空き家を発生させないための“住まいの終活3W1Hって何?~What Why When How~

菊池浩史

菊池浩史

テーマ:住まいの終活

はじめに
以前のコラムで「お家のエンディングノート」の作成をお勧めしました。しかし、それを実践するためには、前提となる住まいの終活の理解が必要です。

今回は、四つの視点から住まいの終活を捉えてみます。
What・・住まいの終活とは何?
Why・・・住まいの終活はなぜ必要?
When・・住まいの終活はいつから始める?
How・・・住まいの終活はどうやって進める?

1.住まいの終活とは何?
終活>住まいの終活>相続対策
人生の最期に向けた準備という意味で、住まいの終活と似たものに「終活」や「相続対策」などがあります。どのような違いがあるのでしょうか。

終活とは、自分の人生の最期をより良い状態で迎えるために行う準備です。例えば、エンディングノートを書くとか、遺言書を書く、お墓や葬儀について決めるといったことです。

相続対策には、遺産分割、相続手続き、納税資金の確保、相続税軽減策などがあります。

そして住まいの終活は、自宅の所有者と相続予定者が自宅の様々な情報を整理・共有し、相続前後の選択肢を考え、自宅を円滑に責任ある者に引継ぐための一連の活動です。見方を変えれば、自宅を空き家にしないための活動です。

終活の一部に住まいの終活があり、住まいの終活の一部に相続対策があると考えて下さい。

ライフステージ別の住まいの終活
自宅所有者の年齢や家族構成の状況などによって、住まいの終活の内容も変わってきます。

自宅所有者が50歳では子どもと同居する親子世帯が中心で、そろそろ定年後のライフプランの検討を始める時期です。この頃から子どもが独立した後の高齢期の住まいを考え始めるとよいでしょう。

65歳頃になるとリタイアして年金生活に入り、子どもは独立し高齢夫婦世帯が多くなります。自宅のリフォーム、配偶者の高齢者施設へ住み替えや病院へ入院するケースも増えてきます。そうなると自宅が空き家になる可能性が高くなり、また子どもは実家が気になり始めます。そろそろ自宅の将来をどうするかを具体に考え始めるとよいでしょう。

そして、75歳から80歳くらいになれば健康や介護の問題が現実味を帯びてきます。配偶者の死亡や、残された高齢者も単身生活が難しくなり高齢者施設への入所という事態になると、自宅が空き家となる可能性が出てきます。そうなる手前に住まいの終活を実践して、空き家を作らないようにしましょう。

2.住まいの終活はなぜ必要?
空き家に伴う損失の回避
空き家になると、建物の劣化やそれによる近隣への悪影響、修繕費や管理費などの余計な費用負担や損害賠償責任、関係者が多くなることによる相続ならぬ争続が発生しやすく状況になります。そうなると自宅の資産価値低は避けられません。

自宅(土地と建物)は家計資産の内、60%余りを占めており、その価値が棄損することは大きな経済的な損失になります。それが原因で親族間の争いにも発展しかねません。また、相続に関連する調停等の争いは高額なケースばかりとは限りません。最高裁判所の資料によると、遺産額1000万円以下での争いが全体の約三分の一を占めています。他人事ではありません。

不動産が争いの種になりやすい理由は、次のような不動産が持つ特徴と考えられます。
・価格が高額
・お金にように分割が難しい
・共有すると利活用が難しくなる
・不動産の種類によっては換金が難しい。

自宅の将来には関係者の利害が絡んでくるため話し合いは不可欠です。それには時間がかかり、対立することもあります。そうなれば空き家状態が長期化し、より資産価値の低下に繋がります。このような状態になることを避け、自宅の資産価値を維持(向上)したまま次世代に引き継ぐために住まいの終活が必要となります。

3.住まいの終活はいつから始める?
住まいの終活を始めるタイミングは、以下の二つの点には留意して決めることをお勧めします。

一つは、建物の劣化が激しくならない段階で始めることです。空き家のフェーズは、空き家予備軍⇒空き家発生初期⇒利活用可能期⇒特定空き家(※)手前⇒特定空き家⇒対応意困難と段階的に進行していきます。できれば利活用可能期までには始めたいところです。
※空き家対策特別措置法による
①倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態
②著しく衛生上有害となる恐れのある状態
③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④その他周辺の生活環境の保全を図るために、放置することが不適切な状態

時間が経過して建物の劣化が進行すると、所有者の建物への関心度が低下することが挙げられます。当初の「何か手を打たなければ」という思いが徐々に薄らぐのは十分予想できます。よって、空き家になる前がベストですが、遅くとも利活用可能期までには取り掛かりたいです。

二つ目は、認知症によるリスク回避するために、できれば元気なうちから始めることです。65歳以上の認知症患者は、推定で約600万人、65歳以上の人口に占める割合は約17%になっています。これが2040年には、800~950万人(20~25%)になると予測されています。

認知症になり意思能力がないと判断された場合、契約行為ができなくなり自宅の処分などが凍結される恐れがあります。その結果、自宅の売却、相続対策や遺産分割協議などに支障が生じます。認知症リスクの視点からも早めの準備が重要になってきます。

3.住まいの終活はどうやって進める?
住まいの終活の前提として、高齢期のライフプランや住まい観を家族や親族で話し合うことをお勧めします。いつから、どこで、誰とどのように暮らすかというが具体的な終活を始める前に、是非ともご自身に問いかけてみてください。

続く住まいの終活の標準的な流れ、①自宅の棚卸しをする。⇒②不動産としての課題を抽出する。⇒③不動産としての市場性を調査する。⇒④自宅の将来の選択肢を検討する。⇒⑤対策に着手する。この間、随時家族会議を行い、情報共有を図ることが重要です。

手始めに、情報収集(雑誌、インターネット、友人・知人など)、資産の内容確認(登記簿謄本など)、相談(専門家、不動産会社など)などから始めると良いでしょう。それから、以前のコラムでも取り上げた、お家のエンディングノートの活用です。住まいの終活のナビゲーター、関係者での情報共有、情報の分散防止としての機能があります。

まとめ
お家のエンディングノートを作成することで、改めて、住まいの終活とは何か、なぜ必要か、いつから始めたら良いか、どうやって進めるかの理解が深まることが期待できます。まだまだ認知度や関心の低い住まいの終活ですが、一人でも多くの方に行動変容が起こる社会を実現したいと考えています。

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専門家

菊池浩史

住まいの消費者教育研究所

住まいにまつわるビジネス経験や、不動産鑑定士としての専門的知見を活かし、顧客ファーストで「住まい教育」を普及・実践。住まい選びやメンテナンス、そして家仕舞いまで、ワンストップでトータルサポートします。

菊池浩史プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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