相続時精算課税制度とは?メリットとデメリット
相続というものは、権利、義務のすべてを引き継ぐことです。したがって、引き継ぐものの中には負債も含まれます。
負債を引き継ぎたくない場合に相続放棄を行うことがあります。しかし、相続時精算課税制度を利用して、過去に贈与を受けていた場合、相続放棄は可能かどうか。見ていきましょう。
相続放棄とは
相続というのは相続人にとって、利益にならない場合があります。財産よりも借金が多いような場合です。
負債を相続したくない場合、ひとつの選択肢として相続放棄があります。相続放棄は相続という権利自体を放棄するものです。したがって相続放棄をすると、財産よりも負債が多い場合、借入金を引き継ぐことはありません。その相続人は存在しないものと見なされ、代襲相続なども行われなくなります。
相続放棄をする場合は、相続開始から3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続時精算課税制度の利用者は相続放棄できるのか
結論からいえば相続放棄をする権利はあります。
過去に相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、相続が発生したときに相続財産に加算され、相続税額が計算されます。しかし、すでにその財産は受贈者のものになっていますので、相続放棄をしても影響はありません。
相続税の計算方法
税法上は、生前贈与された財産は、相続によって取得したものとみなされ、相続税の計算がされます。
相続税を計算するうえでは、放棄をした人も法定相続人の数に入れます。
相続税の基礎控除は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
たとえば、相続時精算課税制度を使って3000万円の生前贈与を受けた場合、贈与税は2500万円まで非課税、それを超える500万円に20%課税されますので、100万円の贈与税をすでに納めていることになります。
相続放棄をすると相続時の財産は0円、これに生前贈与された3000万円を加算して、相続財産は3000万円ということになります。この金額であれば基礎控除の範囲内ですので、過去に納めた贈与税100万円は還付されます。
留意する点
贈与時には財産が十分あり、相続時には状況の悪化で債務超過となっていた場合は、上記のような対処ができます。
しかし、贈与時にすでに債務超過であるのに、相続放棄をすることを予定しつつ贈与したような場合は、債権者を不当に害するため、生前贈与が詐害行為に当たるとして、取り消される可能性があります。