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原聡彦

医療経営指導の専門家

原聡彦(はらとしひこ) / 医業経営コンサルタント

合同会社 MASパートナーズ

コラム

整形外科クリニックにおける短時間通所リハビリテーション開設方法①

2018年3月10日 公開 / 2018年9月17日更新

テーマ:院外事務長の視点

コラムカテゴリ:ビジネス

院外事務長として整形外科の通所リハビリテーション、訪問リハビリテーションの開設のサポートをさせて頂いております。今回は3回シリーズで短時間(1時間~2時間)通所リハビリテーションの開設事例と開設方法などをお伝え致します。
【相談内容】
2016年度の診療報酬改定では「要介護要支援認定の介護保険被保険者の維持期リハビリは2017年3月31日をもって医療保険(運動器リハビリテーション)から介護保険へ完全移行するという内容でしたが2018年の同時改定(診療報酬・介護報酬)で本当に完全移行されるのでしょうか?当院は常勤理学療法士1名と運動器リハビリテーションセラピスト2名(柔道整復師、准看護師)で運動器リハビリテーションⅡの施設基準でリハビリテーションを実施しております。要介護認定を受けている患者さんも多いことから今後、1時間~2時間の短時間通所リハビリテーションを実施したいと考えております。通所リハビリテーションを実施するにあたりどのような準備が必要かお教えください。」という関西地方の整形外科クリニック(開業5年目)からご相談を頂きました。

【回  答】
そこで、今回から3回に分けて来年の同時改定の動向を踏まえて1時間~2時間の短時間通所リハビリテーションの開設方法をお伝えしたいと思います。

1.整形外科クリニックを取り巻く経営環境について
整形外科クリニックが取り巻く経営環境は下記のとおりです。
1)医療の在宅シフトが急速に進んでおり、在宅患者のフォローが求められている。
2)デイサービスが急増し、運動器疾患を持つ方のリハビリテーションサービスが行われている。
3)整骨院が急増し、運動器疾患の初診患者が整骨院に流れている。
4)予防に対する意識が高まっており、医療と運動を組み合わせた民間サービスが増えている。

2.2018年同時改定で完全移行は延期になりました
2016年度の診療報酬改定の結論を踏まえれば、「2018年度から、要介護被保険者の維持期リハビリ(運動器、脳血管疾患等、廃用症候群)は医療保険から給付されない」ことになっておりましたが、厚労省保険局医療課は、医療保険リハビリが必要な患者にリハビリ提供できるよう対応することなどを前提として「要介護被保険者の疾患別リハビリ料の算定に係る経過期間については、2018年度末まで延長する」考えを提示しました。

3.完全移行の延期理由
厚労省保険局医療課は「医療機関が医療保険・介護保険の双方のリハビリを提供すれば、さらなる円滑な移行が期待できるが、双方の人員配置要件などを満たすことが難しく、介護保険リハビリを提供できない医療機関が一定程度ある」という理由を示した。個別対応が求められる医療保険リハビリと集団対応をとっている介護保険リハビリでは目的が異なるため、機能訓練室の面積基準やリハ専門職の配置要件などが異なる点に関するものです。とくにリハ専門職人員については「両方の基準を満たすためには、相当のコスト(人件費増)が必要なる」点などが大きなハードルになっていると考えられます。
まず、この施設基準のハードルをクリアすることが「介護保険への移行」に必要と考え、「施設基準のうち、職員配置や設備を共用できるよう取扱いを見直してはどうか」との提案を行っています。2018年度は診療報酬・介護報酬の同時改定となるため、両方向から同時にアプローチすることで、より実効性のある「運用改善」が行えるという考えがあるのかもしれません。
また、医学的に標準的算定日数を超えるリハビリが必要な患者(高次脳機能障害や重度の頸髄損傷など)では、「算定上限」の対象から除外されますが、上記の疾患は「除外患者」に含まれていません。厚生局医療課は「標準的算定日数の上限の除外対象疾患に明確に位置づけられていないが、リハビリの算定上限からの除外が必要な疾患がある」のではないかとの問題意識を持っているようです。
 
「要介護被保険者の維持期リハビリの介護保険への完全移行」延期(2018年度末まで)は確定しましたが運動器リハビリテーションの施設基準をもつ整形外科クリニックでは今から1年ぐらいの間で介護認定を受けている運動療法の患者さんが何人いるか確認して減収試算をしたうえで介護保険のリハビリ(通所リハビリ・訪問リハビリ)を開設する体制を整えるか、これまで通り、医療保険の運動器リハビリテーションを行うか意思決定する必要があります。次回より、利用者からのニーズのある1時間~2時間の短時間通所リハビリテーションの立ち上げ事例をお伝え致します。

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原聡彦

医療経営指導の専門家

原聡彦(合同会社 MASパートナーズ)

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