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菊池浩史

「住まい×消費者×教育」のハイブリッドを目指す専門家

菊池浩史(きくちひろし)

住まいの消費者教育研究所

コラム

戸建住宅から集合住宅への住み替えはシニアのメインストリームとなるか?

2021年10月7日

テーマ:住まいの終活

コラムカテゴリ:住宅・建物

コラムキーワード: まちづくり相続税エンディングノート

これまでの住宅すごろくは、郊外の庭付き一戸建てが上がりでしたが、今、それが変わりつつあります。

一昔前と違い、高齢期の住まいは多様化しています。最期まで自宅という選択以外に、高齢期の住み替えも珍しくなくなりました。住み替えは、大きく言えば、利便性に恵まれた安心安全な住まいへ住み替えと、一気に有料老人ホームなどの終の棲家へ住み替えるケースに大きく分かれます。このうち比較的元気な高齢者は、高齢者だけが暮らす高齢者住宅への入居には抵抗感を抱き、多世代が居住する住まいを希望する声はよく聞きます。

その他に駅近といった利便性が高いマンションへの住み替えニーズもあることが、各種調査でも裏付けられています。今後、戸建住宅から利便性や住環境の優れた集合住宅への住み替えが、高齢期の住まいのメインストリームの一つになるかもしれません。

戸建住宅から集合住宅への住み替えの場合、高齢者にとっては、集合住宅の方が住みやすいという理由が最たるものです。なぜならば、高齢者が安全に住みやすいからです。

高齢者が暮らす戸建住宅の多くが、築年数40年程度経過し老朽化が進んでいます。そのため段差や温度差などのバリアがあり、耐震性能も備えていない住宅も少なくありません。また駅からバスを利用する場所にある戸建住宅は、高齢者は買い物や病院に行くのにも苦労しています。立地や建物の構造の問題はリフォームや建替による解決は容易ではありません。高齢者にとって長年住み慣れた住宅ではありますが、住みやすいとは言い難いでしょう。

一方で集合住宅では、このような問題は比較的解消しやすくなります。集合住宅の多くは、駅から徒歩圏の立地が多く、生活利便施設は比較的多く、耐震性能や断熱性能の点からも高齢者には、住みやすい条件が比較的備わっていると言えます。しかしながら、集合住宅でも分譲(本文では中古マンションを想定)か賃貸かで条件は大きく異なります。

(分譲のメリット・デメリット)
分譲の場合の課題は資金面です。購入の際は当然まとまった資金が必要となり、近い将来に大規模修繕工事や建替などがあれば、一時金の負担が発生する可能性があります。また、将来に心身の衰えによって再度の住み替えを迫られれば、資産の処分など相当の労力を伴う事態となります。しかし、賃貸のような年齢による入居制限はありません。そして何より老朽化した戸建住宅のバリアフリー等の当面の課題を解消しやすいという魅力はあります。

(賃貸のメリット・デメリット)
次に賃貸の課題は、特に民間賃貸の場合、高齢者の入居に消極的な民間賃貸は未だ多く、バリアフリー化の進捗も遅れており、高齢者にとって住みやすい品質を備える物件は少ないという点です。その点、公的賃貸には年齢による入居制限はない点はメリットですが、バリアフリーの水準は築年により差異があります。特にエレベーターが設置されていない物件も多く、高齢者に優しい物件ばかりではないため注意が必要です。

このように集合住宅でも分譲か賃貸かによって、それぞれのメリットとデメリットがあります。その選択にあたっては次の点に留意した方が良いでしょう。

まずは資金面です。老後破綻を招かないためにもシミュレーションを行い収支比較することが大切です。

次に健康面です。高齢期は心身が大きく変化し、個人差も少なくない。。医療や介護サービスが利用し易いか、バイリアフリーや温熱環境などの住宅性能が備わっているかといったチェックも忘れないようにして下さい。

そして最後に人との交流面です。どのような日常生活を送りたいか、それに適う住環境かどうかを確認する方が良いでしょう。

住み替え先が終の棲家になり得る条件が備わっているか、について、時間の余裕を持ち、確認して判断されることをお勧めします。

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