不動産取引における消費者への情報提供について
【はじめに】
重要事項説明書と売買契約書は、不動産取引には欠かせない重要な書類です。ところで、その内容を正しく理解してから署名・押印している契約当事者は、果たしてどのくらいいるのでしょうか。特に、不動産売買における買主からすれば、引渡し前に物件のことを知り得る限られた情報源です。
しかしながら、未だに取引の多くでは契約当日に説明を受けるのが常態化しています。不動産の専門家でない限り、当日の説明だけで理解することは甚だ難しいと言えます。やはり事前に入手して、内容を確認しておく必要があります。
今回は、重要事項説明書と売買契約書の事前チェックの必要性を考えます。
【重要事項説明書とは】
宅地建物取引業法では、取引に係る宅建業者に対し、契約成立までの間に、買主などに対象物件の重要な事項について、宅地建物取引士に書面を用いて説明させることを義務付けています。
この背景には、不動産に関する知識や調査能力を有しない一般の買主などを保護と円滑な取引の実現があります。
重要事項説明の時期は、契約の直前が約60%となっています。
契約の直前 62.1%
契約の前日から1週間前まで 37.7%
契約の1週間以上前 3.6%
(出所:不動産取引における消費者への情報提供のあり方に関する調査検討委員会:平成18年)
売買仲介の重要事項説明の所要時間は、30分から一時間程度が最も多くなっています。
30分未満 10.4%
30分~1時間程度 62.0%
1~2時間 26.0%
2~4時間 1.5%
4時間超 0.1%
(出所:不動産取引における消費者への情報提供のあり方に関する調査検討委員会:平成18年)
【売買契約書とは】
民法上は、契約自由の原則のもとで当事者間の合意だけで契約は成立します。しかし、宅建業法では、宅建業者が売買契約等を締結したり、締結せしめたときは、その契約の相手方等に、遅滞なく、当事者の氏名、代金の額、支払い方法、など契約内容のうち重要なものを記載した書面を交付しなければならないと定められています。
【契約当事者の不安】
売主や買主は、重要事項説明や売買契約に対して次のような不安を抱く者も少なくないと思われます。
・条文や文言の意味が理解できない
・購入後に不利益を受けるとか不利になる点はないか
・どのようなスケジュールか
上記の資料によると、重要事項説明に要する時間は30分から1時間が最も多く、約60%が売買契約の直前に行われています。しかも内容を読み上げるだけで終わることが少なくありません。これでは不安の解消など至難の業と言えます。
【後の祭りとしない】
重要事項説明や売買契約の説明を受ける前に、不動産会社から事前に入手して、内容をチェックすることをお勧めします。これらを読み込み、分かりづらい用語や条文などをネットなどで調べてみましょう。それでも不明なことがあれば遠慮なく不動産会社に確認して下さい。
なお、シニアの住まい研究所では、お客様の伴走サービスの一つとして、「重要事項説明書と売買契約書の事前チェック」があります。契約や決済方法などについて、お客様の不安を解消させて頂きます。
【まとめ】
不動産取引において極めて重要な書類であるにも関わらず、それらを十分理解しないままに署名押印することは避けるべきです。契約した後で「知らなかった」「こんなはずじゃなかった」と言っても後に祭りです。外部サービスの利用も含め、事前チェックをお勧めします。