金融教育における行動経済学の活用~住まいの終活を考えるシリーズ⑨~
(はじめに)
空き家所有者の約半数は利活用を望んでいる、という調査結果があります(※)。一方で国土交通省の調査によると、空き家所有者の約4人に1人は「特に何もしていない」状況にあり、空き家期間が5年以上の及ぶものが空き家全体の約40%近くを占めています。
(※㈱クラッソーネ(2022年10月)「空き家の活用・処分の意向調査」)
空き家の利活用は、立地や市場環境に大きく左右され、所有者の意向だけで速やかに実現できるものではありません。そのため、利活用の計画がある場合であっても、当面は維持管理が必要となることも少なくありません。
建物は適切なメンテナンスをしているかどうかで、その寿命や資産価値に差が生まれ、将来の売却や利活用の可能性に大きく影響します。今回は、このように地味ですが極めて大切な空き家の管理を考えます。
(空き家管理の留意点)
どの程度の管理水準を目指すかによって、その内容や費用は違ってきます。従って、まずはどの程度の管理水準を目標とするかを考えてみて下さい。分かりやすくするために、松竹梅に分けてみると、次のようなイメージにあります
松:近い将来、自己使用を予定しているため資産価値の維持、更に向上を図るレベル
竹:利活用の方向が決まるまでの間、資産価値の低下を緩やかにするレベル
梅:解体を予定しており、近隣に迷惑や被害を与えない範囲で必要最小限のレベル
続いて、建物や敷地の状態の変化を見逃さないようにして下さい。倒壊とか屋根や外壁の破損や剥落や飛散等の危険がないか、植栽の繁茂や落ち葉が堆積したり飛散等の危険はないか、ゴミの放置や不法投棄などがないか、などを継続的に確認し、何か変化が見られれば早めの対応を心掛けるようにして下さい。
そして、近隣居住者の方には挨拶や案内文を送るとか、緊急連絡先を知らせるなど、不在だからと言って疎遠にならず、良好な関係を維持して下さい。そうすれば、近隣居住者の方から情報提供を受けたり、監視の目が空家管理の手助けになったりします。
(業者へ委託)
空き家管理には、所有者自ら管理する以外に管理業者へ委託する方法があります。それには、次のようなメリットが考えられます。
〇特に遠隔地であれば、移動に必要な時間や負担が軽減できるなど手間を省ける。
〇専門家が行うので見落としがないとか、定期的な点検による安心が得られる。
〇業者の看板等(「巡回中」等)の設置をすることで、防犯対策にも繋がる。
〇土地活用や売却などの相談業務といった付帯サービスの利用もできる。
しかし一方で、費用負担は発生します。委託料は通常、月額5000円~10000円くらいの水準が多いですが、業者によってサービス内容や利用料金に差があります。基本サービスの範囲とオプション内容、各利用料金を確かめた上で比較検討して下さい。あるいは口コミや評判など第三者の意見も参考にしてみても良いでしょう。
また、最近では自治体によっては、ふるさと納税の返礼品として空き家管理サービスを受けることができます。その他にも空き家の増加に伴い、NPO法人、警備会社、シルバーセンター、生命保険株式会社、不動産会社など、多くの主体が参入しています。業者の選定ミスをしないように、サービス内容などをしっかりと確認して下さい。
(まとめ)
空き家の期間が長期化すればするほど、空き家への関心が低下していくことは否めません。そのため、空き家の将来計画があるとか、検討していれば、維持管理するモチベーションは維持しやすくなると思われます。
空き家の所有者にも、建物や敷地を適切に維持管理するという所有者責任が伴います。空き家の適切な維持管理が、損失の低減や収益獲得、そして外部不経済の回避に繋がっていきます。
以上