教育費がピークの40代でも起業準備費用は捻出できる?

新井一

新井一

テーマ:起業

教育費と起業準備費を同じ財布で考えない

――新井さん、子どもの教育費が重い40代でも、起業準備のお金は作れるのでしょうか?

新井:作れます。ただし、教育費を削って作る発想は危ないですね。中学3年生と高校2年生のような時期は、塾代、部活、受験まわりの費用が重なります。そこに起業準備費を混ぜると、家計も気持ちも苦しくなります。

――「余ったら起業準備に回す」では難しいのですね。

新井:難しいです。教育費が多い月は準備が止まり、少し余裕がある月にまとめて使ってしまう。これを繰り返すと、半年たっても何も積み上がりません。最初にやるべきことは、教育費の財布と起業準備費の財布を分けることです。

教育費は守るお金、起業準備費は育てるお金

――財布を分けると、何が変わるのでしょうか?

新井:役割がはっきりします。教育費は、今まさに家族を守るお金です。そこに手を出すと、家族の不安が一気に強くなります。一方で、起業準備費は将来の選択肢を育てるお金です。同じお金でも、性格がまったく違うのですよ。

――確かに、同じ口座にあると区別しにくいですね。

新井:そうです。家計簿アプリでも銀行口座でもよいので、教育費は教育費として先に見える化する。塾代、学校納付金、部活費、受験関連の費用を並べて、年間でどれくらい必要かをつかむ。そこを守ったうえで、起業準備に回せる小さな額を別枠にします。

最初は月1万円でも準備は止めなくていい

――起業準備費は、どれくらいから始めればよいですか?

新井:最初は月1万円でも構いません。大事なのは金額の大きさより、毎月同じ場所に積み上がることです。給料日に、生活費や教育費と別の口座へ先に移す。残ったお金で暮らす。この順番に変えるだけで、気持ちはかなり変わりますよ。

――少ないと意味がないように感じる人もいそうです。

新井:でも、月1万円でも半年で6万円です。本、講座、小さな検証、プロフィール写真、チラシ100部など、できることはあります。反対に、教育費があるのにいきなり30万円、50万円を動かすほうが危ない。拙著『起業神100則』でも、自己資金は失っても生活が崩れない範囲にとどめることをお伝えしています。

初期費用と運用費用を分けて考える

――起業準備費の中身は、どう整理すればよいでしょうか?

新井:ここでも分けます。まず初期費用。名刺、簡単なホームページ、具体的な備品や材料費、講座代のように、始める前に一度かかるお金です。次に運用費用。毎月の会費、通信費、広告の小さなテスト、サンプル作成費など、続けるためのお金ですね。

――同じ起業準備費でも、使い道を混ぜないほうがよいのですね。

新井:混ぜないほうがよいです。初期費用ばかりに使ってしまうと、始めたあとに動かすお金が残りません。逆に、運用費だけを怖がって何も買わないと、準備が進みません。だから「一度だけ使うお金」と「毎月動かすお金」に分けて、教育費とは別の表にしておくと判断しやすくなります。

家族には金額より先に線引きを伝える

――家族への説明はどうすればよいですか? 教育費がある時期だと、反対されそうです。

新井:反対される一番の理由は、金額そのものより「どこまで使うのか分からない不安」です。ですから、まず線引きを伝えてください。「教育費には手をつけない」「起業準備費は月1万円まで」「受験費用が増える月は増額しない」。こうしたルールがあるだけで、家族は聞きやすくなります。

――夢を語るより、先に家計を守る約束ですね。

新井:その通りです。起業は家族の生活を壊してまで急ぐものではありません。会社員のまま小さく始めるなら、家族が不安になるポイントを先に減らすことが大事です。教育費を守りながら準備を続ける姿勢そのものが、家族の信頼にもつながります。

教育費のピークは準備を止める理由ではない

――最後に、教育費が重くて起業準備をあきらめかけている40代へ、メッセージをお願いします。

新井:教育費がピークの時期に、家計へ余裕がないのは自然なことです。そこで無理をする必要はありません。ただ、ゼロか大きな投資かの二択にしないでほしいですね。月1万円でも、毎月分けておけば準備は続きます。

――少額でも、止めない仕組みにするのですね。

新井:はい。教育費を守ることと、自分の起業準備を進めることは両立できます。大事なのは、同じ財布で取り合いにしないこと。家族に必要なお金を守ったうえで、別枠の小さなお金を育てていく。40代の起業準備は、そのくらい現実的なほうが長く続きます。

起業家インタビュー(聞き手:伊藤純子)

新井一氏プロフィール

起業18フォーラム代表。「会社員のまま6カ月で起業する」方法を伝える起業支援キャリアカウンセラー。キャリア26年以上の実績を持ち、延べ60,000人の会社員の起業をサポート。会社員時代に始めた事業で培ったノウハウ、多数の起業家を生み出してきた実践的技術を武器に、起業支援&集客マーケティングの専門家として活動中。

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