起業準備中に転職の誘いが来たらどっちを優先すべき?

新井一

新井一

テーマ:起業

転職の誘いは起業準備をやめる合図ではない

――新井さん、今日は「起業準備中に転職の誘いが来たらどうするか」という相談です。給与が上がりそうな話だと、気持ちが揺れますよね。

新井:揺れて当然です。今より条件が良さそうな話が来たら、誰でも一度は考えます。ただ、そこで「転職するなら起業準備は終わり」と決めつけないでください。転職の誘いは、起業準備をやめる合図ではなく、時間の使い方を見直す合図です。二択に見えても、実際には並走できる場面がかなりあります。

――「転職か起業か」ではなく、「どう並べるか」を考えるのですね。

新井:そうです。会社員のまま起業準備をしている人は、本業の収入を守りながら会社の外を育てています。転職して本業の条件が良くなるなら、それ自体は悪い話ではありません。大事なのは、その転職が起業準備の時間を完全に奪うのか、それとも半年後に戻せるのかを見極めることです。

口頭の好条件だけで決めない

――転職エージェントから「給与が上がりそう」と言われると、つい前のめりになりそうです。

新井:そこは一度止まって、条件を紙に出してもらいましょう。給与、雇用形態、試用期間、勤務時間、残業の見込み、リモートの可否。口頭の印象だけでは、実際に増えるお金と減る時間が見えません。給与が少し上がっても、残業が増えて朝晩の30分が消えるなら、起業準備には痛手になります。

――収入だけでなく、時間の増減も条件なのですね。

新井:まさにそこです。起業準備は、気合いより時間で進みます。面談に進むのは構いませんが、条件が固まる前に準備を止める必要はありません。「2週間ほど検討したい」と伝えて、その間に今の準備状況と照らし合わせる。焦って結論を出すほど、後で後悔しやすくなります。

本業と準備の時間を4つに分ける

――両方を並走させる場合、どう時間を分ければいいでしょうか?

新井:まず、新しい職場に慣れる期間と、起業準備を進める期間を混ぜないことです。転職直後の1〜2カ月は、本業の情報収集と環境づくりに寄せてもいい。その代わり、起業準備を完全にゼロにはせず、週末にノートを見返す、発信を1本だけ続けるなど、細い糸を残します。

――いきなり両方を全力でやらないほうがいいのですね。

新井:はい。僕は、本業の慣らし期間、朝晩30分の実作業、週末の見直し、人との関係づくりの4つに分けて考えることを勧めています。全部を同じ強さでやろうとすると倒れます。今月は本業7、準備3。3カ月目から本業6、準備4。こんなふうに配分を変えると、現実的に続きますよ。

転職後3カ月で並走できるかを試す

――では、転職を受けるか迷ったときは、どんな基準で見ればいいですか?

新井:3カ月後に起業準備の時間を戻せるかです。転職直後は忙しくて当たり前です。でも、3カ月たっても平日も週末も余白がゼロなら、会社の外の仕事は育ちにくい。逆に、最初だけ集中して、その後に朝晩30分を戻せるなら、転職はむしろ土台を強くする選択にもなります。

――給与が上がるなら、準備費や生活防衛資金も作りやすくなりますね。

新井:そうです。ただし、収入が上がった分をすぐ講座や備品に使い切らないこと。まず生活の安心を厚くする。次に、会社の外で1件だけ有料で試す。ここを順番に進めると、転職したことが起業準備の遠回りではなく、土台づくりになります。

――面談だけ受ける場合でも、起業準備のペースは落とさないほうがいいのでしょうか?

新井:面談の週だけ落としても構いません。ただし、ゼロにはしないほうがいいですね。たとえば、朝晩30分の作業が無理なら、週末に15分だけノートを開く。見込み客に送る文章を1行だけ直す。細くても続いていれば、転職活動が終わったあとに戻りやすい。起業準備は、勢いより再開しやすさが大切です。

迷ったら実績と時間を並べて決める

――最後に、いま迷っている方へ、今日できる一歩を教えてください。

新井:まず、転職オファーの条件と、起業準備の現在地を同じ紙に並べてください。左に給与や勤務時間、右に今ある実績、見込み客、使える時間を書く。感情だけで比べると、どちらも大きく見えます。数字と時間で並べると、「今は転職を受けて3カ月後に再開する」「今回は断って準備を進める」など、次の動きが見えてきます。

――決める前に、比べる材料をそろえることが先ですね。

新井:その通りです。転職の誘いが来たことは、これまでの仕事が評価された証拠でもあります。だから、怖がって閉じる必要はありません。起業準備を続けてきた自分も、転職で評価された自分も、どちらもあなたの資産です。どちらかを捨てる前に、本業と準備の時間配分を見直して、両方を活かす道を探してみてください。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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