タブレット、スマホで十分だからパソコンはいらない?弱点を補完して最大のメリットを享受
目次
情報リテラシーとは、情報を適切に理解し、活用する能力のことです。様々な情報がインターネット上にあふれていますが、何が本当で何が間違いなのか判別は難しくなっています。もっともらしい内容でも偽情報や誤解を招く情報も多く含まれています。それを見極めるためには情報リテラシーの向上が必要になります。リテラシー向上に効果的なことは、最近話題になっているフレーミング効果への警戒とクリティカルシンキングです。
フレーミング効果とは?
フレーミング効果とは、情報の伝え方や提示の仕方によって、受ける側の感じ方や判断を操作する心理効果のことを指します。同じ情報でも、フレーム(枠組み)を変えることで、受け止め方や反応が異なるようになります。フレーミングは意図的に情報を選んで提示することで、人の意識や感情を操作する手法として利用されることがあります。
例えば、会社の概要情報で資本金額表示を「300万円」と表示した場合と「3,000,000円」と表示した場合では、示している額は同じでも後者の方が多額に感じられることがあります。同様に「3,000(千円)」などと表示する場合もあります。また、「100個限定」や「在庫限り」というような表示では、実際は限定や限度はなくいつでも入荷可能であるにもかかわらず、単に人の購買欲を刺激するための手法として利用されることがあります。さらに、実は閉店しない「閉店セール」というのもフレーミング効果にあたります。
このような手法はマーケティングなどの商業的な広告テクニックとしてだけでなく、様々な活動や公的な情報提供、または教育などにも利用されています。例えば、「異次元の」とか「これまでとは次元が違う」という表現も立派なフレーミング効果です。
フレーミング効果の具体的事例
フレーミング効果とはどのようなものか、具体例を挙げてみたいと思います。
1. 「日本人口の0.01%が該当者」と表現するのと「日本で1.2万人が該当者」と表現するのは意味としてはどちらも同じです。しかし受ける印象は全く違ってきます。0.01%なら自分には関係ないような感じがしますが1.2万人といわれると自分も該当するかもしれないと思えてきます。これが典型的なフレーミング効果です。
2. 製品の広告で「天然由来成分」とか「天然由来素材」という表現は、限りなく天然に近い印象がありますが必ずしもそうでない場合もあります。「天然成分配合」という表記では確かに入っているかもしれませんがごくわずかだったり、それによって材質のほとんどが天然素材でないという事実が薄れたり覆い隠されてしまいます。利益のみをアピールし、リスクを隠すようなものもフレーミング効果です。
さらに、以下のようなアピール表現もフレーミング効果を生じさせます。
3. 販売台数業界トップ!とか売り上げ額No1とか、顧客満足度97%!などなど、とにかくこれでもかというアピールがネットだけでなく街中にあふれています。
情報リテラシーが乏しい人にとっては、フレーム化されたアピールによって選択に影響が生じてしまうことがあります。商品選択力が乏しく、他の選択肢を持たない場合、そのアピールの真偽が不明でも「他よりもいいかもしれない」と根拠なく誘導されて選んでしまうかもしれません。そのため、情報リテラシーの向上は一般の生活者にとっても重要であることを知っておく必要があります。
危険なフレーミング効果
このようにフレーミング効果は、私たちの判断や感じ方に影響を及ぼすため、使い方によっては危険な手法です。わかりやすい例として、コップに水が半分入った状態をどうとらえるかという話があります。これはよく使われる例ですが、「もう半分しかない」と思う人と「まだ半分ある」と思う人がいて、前者はネガティブ、後者はポジティブシンキングである・・というのです。しかしこの例もフレーミング効果によるものであり、その状況や背景、意図や心理状態を考慮することなく、「半分」という事象のみをフレーム化し選択させています。
同じ様な話に「バカ」と書いたコップと「ありがとう」と書いたコップにそれぞれ水を入れて花を挿すと「バカ」と書いたほうが早くしおれて「ありがとう」と書いたほうは長く咲いているようになるという話があります。似非科学なのはもちろんですが、道徳的な話として使用する例えとしても全く不適切です。なぜかというとその言葉を他のものに入れ替えても信じ込んでしまう人が現れるからです。それが特定の人物名だとしたらと思ってください。これは非常に怖い話です。このような話もフレーミング効果を悪用している典型的な例です。
このようにフレーミング効果は人の選択を操作し、悪用されることがあります。特に偏った情報や偽情報を広める際に、意図的にフレーミング効果を利用することがあります。その結果、真実でない情報が広まり、社会に誤解や混乱を招いてしまうことがあります。
危険を回避できるクリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングとは、情報を客観的に評価し、適切な判断を下すための思考能力です。情報の発信源をはじめ信頼性の確認や比較検討、背後にある意図を読み解き考えるなどの方法で行います。そうすればフレーミング効果に惑わされることなく、客観的な判断をすることができます。クリティカルシンキングを行うには以下の点を重視します。
