業を笑われそうで言い出せないなら一人の味方に話すことから

新井一

新井一

テーマ:起業

笑われる怖さは、まだ起きていない未来への不安

――新井さん、会社を辞めて起業したい気持ちはあるけれど、周りに笑われそうで言い出せないという相談です。失敗したら「それみたことか」と言われそうで、世間体も気になるそうです。

新井:これは本当に多い相談です。まだ何も始めていない段階で、頭の中に笑う人の顔が浮かんでしまうのですね。でも、まず分けて考えてほしいのは、実際に笑われた事実と、笑われそうだという想像は別だということです。

――想像のほうが大きくなってしまうのですね。

新井:そうです。起業に踏み出す前は、周りの反応を必要以上に大きく見積もります。もちろん否定する人が現れることはあります。でも、その言葉はあなたの実力を正確に測った判定ではありません。笑われそうという怖さは、起業に向いていない証拠ではないのです。

否定の多くは心配や戸惑いから出てくる

――身近な人ほど、反対したり茶化したりすることもありますよね。

新井:あります。僕はそれを、すぐ敵だとは見ません。家族や同僚が「危ないからやめておけ」と言うとき、悪意ではなく心配から出ていることも多いのです。今までのあなたが変わってしまう戸惑いもあるでしょうし、自分にはできなかった挑戦を見たくない気持ちもあるかもしれません。

――その言葉をそのまま受け止めると、動けなくなりますね。

新井:ええ。拙著『会社を辞めずに朝晩30分からはじめる起業』でも、身近な人ほど夢に水を差すことがあると書いています。大切なのは、否定されたら終わりではなく、「この人は今、何を心配しているのか」と少し距離を置いて見ることです。

全員に認めてもらう必要はない

――周りの理解を得てから始めたい、という人も多そうです。

新井:気持ちはよくわかります。でも、全員の理解を待っていたら、起業準備はいつまでも始まりません。日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査でも、開業動機の上位には「自由に仕事がしたかった」という項目があります。自分がどう働きたいかが、出発点になる人は多いのですよ。

――賛成の数で起業できるかが決まるわけではないと。

新井:そうです。必要なのは、大勢の拍手ではありません。まずは、頭ごなしに否定しない人が一人いること。その一人にだけ、「決めた」と宣言するのではなく、「少し考えているのだけれど」と相談として話してみる。ここからで十分です。

話す相手を選ぶことも準備の一部

――誰に話すかは、かなり大事ですね。

新井:とても大事です。最初から一番反対しそうな人にぶつける必要はありません。否定しなさそうな先輩、昔から落ち着いて話を聞いてくれる友人、同じように働き方を考えている知人。まずは一人だけ選べばいいのです。

――話すときの切り出し方はありますか?

新井:「起業する」と大きく言わなくていいです。「週末に小さく試してみたいことがある」「今の仕事とは別に、頼まれごとを1件受けてみたい」と、行動の単位を小さくしてください。相手も反応しやすくなりますし、自分も必要以上に身構えずに済みます。

怖さは行動で少しずつ薄くなる

――一人に話したあと、次は何をすればいいでしょうか?

新井:週末に頼まれごとを1件だけ受けてみることです。資料作成、相談、片づけ、発信の手伝い、得意なことの小さな提供。内容は大きくなくてかまいません。頭の中だけで考えていると、笑われる怖さはどんどん膨らみます。行動にすると、怖さは少しずつ現実の大きさに戻ります。

――いきなり会社を辞める話ではないのですね。

新井:はい。会社員のまま、小さく試す。これが基本になります。誰かに一人だけ話し、1件だけ試し、反応を見てまた考える。ここまでなら、世間体に人生を預けなくて済みます。失敗しても修正できますし、うまくいけば次の一歩が見えてきます。小さな実績が1つできると、周りの反応より自分の手応えを基準にしやすくなります。

起業を話す相手は、あなたが選んでいい

――最後に、笑われそうで言い出せない方へメッセージをお願いします。

新井:起業の話を、すべての人に同じタイミングで話す必要はありません。あなたには、話す相手を選ぶ権利があります。まずは否定しなさそうな一人にだけ話す。そこで少し気持ちが軽くなったら、週末に小さな頼まれごとを1件受けてみる。それで十分です。

――一人の味方から始める、ということですね。

新井:はい。笑われる怖さがあるから慎重になれる面もあります。ただ、その怖さに全部を止められてしまうのはもったいない。全員の理解ではなく、一人の味方。大きな宣言ではなく、小さな実験。そこから起業準備は静かに動き出します。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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