相続時精算課税制度とは?メリットとデメリット
今回は相続税の節税対策として効果のある生前贈与を、さらに効果的に活用するための方法についてご紹介します。
生前贈与が相続税の節税対策になる理由
現金で多額の資産を保有している人が、資産を配偶者や子どもなどに引き継ぐ際に発生する相続税の負担を抑える方法として、生前贈与があります。
生前贈与は財産が相続税の対象になるほどない、財産のほとんどが土地や不動産といった場合には不向きですが、多額の現金資産がある場合は、大きな節税効果があります。
そもそもなぜ生前贈与が相続税の節税対策になるのでしょう。
それは生前贈与にはさまざまな非課税枠があり、それを活用することで税金の負担なく資産を譲ることができ、最終的に相続税も抑えることができるからです。
現在、相続税の基礎控除額は3,000万円+(法定相続人の数×600万円)です。仮に現金で1億円の財産があり、法定相続人が2人いる場合、生前贈与を一切行わなければ相続税の課税対象額は次の通りです。
1億円-(3,000万円+1,200万円)=5,800万円
では生前贈与として3,000万円を贈与していたとすると、相続税の課税対象額は次の通りです。
7,000万円-(3,000万円+1,200万円)=2,800万円
つまり、生前贈与として贈与した3,000万円がそのまま課税対象額から差し引かれることになり、その分、相続税も安くなります。これが生前贈与による相続税の節税です。
生前贈与を非課税にする6つの方法とは?
生前贈与を非課税にする方法は大きく6つあります。具体的には次に通りです。
(1)暦年課税制度
生前贈与を行う方法は、暦年課税制度と相続時精算課税制度の2つがあります。まずは暦年課税制度を活用して生前贈与を非課税にする方法をご紹介します。
暦年課税制度とは、年間で110万円までの贈与が非課税になる制度です。この暦年課税制度のメリットは、贈与する人数に制限がない点です。しかも合計で110万円ではなく、贈与する人、1人につき110万円ですから、仮に5人に5年間100万円を贈与し続ければ、2,500万円を非課税で贈与することが可能です。
ただし3年内加算ルールというものがあり、被相続人が亡くなった場合、そこからさかのぼって3年の間に贈与した金額は、すべて相続税の課税額に加算されますので注意が必要です。
(2)相続時精算課税制度
生前贈与を行うもう一つの方法である相続時精算課税制度は、最大で2,500万円までの贈与が非課税になる制度です。暦年課税制度は1人につき1年間で最大110万円までという制限がありますが、相続時精算課税制度は1人に対し1年間で2,500万円を贈与しても非課税になります。
もちろん複数人に贈与しても構いませんし、数年にわたって贈与を続けても、合計で2,500万円になるまではすべて非課税です。
ただしこの制度を使って生前贈与をした場合、その贈与額は全額、相続税の課税対象額に加算されます。
また土地、不動産を贈与した場合、登録免許税・不動産取得税は免除されません。そのため相続税よりも税負担が大きくなってしまう場合もあります。
(3)配偶者に対する居住用不動産または資金贈与
配偶者に対して不動産、もしくは不動産を購入する資金を贈与する場合、最大で2,000万円まで非課税になります。さらに贈与税の基礎控除である110万円との併用が可能なため、実際には2,110万円までが非課税です。
ただし不動産は居住用でなければなりません。またこの特例は同一の夫婦の場合、1回限りです。そのため、現在住んでいる資産価値1,000万円の不動産を贈与し、その後、新たな不動産を購入する資金1,000万円を贈与するといったことはできません。
(4)教育資金贈与
自身の子、もしくは孫(30歳未満)に対して学校などに通うための学費を教育費として贈与する場合、最大で1,500万円まで非課税になります。
小中学校、高校、大学はもちろん、塾やサッカー、水泳といったスポーツクラブの月謝でも活用できます。なお、贈与は信託銀行に一括で振り込み、利用するたびに領収証を信託銀行に提出しなければなりません。
(5)結婚・子育て資金贈与
教育資金贈与と同様、自身の子、もしくは孫(20~50歳未満)に対して結婚の場合は最大で300万円、子育ての場合は最大で1,000万円まで非課税になります。
ただし、この贈与を受け取った受贈者が50歳になった時点で贈与された金額をすべて使いきれなかった場合は、通常の贈与税が課税されます。
振り込みや領収証の提出は、教育資金贈与と同じです。
(6)直系尊属から直系卑属に対する居住用不動産の資金贈与
親もしくは祖父母から子、孫に対して居住用不動産の資金を贈与する際に適用される制度です。消費税率や贈与する不動産の種類によって非課税額は変わりますが、消費税8%の場合、最大で1,200万円。10%で最大3,000万円が非課税になります。
自身の状況に応じた非課税の方法選択を
ここまで生前贈与を非課税にする方法をご紹介してきましたが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
そのため、非課税になる額だけで決めてしまうのではなく、自身の状況に最適なものを選択しないと、かえって相続税が高くなってしまう場合もありえます。そのため自身の財産と譲りたい相手の状況をしっかりと確認したうえで、専門家に相談して選択するようにしましょう。