起業アイデアを思いついたらとるべきリサーチ、商品化のアクションプラン
帳簿が苦手でも起業準備は止めなくていい
――新井さん、数字が苦手で家計簿も続かない人からの相談です。起業すると帳簿や経理が必要になると思うと、それだけで準備が止まってしまうそうです。こういう人は、起業をあきらめたほうがいいのでしょうか?
新井:あきらめなくていいですよ。ここは最初に分けて考えたいですね。帳簿が苦手なことと、自分の商売のお金を見られないことは同じではありません。起業準備の入口で必要なのは、完璧な帳簿ではなく、まず「毎月いくら使っていて、いくら売上があれば暮らしが回るのか」を見ることです。簿記の本を最初から読み込むより、先月の支出と必要売上をざっくり出すほうが、よほど準備が進みます。
――「帳簿ができない人間は商売に向かない」と思い込まなくていいのですね。
新井:はい。苦手意識の中身は、記帳そのものへの不安、開業にいくらかかるか分からない不安、始めたあと暮らしが回るかどうかの不安、この3つに分けられます。ひとかたまりにすると重いですが、分ければ対処できます。記帳は後から学べます。開業費用は小さく始める設計で変えられます。いちばん大事なのは、暮らしと商売の数字を、怖がらずに毎月1回見る習慣を作ることです。
最初に見る数字は支出と必要売上だけ
――具体的には、最初に何を見ればいいのでしょう?
新井:まず、先月の暮らしの支出です。家賃、食費、通信費、保険、教育費、交通費。細かく分類できなくても構いません。合計で毎月いくら出ているかを見ます。その次に、商売で最低いくら売上があれば不安が小さくなるかを出します。最初から独立後の生活費を全部まかなう必要はありません。会社員のままなら、月3万円でも5万円でも、数字が積み上がる経験のほうが大事ですよ。
――売上目標というより、安心して続けるための目安なのですね。
新井:そうです。数字は人を責める道具ではなく、次の一手を決める道具です。月5万円を目指すなら、単価5千円の商品が10件なのか、1万円の商品が5件なのか。ここが見えるだけで、発信の内容も、知人への声のかけ方も変わります。帳簿の完成度より、「自分は何件売ればいいのか」が見えているほうが強いですね。
月に1枚の記録なら苦手な人でも続けられる
――とはいえ、毎日記録するとなると続かない人も多そうです。
新井:毎日でなくていいです。月に1枚で十分です。ノートでも無料の表計算ソフトでもいいので、売上を数行、支出を数行、月末に書き写す。これだけなら、家計簿が三日坊主だった人でも始められます。実際、整理収納の相談を週末に始めた会社員の方も、最初は簿記のテキストで止まっていました。でも月末に数行だけ書く表に変えたら、10カ月以上続きました。
――その記録があとで帳簿や確定申告にもつながるのでしょうか?
新井:つながります。もちろん開業後は必要な形に整えていく必要がありますが、売れた日、金額、使ったお金が残っていれば、あとから整理しやすい。逆に、会計ソフトを入れても、何も入力していなければ意味がありません。起業準備の段階では、きれいな帳簿より、実際のお金の流れが残っていることのほうが大切です。
会計ソフトより先に商売の動きを残す
――会計ソフトや簿記の勉強は、いつ始めればいいですか?
新井:お金の流れが生まれてからで間に合います。先にソフト比較を始めると、「青色申告が」「勘定科目が」と情報が増えて、かえって止まりやすい。起業18フォーラムでも、最初に見るのはソフト名ではなく、いま何を売ろうとしていて、いくらで、誰が買ってくれそうかです。商売の動きがない段階で帳簿だけ整えても、記録する中身がないのですよ。
――「準備をちゃんとしなければ」と思うほど、順番を間違えやすいのですね。
新井:まさにそうです。ちゃんとしたい気持ちは悪くありません。でも、起業準備で先に育てたいのは、帳簿の知識だけではなく、お金を見て判断する力です。今月は問い合わせが何件あったか。いくら使ったか。来月はどこを減らし、どこに少し使うか。この判断ができるようになると、数字への怖さはかなり減ります。
数字が苦手なことと起業に向かないことは別
――最後に、数字が苦手で自信をなくしている方へ、今日できる一歩を教えてください。
新井:今日やることは1つでいいです。先月の暮らしの支出を眺めて、「毎月いくらあれば最低限は回るか」を紙に書く。それだけです。正確でなくても大丈夫。桁が見えれば十分です。次に、月末に売上と支出を数行だけ書く1枚の表を作ってください。数字が苦手でも、商売に向いていないわけではありません。苦手なまま、小さく始めて、必要な分だけ覚えていけばいいのです。
――完璧な帳簿より、まず自分の暮らしと小さな売上を見ることですね。気持ちが軽くなりそうです。
新井:はい。帳簿に合格してから起業するのではなく、数字を怖がらずに見られるようになるために、小さな起業準備を始める。そう考えると、最初の一歩はかなり現実的になりますよ。
起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)
新井一氏プロフィール
起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。
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