正解のない時代にキャリアを創造する【第4回】人材版伊藤レポートとは?人的資本経営との関係をわかりやすく解説

前回までのコラムでは、「人材版伊藤レポート」の概要や、人的資本経営との関係について解説してきました。
今回は、人材版伊藤レポートの中でも重要な考え方である「3P・5Fモデル」をご紹介します。
3P・5Fモデルとは何か
3P・5Fモデルとは、人材版伊藤レポートで示された「これからの人材戦略の考え方」を整理したものです。具体的に3Pとは、人材戦略を考える際の3つの視点(Perspectives)、5Fは人材戦略を構成する5つの共通要素(Factors)を指すものです。
人材版伊藤レポートは、人口減少が続くこれからの日本社会においても、企業価値を持続的に維持・向上させることを狙いとしています。対象はグローバルに展開する大企業ですが、基本的な考え方は企業規模に寄らず共通する部分はあるはずです。人手不足に悩む中小企業にとっても、学べる点があるはずです。特に3P=3つの視点を中心にお伝えいたします。
3Pが示す3つの視点
人材版伊藤レポートが示す3Pとは、次の3つの視点です。
- 経営戦略と人材戦略が連動しているか
- 理想の姿と現状とのギャップを把握できているか
- 行動変容や企業文化として定着しているか
特に重要なのが1つ目の「経営戦略と人材戦略の連動」です。
例えば、新規事業への参入や新たな設備投資を計画したとしても、それを実行するのは人です。事業戦略だけを考えるのではなく、「誰が担うのか」「必要な人材をどう確保・育成するのか」まで”連動させて”考えて、初めて戦略というストーリーを持った展開として機能します。
加えて目指す姿を具体的に描いてそれを実現させるためには、理想と現状のギャップを定量的に把握することが欠かせません。人手不足というのならば、具体的に何人不足しているのか?その人たちにはどのようなスキルを求めるのか?新規採用する前に、既存の従業員の能力を広げることも考えるべきです。
そして新しい取り組みをするなら、企業文化として定着するよう改善や見直しをしながら、継続していくことも重要です。
5Fが示す5つの要素
5Fは次の5つの要素から構成されています。
- 動的な人材ポートフォリオ
- 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン
- リスキリング・学び直し
- 従業員エンゲージメント
- 時間や場所にとらわれない働き方
これらは、それぞれ独立した施策ではありません。
例えば、会社の将来に必要な人材を考えることは人材ポートフォリオにつながり、従業員の学び直しを支援することはリスキリングやエンゲージメント向上にもつながります。
重要なのは、個別の施策を導入することではなく、先にご紹介した3P=3つの視点でも挙げられていた、人材戦略を自社の経営戦略と結び付けて考えることです。目指す姿と現状とのギャップを定量的に把握し、新たな取り組みを取り入れると決めたのならば、自社の文化として定着するよう見直しや改善を続けていくことが大切です。
中小企業こそ取り組みやすい人的資本経営
「人的資本経営」と聞くと、大企業向けの考え方のように感じるかもしれません。しかし実際には、中小企業だからこそ取り組みやすい面もあります。経営者と従業員の距離が近く、直接対話しやすいことは大きな強みです。
自社はどのような会社を目指すのか。そのためにどのような人材が必要なのか。そして従業員はどのような働き方や成長を望んでいるのか。こうした対話を重ねること自体が、人材版伊藤レポートの考え方に沿った第一歩になるでしょう。
まとめ
人材版伊藤レポートにおける人材は、「人」を単なる労働力としてではなく、企業価値を生み出す重要な資本として捉える考え方です。
経営戦略と人材戦略を連動させ、従業員の成長と企業の成長を結び付けることが、これからの企業経営には求められています。
特に中小企業においては、まず経営者と従業員が対話し、自社の未来について共通認識を持つことから始めてみてはいかがでしょうか。
※人材版伊藤レポートの「3P・5Fモデル」については、弊社ホームページのコラムにて、より詳しく解説しています。ご興味のある方は、そちらもご覧ください。


