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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

賃貸住宅で発生しやすいトラブルや困りごとって何?

2022年4月10日

テーマ:住まい教育・消費者教育

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: 資産管理賃貸管理 ソフト不動産管理

【はじめに】
賃貸暮らしは、持ち家に比べ手軽に住み替えができるメリットがある一方で、トラブルも少なくありません。国民生活センターに寄せられる住宅関連の相談では、リフォーム工事と並び、賃貸住宅に関連する内容が上位を占めています。トラブル等の発生時期は、契約時・入居中・退去時に分かれ、なかでも退去時の原状回復や敷金精算に絡むトラブルが多くなっています。

令和4年4月1日からは成人年齢が引き下げられ、親権者の同意なく住宅の賃貸借契約が締結できることになりました。そのためトラブルの増加が予想されるため、若年層への消費者教育も一層、その重要性が増してきます。

今回は、賃貸住宅にまつわるトラブルや相談内容を見ていきます。

【契約時】
契約時の相談で多いのが、入居申し込みの撤回に関するものや契約時の費用負担です。具体には、以下のような相談がありますが、これらは契約締結前の行為であり、契約書には記載には記載がありません。ある程度の予備知識が必要になります。
●入居の申し込みをしたが、その撤回ができるか。その場合、申込金が返還されるのか。
●契約前に初期費用の支払いを求められたが応じないといけないのか。


【入居中】
コロナ渦で在宅時間が長くなった影響で、入居者同士のトラブルが増加しているという話を耳にします。

●騒音や臭いのトラブル
集合住宅で生活する場合、隣近所の生活音が多少は聞こえるものですが、我慢できる音の大きさや種類には個人差があります。どのような音がトラブルになっているのでしょうか。

例えば、上階の足音、子どもが走り回る音、扇風機や健康器具、洗濯機などから伝わる振動音、楽器の音、テレビやステレオの音、大勢で騒ぐ音、ペットの鳴き声、などが挙げられます。また、ペットのにおい、ベランダ喫煙のタバコのにおいなどは、気になる人には不快なにおいとなります。

●マナー違反
在宅時間が長くなればゴミの量は増加します。生ごみから液だれする状態でゴミを出す、回収日時を守らずにゴミを出す、ペット禁止物件でペットを飼うなど、マナーやルールが守られていない状態もトラブルの原因になります。他にも駐輪場・駐車場を無断で使用したり、自転車置き場にバイクを駐輪したり、廊下などの共用部に放置することも、トラブルに繋がりやすくなります。

●住戸内のトラブル
例えば、不注意で水漏れをさせて階下の入居者から損害賠償を請求された場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。個人賠償責任保険に加入しているかどうかで対応は変わってきます。
※個人賠償責任保険
 水漏れ事故で下の階の入居者に損害を与えてしまった場合などに補償される保険

また、備え付けのエアコンなどの設備が故障した場合、その修理費用の負担を巡ってオーナーと揉めることもあります。

●上記以外にも、家賃や契約更新にまつわる次のような相談事もあります。
・家賃滞納したらどうなるのか。
・家賃共益費の値上げを言われたが、どうしたら良いか。
・住戸の転貸はできるのか。
・更新を拒否されたが、どうしたら良いか。

【退去時】
賃貸住宅のトラブルで最も多いのが退去時の原状回復と敷金返還にまつわるものです。
●室内の破損・汚損の範囲と負担の範囲
・6カ月居住した賃貸アパートを退去した。玄関の壁紙のわずかな傷で全面の張替え費用を請求され不満だ。
・亡くなった母が住んでいた賃貸住宅を引き払ったが、原状回復費用としてふすまの張替費用などを請求されている。支払う必要があるのか。
・2年間借りていたアパートを退去し、立会いのときに、畳1枚に焼け焦げがあると言われた。確かに私の不注意なので、畳1枚分は仕方ないと思うが、1枚替えると色が違ってしまうため部屋全部の畳を張り替えると言われた。その費用の全額が私の負担になってしまうか?

●言った言わない
・管理会社の了解を得て賃貸マンションの光回線工事をしたが、退去時に、工事は許可していないと言われ、原状回復費用を請求された。
・4年前に契約した賃貸マンションを退去したが、契約当時に提出した現状確認書を管理会社が紛失し、入居時についていた傷まで含めた修復費用を請求された。

●ハウスクリーニング代
・退去時に高額なハウスクリーニング代を請求された。納得できない。

●そもそも入居者の過失があるか
・かなり古いと思われる物件に4年間居住していた。退去の際にバスルー ムの床が傷んでいるので、バスルームごと交換するための費用70万円を請求された。納得できない。

●特約の有効性
・2年間住んだアパートを退去することになり、契約書を確認したところ、 特約条項に「原状回復は、理由のいかんを問わず借主負担とする。」と書いてあることに気付いた。こ
 の特約は有効か?

このようなトラブルにどのように対応したら良いのか。そもそも発生を未然に防ぐ予防策はあるのか。次回のコラムでは、退去時のトラブルを中心に考えていきます。

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菊池浩史(住まいの消費者教育研究所)

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