「共同体感覚」ってなに?――人とつながりながら“安心して生きる力”

平田えり

平田えり

テーマ:人間関係

「人との関係に疲れてしまう」
「周りに気を使いすぎてしんどい」
「誰かと比べて落ち込んでしまう」

そんな悩みがあるとき、実は心の奥で“つながりの安心”が揺らいでいることがあります。
アドラー心理学では、この“つながりの安心”を 「共同体感覚」 と呼びます。

現代はSNSの比較、職場のストレス、家族との距離など、つながりに不安を感じやすい時代。
だからこそ、この共同体感覚が大きな支えになります。

◆ 共同体感覚とは?

共同体感覚とは、
「人とのつながりを感じながら、自分らしく役に立ちながら生きていける感覚」
のことです。

生きている限り、私たちは誰かと関わりながら暮らしています。
職場の人間関係、家庭、友人、地域コミュニティ…。
その中で安心を感じられるかどうかは、心の安定に大きな影響を与えます。

共同体感覚は、次の3つで構成されています。

① 所属感:「私はここにいていい」という安心

どの人間関係でも、「ここにいて大丈夫」「受け入れてもらえている」と感じられると、心は落ち着きます。

逆に所属感が揺らぐと、
・必要以上に頑張ってしまう
・人の評価を気にしすぎる
・自分の価値がわからなくなる
といった負担が生まれます。

所属感は“完璧に馴染む”ことではなく、
「少しぎこちなくても、ここにいていい」
と思える小さな安心のことです。

② 信頼感:「人を信じても大丈夫」という温かさ

過去の人間関係で傷ついた経験があると、誰かを信じることが怖くなるのは自然なことです。

信頼感が育つと、
・自分のままでいても大丈夫
・人に頼ることができる
・他人を“敵”ではなく“味方”として見られる
といった変化が起こります。

信頼は、大きな出来事で一気に生まれるのではなく、
小さな誠実さの積み重ね
で育っていきます。

③ 貢献感:「私は誰かの役に立てている」という手応え

人は誰かの役に立てていると、自分の存在価値を感じやすくなります。

それは大きなことでなくて大丈夫。
・挨拶をする
・話を聴く
・小さな仕事を丁寧にやる
家族に“おはよう”を伝える

こうした些細な行動でも、立派な貢献です。

貢献感があると、
“自分はここにいていい”
という安心が強くなる
という循環が生まれます。

◆ 共同体感覚が育つと、心はどう変わる?


・孤独感が減る
・自分を責めにくくなる
・他人と比較しなくなる
・不安が軽くなる
・人間関係がやわらかくなる
・生きづらさが少し軽くなる

つまり共同体感覚は、
現代を“安心して生きる”ための心の土台ともいえます。

◆ 共同体感覚を育てるための小さなヒント

①「ありがとう」「助かるよ」を言い合う
言われる側も、言う側も、貢献感が育ちます。

② 自分にも他人にも“完璧さ”を求めすぎない
ぎこちなくてもいい、ゆっくり関係が育っていけばいい。

③ 弱さや困りごとを誰かに打ち明ける
頼ることは、信頼感を育てる行為。

④ 人を疑うクセに気づいたら、一人でも“信頼できる人”を意識する
完璧に信じる必要はなく、「大丈夫な人もいる」と思えるだけで十分。

◆ おわりに

共同体感覚とは、
「人とほどよくつながり、安心して自分らしく生きていくための力」
です。

現代は“孤独なつながり”
が増えているからこそ、
この共同体感覚が、ひとの心をそっと支えてくれます。

あなたにも、つながりを感じられる場所や人が、きっとあります。
小さな安心を一つずつ積み重ねながら、心が“ほっと息をつける場所”を育てていけますように。

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平田えり
専門家

平田えり(カウンセラー)

NPO法人M-STEP

自身もステップファミリーやシングルマザー当事者であるカウンセラーが、「100日間カウンセリング」を実施。自信を持って自分の行動を選べる人になれるようサポートをします。不登校の悩みにも対応しています。

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