建築基準法の道路に接道していなくても建物は建てられるの?
今年も間もなく大雨シーズンが到来します。日本列島は近年、まるで亜熱帯地域のような豪雨に見舞われることが珍しくなくなっています。西日本豪雨(平成30年7月)や熊本豪雨(令和2年7月)など、大きな災害で貴い人命が奪われています。
令和3年7月3日、静岡県熱海市で発生した土石流災害は記憶に新しいところです。静岡県と熱海市の対応について検証を進める第三者委員会は5月13日、「行政対応は失敗」とする最終報告書をとりまとめました。そこには、「適切な対応がとられていたならば、被害の発生防止や軽減が可能であったのではないか。よって本件における行政対応は『失敗であった』」と結論づけられています。土砂災害防止対策推進法の土砂災害警戒区域に指定されていました。
今後、益々災害リスクが高まるなかで、消費者はどのような情報を収集し住まい選びをすることが求められるのでしょうか。今回は、災害リスクと住宅地選びを考えます。
【災害リスクに関連する重要事項説明】
重要事項説明には、次のような災害リスクに関する項目があります。
・所在地の水害ハザードマップ(洪水、内水、高潮)の有無と、浸水履歴
・各地域の指定の有無
宅地造成等規制法に基づく造成宅地防災区域
津波防災地域づくりに関する法律に基づく津波災害警戒区域
土砂災害防止対策推進法に基づく土砂災害警戒区域または土砂災害警戒特別区域
急傾斜地法に基づく急傾斜地崩壊危険区域
また、頻発・激甚化する自然災害に対応するため、都市計画法に基づく開発許可制度の一部改正が、令和4年4月1日に施行されました。その結果、災害レッドゾーン(※1)や浸水ハザードエリア(※2)での開発行為が原則禁止になりました。災害リスクと開発の可否の関連が今後強まることが予測されます。
※1:災害レッドゾーン
○災害危険区域(建築基準法)
○地すべり防止区域(地すべり等防止法)
○急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法)
○土砂災害特別警戒区域(土砂災害防止法)
○浸水被害防止区域(特定都市河川法) →区域なし(R3.9時点)
※2:浸水ハザードエリア等
○土砂災害警戒区域(土砂災害防止法)
○浸水想定区域(水防法)のうち、災害時に人命に危険を及ぼす可能性の高いエリア →浸水深3ⅿ以上
【住宅地の選択と災害リスク】
私たちが住宅地を選択する場合、それぞれに選択基準や優先順位があります。通勤・通学、最寄り駅までの時間など利便性重視や、生活利便施設が揃っている都心志向、あるいは田舎暮らしを好む自然派など、何を重視するかは一人ひとり異なります。
現状、災害リスクの優先順位は決して高くありません。しかし、先に触れたように自然災害が激甚化するなか、法規制は厳しくなっています。同時に、被害のリスクを回避することも求められます。そのため今後は、「そこは過去にどのような災害があったか」「将来、どのような災害リスクが予測されるか」という視点を選択基準の一つに追加することをお勧めします。
次のハザードマップポータルサイトで、一度、ご自宅がある地域の災害リスクを確認してみては如何でしょうか。ハザードマップポータルサイト (gsi.go.jp)