「建築って何?(41)」建築物の耐用年数の増大:「木造」

高塚哲治

高塚哲治

テーマ:建築の仕組み

 「鉄筋コンクリート造」や「鉄骨造」の骨組の耐用年数を増大させる方法に比べ、「木造」の方法はいくつかの要素を組み合わせるので複雑になります。
 木材は、シロアリや腐朽菌の被害により、断面欠損や強度低下が生じ劣化することになります。シロアリや腐朽菌に起因する木材の劣化現象を「生物劣化」といい、「木造」建築物の骨組は「生物劣化」により物理的に耐用年数が尽きます。そこで、「生物劣化」を防止すれば耐用年数は増大することになるのです。
 「生物劣化」の基本的な防止方法は、シロアリや腐朽菌が活動や生育しにくい環境下で木材を使用することにあります。法隆寺などに用いられている木材が千数百年間使用され続けている事実が、長く使用可能であることを実証しています。
 「木造」におけるシロアリや腐朽菌の活動や生育がしにくい環境とは、骨組である木材の乾燥状態が継続し、木材を高含水率にしない環境に置くことです。この環境下に木材を置けば、シロアリのうち「ヤマトシロアリ」と一般の腐朽菌の被害を著しく低下させることが可能となります。
 次に、木材を地表から離す、または地表面に防御層を設けることです。千葉県以西の沿岸地帯で大きな被害を与える「イエシロアリ」は、木材が乾燥した状況でも被害を与えます。このシロアリは、地中から這い上がって建築物に侵入し、木材を食害します。このシロアリに対しては、木材を地表から離し、地表面からの這い上がりを防止する層を設けることにより、被害を低下させることができます。《木材を乾燥した環境下に置く》《木材を地表から離す、地表面に層を設ける》ための具体的な方法として、《基礎の立上りを高くする》《地表面に亀裂の入りにくいコンクリート層を設ける》》木材に雨水などがあたらない構造にする》《壁内に結露が生じない構造にする》《壁内を通気する構造にする》などが考えられます。これらは「木造」骨組の耐用年数を増大させる構法的な解決方法といえます。
 「木造」建築の耐用年数を伸ばすためのもう一つの方法は、耐久性のある樹種を選定することです。耐久性のある樹種とは「ヒノキ」「ヒバ」「クリ」などの心材を指します。これらの樹種を採用することにより、「薬剤処理」を省略することもできます。そして、使用する木材の断面を増大することが更に大きな効果をもたらします。
 次に、「薬剤処理」による方法が挙げられます。木材の耐久性を増大させるための「防腐・防蟻薬剤」は、明治時代から使われています。50年前頃から、長期間効力が持続する優れた薬剤が多く開発され、「鉄骨造」のめっき処理のように表面処理をしたり、木材の中に浸潤させたり、地表面に処理したりして使うようになりました。しかし、この薬剤が環境汚染の原因になることや、人体への毒性を有することから、近年は、より毒性の低い効力期間の短い薬剤に代替されるようになってきました。このような経過を経て、「薬剤処理」は、木造の骨組の耐用年数を増大させる方法のひとつとして、使われ続けています。
 所定の耐用年数を得るためには、以上の方法を、いくつか組み合わせて選定することです。



設計監理/調査鑑定/CM(コンストラクションマネジメント)
タウ・プロジェクトマネジメンツ一級建築士事務所

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高塚哲治(建築家)

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大手設計会社での豊富な経験を生かし、多くの欠陥住宅問題を手がけ、日本ではまだなじみの薄いCM(コンストラクションマネジメント)を広く世間に発信し、遂行している

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