シリーズ「正解のない時代にキャリアを創造する」 【第3回】人的資本経営が問い直すキャリアのあり方
- 「今の仕事が自分に合っていない気がする」
- 「職場の人間関係に悩んでいる」
- 「このまま今の会社で働き続けてよいのだろうか」
社会人として働き始めた若い世代の中には、このような悩みを抱えている人も少なくありません。
一方で、「最近の若者はすぐに会社を辞める」といった言葉を耳にすることもあります。
しかし、本当に若者は簡単に仕事を辞めているのでしょうか。
厚生労働省が実施した「令和5年若年者雇用実態調査」からは、若者が会社を辞める背景には、働き方、人間関係、仕事内容、将来への不安など、さまざまな要因があることが見えてきます。
今回は、この調査結果から若者の離職理由について考え、転職を考える前に大切にしたいことを整理します。
若者が最初の会社を辞めた理由とは
「令和5年若年者雇用実態調査」は、15歳から34歳までの若年労働者を対象に、雇用状況や働くことに関する意識を調査したものです。
この調査では、最初に勤務した会社を辞めた理由についても調べています。
主な理由として挙げられたのは、
- 「労働条件・休日・休暇の条件がよくなかった」(28.5%)
- 「人間関係がよくなかった」(26.4%)
- 「仕事が自分に合わなかった」(21.7%)
でした。
この結果から分かることは、若者の退職理由は給与だけではないということです。
働く時間や休日、人間関係、仕事内容との相性など、毎日の仕事生活に関わるさまざまな要素が影響しています。
「仕事が合わない」と感じた時に考えたいこと
離職理由の一つとして挙げられている「仕事が自分に合わなかった」という言葉。
この言葉には、さまざまな意味が含まれています。例えば
- 思っていた仕事内容と違った
- 自分の得意なことを活かせない
- 仕事のやりがいや意味を感じられない
- 将来の成長イメージが持てない
といったことです。
しかし、「仕事が合わない」と感じた時、すぐに転職を決めることが必ずしも最善とは限りません。
大切なのは、まず「何が合わないと感じているのか」を整理することです。
- 仕事内容なのか。
- 人間関係なのか。
- 働く環境なのか。
- それとも、自分自身が大切にしたい価値観との違いなのか。
原因を整理することで、今の職場で改善できることや、これから選ぶべき方向性が見えてくる場合があります。
転職では「今までの経験」をどう活かすかが重要
同じ調査では、企業が若者を採用する際に重視していることについても調べています。
新規学卒者、中途採用者ともに多かった回答は
- 「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」
- 「コミュニケーション能力」
- 「マナー・社会常識」
でした。
一方で、中途採用者では「業務に役立つ職業経験・訓練経験」を重視する割合が、新規学卒者より高くなっています。
転職を考える時には、「今の会社を辞めたい」という気持ちだけではなく、
「自分はこれまで何を経験してきたのか」
「その経験を次の職場でどのように活かせるのか」
を考えることが大切です。例えば
- 人と関わる仕事を経験した
- チームで協力して仕事を進めた
- 問題を発見し改善に取り組んだ
- 後輩や新人をサポートした
こうした経験も、見方を変えれば自分自身の強みになります。
若者の3人に一人が転職を考える時代
調査では、若年正社員に対して今後の転職希望についても確認しています。
その結果、「転職したいと思っている」と回答した割合は31.2%でした。
つまり、若年正社員のおよそ3人に一人が、転職を選択肢として考えていることになります。
また、この割合は過去の調査と比較すると増加しています。
- 平成25年 25.7%
- 平成30年 27.6%
- 令和5年 31.2%
転職が以前より身近な選択肢になった現在、転職すること自体が問題なのではありません。
重要なのは、「なぜ転職したいのか」を自分自身が理解しているかどうかです。
不満から逃れるためだけの転職なのか。
それとも、自分が大切にしたい働き方を実現するための転職なのか。
この違いによって、その後のキャリアは大きく変わります。
一人で悩まず、第三者に相談するという選択肢
仕事の悩みは、身近な人ほど相談しにくいことがあります。
- 家族には心配をかけたくない。
- 友人には職場の詳しい事情を話しづらい。
- 会社の上司には、退職を考えていると思われるのが不安。
そのような時、利害関係のない第三者に相談することは、自分の考えを整理する有効な方法の一つです。
キャリアコンサルタントは、転職を勧める専門家ではありません。
また、「あなたにはこの仕事が向いている」「この仕事に転職すべき」と答えを決める存在でもありません。
相談者自身が、
- 「自分は何を大切にして働きたいのか」
- 「どのような環境なら力を発揮できるのか」
- 「今の職場でできることは何か」
を整理し、自分自身で納得できる選択ができるよう支援する専門家です。
キャリアを考えることは、これからの働き方を考えること
社会人として働き始めた時、すべてが理想通りに進む人は多くありません。
仕事の難しさ、人間関係の悩み、自分自身の未熟さ。
そうした経験を一つひとつ乗り越えることも、キャリア形成の大切な過程です。
もちろん、環境を変えることが必要な場合もあります。
しかし、転職を決断する前に、一度立ち止まり、
「自分は何を大切にして働きたいのか」
「これからどのようなキャリアを築きたいのか」
を考える時間を持つことが大切です。
キャリアとは、会社や誰かに決めてもらうものではなく、自分自身で考えながら築いていくものです。
悩んだ時こそ、自分のキャリアを見つめ直す機会にしてみてはいかがでしょうか。
またキャリアコンサルタントに相談してみるのも、一つの方法です。



