に届出や許可が必要なのか分からない」という相談です。知らないまま始めて違法になるのが怖い、という方は多そうですね。
新井:多いですよ。特に飲食、食品、古物、建設、人材紹介のような言葉が出てくると、急に「何か大きな許可を取らないと起業できないのでは」と身構えてしまう。でも、まず知ってほしいのは、許可や免許が必要な仕事は限られているということです。コンサル、代行、教える仕事、文章やデザイン、多くのネット物販などは、業法上の許認可が不要な場合もあります。
――開業届を出すことと、営業許可を取ることも混同しやすいです。
新井:そうですね。開業届は税務上の届出で、営業許可とは別物です。ここを一緒に考えると、必要以上に怖くなります。最初にやるべきことは、細かい申請書を全部読むことではありません。自分の商売が「許認可なしで始められる仕事」「届出が必要な仕事」「許可・免許が必要な仕事」のどれに近いか、まず仕分けることです。
窓口は業種ごとに違う
――どこに聞けばいいのか分からない、というところで止まる方も多いと思います。
新井:ここは業種ごとに違います。飲食なら保健所、古物の売買なら警察署を窓口にした古物商許可、建設なら工事の規模によって建設業許可の要否が変わります。有料職業紹介や労働者派遣なら労働局の領域ですね。いきなり全部を覚える必要はありません。まずは中小企業基盤整備機構のJ-Net21のような業種別の開業ガイドで、自分の業種がどの区分に近いかを見ます。
――「自分は飲食も少し関わるかもしれない」「中古品も扱うかもしれない」と、いくつも可能性がある場合はどうしたらいいですか?
新井:可能性を全部同時に進めないことです。たとえば飲食店を将来やりたい人でも、最初から店舗工事、保健所相談、設備投資まで抱え込むと重くなります。先に「許可が必要な部分」と「許可なしで試せる部分」を分ける。食品卸の経験があるなら、目利きや仕入れの知識を使ったオンライン相談から試せるかもしれません。許可が必要な本丸は段取りしながら、要らない部分で手応えを見ればいいのです。
調べ尽くすより要否だけ先に聞く
――慎重な方ほど、細かいルールを全部調べようとして疲れてしまいそうです。
新井:まさにそこです。許認可の確認は、最初から専門家のように調べ尽くす作業ではありません。最初に確かめるのは「要るか、要らないか」だけで十分です。必要なら、その次に申請時期、施設基準、検査のタイミングを聞けばいい。飲食のように工事前の図面相談が大事なものは早めに押さえるべきですが、それも「要る」と分かってからで間に合います。
――つまり、準備の順番を間違えないことですね。
新井:はい。僕はよく、起業準備では予算・期間・出口を仮決めしておくと話します。許可の要否も同じです。最初に確認しておけば、あとから計画が大きく崩れにくい。逆に、何となく怖いまま放っておくと、動けない理由だけが増えていきます。
怖いのは許可そのものではなく未確認のまま走ること
――「知らずに違法になったらどうしよう」という不安は、どう受け止めればいいでしょう。
新井:その不安は大切です。慎重さがあるから、先に確認できるわけですから。ただし、不安を抱えたまま止まるより、一本確認したほうが安全です。中古品を仕入れて売る古物営業のように、許可なしで営むと罰則の対象になる領域もあります。だからこそ、怖がるだけではなく、窓口に聞く。要否さえ分かれば、避けるべきことと進められることが見えてきます。
――実際には、許可が必要な仕事でも、準備期間にできることはありますか?
新井:ありますよ。許可が必要な部分は待ち時間も含めて段取りする。一方で、許可が要らない範囲で、相談、講座、情報整理、試作品づくりなどを小さく進める。たとえば店舗を持つ前に、知識や経験を使った相談サービスで3万円、5万円と試してみる。これなら、いきなり固定費を抱えずに自分の価値も確かめられます。
慎重な人ほど起業準備を進めやすい
――最後に、許認可で止まっている方へメッセージをお願いします。
新井:「許可が怖い」と感じる人は、起業に向いていないわけではありません。むしろ、準備を丁寧に進められる人です。やってはいけないのは、怖いから調べないことと、調べずに勢いで始めること。この2つです。自分の商売を書き出し、近い業種を見つけ、窓口に要否だけ聞く。ここまでできれば、起業準備はかなり前に進みますよ。
――全部を完璧に知ってからではなく、まず要るか要らないかを確かめる。そう考えると、動き出しやすくなりますね。
新井:そうです。許認可は、起業を止める壁ではなく、順番を決めるための確認事項です。落ち着いて一つずつ見れば大丈夫ですよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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