年末を迎え 年5日の有給休暇の確実な取得の工夫

河野創

河野創

テーマ:労働 5日 年次有給休暇 年休 



11月も半ばになり、もう年末もわずかです。
従業員の方の年休消化は進んでいますか。
今日時点で従業員の年休ゼロということは、これから毎月1日とったとしても年度末までに5日の有給休暇は消化できないことになります。

年末年始が年休消化の最後のチャンスになります。

あらためて年5日の有給休暇についておさらいをしてもましょう。

平成31年4月から、全ての使用者に対して【年5日の年次有給休暇の確実な取得】が義務付けられます。年5日の年休を取得させないと罰金30万円が課せられるようになりました。

厚生労働省から、わかりやすいパンフレットが公表されています。

以下をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf

とはいってもA4版23ページにもなりますので、忙しい経営者や総務担当者の方々がいちいち読んでいくのも大変です。
その中でも皆さんが最も関心が高いQ&Aの一部を解説していきます。

■年次有給休暇の確実な取得とは?

会社に入社して半年たつと、毎週40時時間、週5日働く従業員であれば年次有給休暇を10日間取得できます。

欧米にも年次有給休暇があり完全消化が普通のようですが、働きすぎのわが国では平均取得率は50%にも達していません。

したがって、会社は年次有給休暇が10日以上ある従業員に対しては、せめて5日は確実に取らせなさい。そうしないと罰金30万円を課すことになりますよ。

年次有給休暇は5日以上とらせなさいということです。

■年次有給休暇の時季指定とは?

確実に年次有給休暇を取得してもらうためには、会社側であらかじめ休暇取得日を決めてしまうのが最も効果的です。

たとえば、今年の4月1日の時点で連休の間の5月1日、年末の12月30日、31日、お盆休みの8月13日、14日を指定して合計5日間会社一斉休業日としてしまうこと。これが年次有給休暇の時季指定になります。

■どんなときに違反になるの?

Q1
年5日の取得ができなかった労働者が1名でもいたら、罰則が科されるのでしょうか。

A1
法違反として取り扱うこととなりますが、労働基準監督署の監督指導において、法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。

1名でもいたら罰則が科せられるようであれば、従業員がたくさんいるような会社では人事担当者はてんてこまいです。

さすがに1名くらいであれば、いきなり罰金30万円にはなりそうにないですね。

Q2
使用者が年次有給休暇の時季指定をするだけでは足りず、実際に取得させることまで必要なのでしょうか。

A2
使用者が5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に基準日から1年以内に年次有給休暇を5日取得していなければ、法違反として取り扱うことになります。

実際には総務の担当者は毎月、年度末になっても1日も使っていない従業員が出てこないように全従業員の年休取得状況をチェックしなければならないことになります。

毎月の総務担当者の努力にもかかわらず、1年たっても全然年次有給休暇を使ってもらえない従業員も出てくるでしょう。

こんなときも罰則の対象になるのでしょうか。

Q3
労働者本人が希望せず、使用者が時季指定を行っても休むことを拒否した場合には、使用者側の責任はどこまで問われるのでしょうか

A3
使用者が時季指定をしたにもかかわらず、労働者がこれに従わず、自らの判断で出勤し、使用者がその労働を受領した場合には、年次有給休暇を取得したことにならないため、法違反を問われることになります。
ただし、労働基準監督署の監督指導において、法違反が認められた場合は、原則としてその是正に向けて丁寧に指導し、改善を図っていただくこととしています。

一番初めの事例のとおり、違反は違反ですがいきなり罰金を課せられることはなさそうです。

■これからどうしたらいいの?

とりあえず、よほどのことがない限り罰金30万円を課せられることはなさそうですが、総務担当者はとても忙しくなります。

毎月従業員が年次有給休暇をきちんと取得しているか確認して、取得していないようであれば本人にいちいち連絡しなければなりません。

従業員数の少ない会社ならそれでもかまわないでしょう。しかし従業員が100人以上の会社、パート、アルバイトが多く人の出入りが多い会社では、年次有給休暇の消化管理だけでも事務負担量はばかにならないと思われます。

それは面倒なので、連休の間の5月1日、年末の12月30日、31日、お盆休みの8月13日、14日を指定して合計5日間を時季指定してしまおう。

でも簡単にはできません。すでに就業規則にこの時期は休みと定めてある会社が多いからです。

Q4
法定の年次有給休暇に加えて、会社独自に法定外の有給の特別休暇を設けている場合には、その取得日数を5日から控除することはできますか。

A4
法定の年次有給休暇とは別に設けられた特別休暇(たとえば、労働基準法第115条の時効が経過した後においても、取得の事由及び時季を限定せず、法定の年次有給休暇日数を引き続き取得可能としている場合のように、法定の年次有給休暇日数を上乗せするものとして付与されるものを除く。以下同じ。)を取得した日数分については、 控除することはできません。
なお、当該特別休暇について、今回の改正を契機に廃止し、年次有給休暇に振り替えることは、法改正の趣旨に沿わないものであるとともに、労働者と合意をすることなく就業規則を変更することにより特別休暇を年次有給休暇に振り替えた後の要件・効果が労働者にとって不利益と認められる場合は、就業規則の不利益変更法理に照らして合理的なものである必要があります。

まわりくどい言い回しですが、すでに就業規則で定めた休日を勝手に年次有給休暇としてしまうのは、従業員にとっては実質的な休日が少なくなります。そんなことは会社が勝手にはできないから注意してくださいね、といっています。

■まとめ

・会社は従業員の年次有給休暇の消化状況をきちんと管理しなければなりません。

・年5日以上は必ず年次有給休暇をとらせなければなりません。

・こうした管理には手間がかかるため、今後は年次有給休暇の管理ソフトなども販売されることになるはずです。

・就業規則を変更して、あらかじめ5日分の年次有給休暇をしてしまうこともできます。ですが、実施にあたっては注意が必要です。

厚生労働省のパンフレットは以下をご参照ください。
https://www.mhlw.go.jp/content/000463186.pdf


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河野創
専門家

河野創(社会保険労務士)

青山人事労務

前職で、人事評価制度の見直しにとり組んだ経験で、中小企業の働き方改革に強みを発揮する。また、自身の海外駐在経験から、日本の労務管理では対応できない海外駐在員の人事労務のノウハウを持つ。

河野創プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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