1.分野が違う情報源や異業種からの情報
ネット検索では同じような話題で同じような情報しか出てこない場合があります。また、業界の常識や業界の都合などで画一化された情報になってしまっていることもあります。ところが、意外と異業種や分野が全く違う情報源で真実の情報が得られる場合があります。
要するに利害関係のないところなどから多面的に情報源を得ることでクリティカルシンキングを可能にします。その結果、情報リテラシー向上に役立つこともあるのです。私は様々な業種のユーザーのITサポートも行っているため常に多角的、多面的な判断が要求される場面が多くあります。それによってリテラシーも向上していくというメリットが生じ、問題解決能力の向上にも役立っています。
2.常に疑問を持つこと
ネットではある程度の情報を獲得することは可能ですが、求めている肝心の情報がない場合があります。ピンポイント情報やそこから先の情報が欲しいという場合にネット検索には限界がありました。しかし最近ではAIによってそれを補うことが可能になっています。もし、ネットで情報が得られない場合はAIを利用して疑問点の追求や異なった着眼点による発想などを得ることによってクリティカルシンキングが可能です。AIの効果的な活用で疑問を分析しフレーミング効果や情報の悪用を見抜くことができます。
「疑問を持つな」というのは昔から人を操作する上で利用されてきた手法です。映画「マトリックス」でも仮想世界に人を捕らえておく手法は「疑問を持つな」でした。クリティカルシンキングは常に「疑問を持つ」ことの上に成り立っています。私はITサポートエンジニアとして日々業務で問題解決を行っていますが「疑問を持つ」ということがペンチやドライバーなどと同じ「ツール」になっています。それがなければITのトラブルや問題は解決しません。
サポート先でよく言われることがあります。「どこで勉強したのですか?どこのメーカーにいたのですか?」とか「どうしてそのようなことがわかるのか」など、毎回のように言われることがあります。メーカーにいただけ、学校で勉強しただけでいきなり現場で実践は無理です。仕事とはいえ日常的にクリティカルシンキングが必要になることで情報リテラシーにも自然と明るくなる・・というのが答えです。
情報を発信する側ではなく受け取る側のベネフィットに注目
情報発信は、ビジネスとして行われる場合も多いのですが、動機として利益の追求があることについて異論はありません。しかし、忘れていけないのが情報の受け手側、つまりユーザーや消費者の利益も存在するという事実です。対価に対して同等の物品やサービスを受け取ることが公正で正当な取引です。
情報発信側の一方的な利益の追求で、受け取る側のベネフィットが損なわれるような情報提供のあり方は商倫理的にも問題です。そのような利益追求の構図は厳しい言葉で言うと「搾取」です。ですから、情報に誤りがあったり利益追求のみを考えた意図的な情報の提示はビジネス以前の問題です。
いいことづくめの文言ばかりが並んで実際の価値や欠点がマスキングされているような情報に対して敏感である必要があります。情報を受ける側のベネフィットに着目し、クリティカルシンキングを行うとその情報の実像が自ずと浮かび上がってきます。
クリティカルシンキングでフレーミング効果を見抜く
感情的な判断や表面に出ている情報のみによって判断をすることは避けましょう。注意点としてまず、数字に着目します。もし、数字が出てきたらその数字がどのような表示のされ方をしているかを考えましょう。また、フレーム化された選択肢で誘導するようなフレーミング効果になっていないかどうかを注意深く観察してください。クリティカルシンキングを駆使することで、フレーミング効果を見抜くことができます。
参考動画:【知らないと詐欺にあう?】NewsPicks
https://www.youtube.com/watch?v=QWs15-7kqIw
偏った情報に振り回されないためには他の立場や意見を理解することも必要です。その際にステレオタイプや先入観、固定観念があると正しい判断ができません。頭から決めつけず、自身の考え方や趣向、信条とは異なる情報にも耳を傾けることが重要です。人の立場に立って考え、自分の物差しで人を計らないことが正しいものの見方につながります。自分が聞きたくなかったり違った意見に対しても、寛容で余裕のある物の考え方や対応ができるようになることが情報リテラシー向上につながります。
人間はちっぽけな存在といわれますが、本当にその通りです。素粒子などの微細な世界をはじめ人体、深海などの自然界、宇宙などまだ知らないことだらけです。世界は広大です。自分の考えだけに固執し寛容さを失う人が多くなり、「今だけ、金だけ、自分だけ」になってしまえば、すぐにでも社会がAIの支配下になってしまう日が来てしまうかもしれません。
情報を鵜呑みにせず、自らの判断力を養い、情報リテラシーを身につけることで、AI時代をより賢く生き抜くことができるでしょう。